入試問題に挑戦第131回
<問題>
 次の文章を読んで、あとの各問いに答えなさい。
 あなたがお店に行って、ほしいものがあったとしましょうね。それを自分のものにするためには、その代金をお店の人に払わなければなりませんね。このように現代の私たちの生活には、「お金」は欠かせないものとなっていますが、この「お金」はどのようにして使われるようになったのでしょうか。
 「お金」が存在しない時代もありました。そのような時代には、人々は「物々交換」といって、物と物との交換をしていました。しかし、この物々交換はそう簡単ではありません。たとえば、魚を持っている人が果物をほしいと思っていたら、果物を持っていて魚がほしい人を探さなければなりません。このように、自分のほしいものを持っている人が、自分が交換できるものをほしいと思っていないと、この交換は成り立たないからです。
 そこで、人々は自分の持っているものをいったん、多くの人がほしがるもの、たとえば米や塩、布、家畜などに交換するようになりました。そうすると交換がしやすくなります。このように@米や塩、布、家畜などが「お金」としての役割をするようになりました。また、交換する場として「A市」が定期的に開かれるようになりました。
 交換が活発になると、B金や銀、銅などの金属が、「お金」として使われるようになりました。はじめは取引の時に金属の重さを量っていましたが、そのうち金属で「C硬貨」をつくるようになりました。金でつくられた硬貨を金貨、銀でつくられた硬貨を銀貨といいます。このようにして「お金」はつくられるようになりました。世界各地で金貨は、価値が特に高いものと考えられました。
 しかし、遠くの町や村に硬貨を持っていくのは、量が多くなると大変重くなり、また 途中で強盗におそわれる危険などもあり、不便になってきました。
 そこで人々は、大量の硬貨を支払いで使う場合には、硬貨を持ち歩かずに、「この紙を持っていれば、書いてある金額の硬貨と引きかえます」という約束を書いた紙を発行して、支払いに使うようになりました。紙なのでかさばらず、持ち運びにも便利です。大金を持っていることもわかりにくいので、強盗におそわれる危険性も減ります。この紙が、やがて「D紙幣(お札)」へと発展しました。そして、硬貨などを預かるために、すでに誕生していた銀行が、紙幣を発行する役割を受け持つようになりました。
 しかし、紙幣の発行には大事な条件があります。それは、支払いを要求されたときに 支払うだけの「お金」を銀行が持っていなければならないことと、利用する人々に「信用」されていなければならないということです。さまざまな銀行が紙幣を発行した時代がありましたが、中には多くの人から一度に支払いを要求された時に支払いができなかった銀行もありました。このようなことが起こると社会が混乱します。そこで、国は「E中央銀行」をつくり、「お金」の発行はこの中央銀行だけしかできないようにしました。
 中央銀行の発行した紙幣は、はじめは金貨や銀貨などの硬貨との引きかえを約束した「兌換紙幣」でした。たとえば右の写真は、日本の中央銀行で初めて(1885年)つくられた兌換紙幣です。この紙幣には、「この券と引きかえに銀貨10円をわたす」という意味の文が書いてあります。
 兌換紙幣は、その国の中央銀行が持つ金貨や銀貨などの量をこえて発行することができません。そこで、多くの「お金」が必要になってきますと、中央銀行は国民からの「信用」を利用して、金貨や銀貨などとの引きかえを約束しない「不換紙幣」を発行するようになりました。これがまさに今私たちが使っている紙幣です。不換紙幣は、国民からの「信用」で成り立っていますので、ニセ札を作れないようにさまざまな工夫がされています。

問1 下線部@に関して、次の文中の(   )にあてはまる文字は何か、漢字一文字で答えなさい。
中国では、米や塩、布、家畜などのほかにも、(   )や金、玉などが「お金」として使われていたが、その中でも(   )は、「お金」に関する漢字の多くに使われている。

問4 下線部Cについて、日本で使われた硬貨についての説明としてもっともふさわしくないものを、次のア〜エから選び、記号で答えなさい。
ア 明でつくられた永楽通宝は、日本に輸入されて使用された。
イ 中国の唐でつくられた開元通宝は、日本が硬貨をつくる時に参考にされた。
ウ 富本銭は奈良県明日香村で発見されて、日本で一番古い硬貨と考えられるようになった。
エ 和同開珎は、平城京に都をうつした記念につくられた。

問5 下線部Dに関して、次のA・Bの問いに答えなさい。
A 次のア〜エの文は、それぞれ、ある人物について説明したものです。現在発行されている紙幣にえがかれている人物について説明しているものを1つ選び、記号で答えなさい。
ア 私は、現在の早稲田大学となっている東京専門学校を創立し、政治だけでなく日本の教育にも貢献した。
イ 私は、札幌農学校でキリスト教を信仰するようになり、1920年から26年まで国際連盟で重要な役をつとめた。
ウ 私は、軍隊の医者であったが、小説家としても活躍した。ドイツに留学した時の体験をもとに書いた小説は代表作となっている。
エ 私は、日本で初めての内閣総理大臣になり、憲法を作成するなど、日本の近代化のために貢献した。

B 2004年に発行される予定の新しい紙幣には、第二次世界大戦後初めて女性が採用されました。その女性の説明として適しているものを、次のア〜エから1つ選び、記号で答えなさい。
ア 日本を代表する物語である『源氏物語』を書いた。
イ 日本で女性として初めてアメリカに留学し、帰国後は女子教育に力を注いだ。
ウ 明治時代を代表する小説家で、代表作に少年少女のほのかな恋心をえがいた『たけくらべ』がある。
エ 戦争に行く弟をうたった『君死にたまふことなかれ』で、日露戦争を批判した。

問8 日本で現在発行されている紙幣と硬貨(記念硬貨は含まない)を、すべての種類を一枚ずつ集めるといくらになりますか。合計金額を答えなさい。

問9 次にあげるそれぞれの国と通貨(その国で主に用いられている「お金」の単位)の組み合わせの中で、誤っているものを次のア〜エから1つ選び、記号で答えなさい。
ア イギリス−ユーロ  イ 韓国−ウォン  ウ アメリカ−ドル  エ 中国−元
(2004年 東邦大学付属東邦中学校・抜粋・本文中に掲載の写真は割愛)

 

 

 

 

 

 

 

 

入試問題に挑戦第131回解答編
<解答>
問1 貝    問4 エ    問5 A イ   B ウ    問8 18666円    問9 ア

 2004年11月より、紙幣が新しくなりました。今回は、お金(貨幣、紙幣)に関する問題です。

問1 むかしは、貝、穀物、布、塩などを貨幣のように使っていました。これを「物品貨幣」といいます。当時、布などは大変貴重な品物でした。
「貨」幣、「購買」、「販」売、金「額」、「財」産、などのお金に関する漢字に、「貝」が使われています。

問4 和同開珎は、武蔵国で産出し、献上された自然銅によって、元明天皇即位の翌年、708年に鋳造されました(平城京に都が移されたのは710年)。唐の開元通宝を参考につくられました。

問5 日本のお札に採用された、または採用されている人物は以下の通りです。
   神功皇后 仲哀天皇の皇后 1円券1881(明治14)年など
   菅原道真 平安時代前期の貴族、学者 日本銀行券5円券1942(昭和17)年など
   武内宿祢 大和朝廷の統一に協力 日本銀行券1円券1943(昭和18)年など
   和気清麻呂 奈良・平安期の貴族 日本銀行券10円券1943(昭和18)年など
   藤原(中臣)鎌足 大化の改新、藤原氏の租 兌換銀券100円券1891(明治24)年など
   聖徳太子 推古天皇の摂政 日本銀行券100円券1944(昭和19)年など
   日本武尊 景行天皇の子 兌換券1000円券1945(昭和20)年
   二宮尊徳 江戸時代末期の農政家 日本銀行券1円券1946(昭和21)年
   板垣退助 明治時代の政治家、自由民権運動 日本銀行券100円券1953(昭和28)年など
   岩倉具視 幕末〜明治の公卿、政治家、遣米欧使節大使 日本銀行券500円券1951(昭和26)年など
   高橋是清 政治家、蔵相、首相 日本銀行券50円券1951(昭和26)年
   伊藤博文 政治家、初代内閣総理大臣 日本銀行券1000円券1963(昭和38)年
   福沢諭吉 啓蒙思想家、教育家 日本銀行券10000円券1984(昭和59)年
   新渡戸稲造 農政学者、教育家、国際連盟事務局次長 日本銀行券5000円券1984(昭和59)年
   夏目漱石 英文学者、小説家 日本銀行券1000円券1984(昭和59)年
   樋口一葉 女性小説家 日本銀行券5000円券2004 (平成16)年
   野口英世 細菌学者、黄熱病の研究 日本銀行券1000円券2004(平成16)年
  ※日本銀行券2000円券2000(平成12)年の裏面には、紫式部

  とりあげた入試問題の入試期間中(2004年2月)に発行されていた紙幣は、福沢諭吉10000円券、新渡戸稲造5000円券、2000円券、夏目漱石1000円券です。ちなみに現行紙幣(2004年11月現在)は、福沢諭吉10000円券、樋口一葉5000円券、2000円券、野口英世1000円券です。

   A アは大隈重信、イは新渡戸稲造、ウは森鴎外、エは伊藤博文ですので、正解はイとなります。
   B アは紫式部、イは津田梅子、ウは樋口一葉、エは与謝野晶子ですので、正解はウとなります。

問8 まず、紙幣が、10000円+5000円+2000円+1000円=18000円となります。次に硬貨が、500円+100円+50円+10円+5円+1円=666円となります。紙幣と硬貨の金額を合計すると、18666円となります。

問9 イギリスはEUに加盟していますが、スウェーデンやデンマークとともに、ユーロには参加していません。したがって、イギリスの通貨単位はポンドですので、アが誤っているものとなります。