NO.69
2002年 7月25日
目次
学校情報 |
教育情報 | 教育情報 | 公開模試情報 | その他 |
海城中 | センター試験 | 絶対評価1 | 首都圏模試7月
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夏休み自由研究サイト |
学校情報
海城中 塾対象説明会(02年7月5日)
説明会は7月5日、校内の講堂で行われた。当日は期末考査中とあって、学内は静まりかえっていた。説明会は毎年のことということで、入り口での資料配付などには手慣れた雰囲気が漂う。10時きっかりに開始。以下、演者順にその概要を記す。(高校入試の内容に関しては一部を割愛)
1 和田校長「新しい紳士像」
本年より新任。総論として、変更点や新指導要領に対する考えなどをお話になる。
(1) 学校説明会への取り組み
中学入試説明会4回、高校入試説明会3回と回数は昨年と同じだが、一斉型ではなく、一部を対話しやすい個別ブースによる相談会へと形態に変える。
中学入試説明会
9月11日(水)(14:00〜 定員450名)
10月10日(木)(13:30〜 定員150名)
(14:30〜 定員150名)
(15:30〜 定員150名)
11月 9日(土)(13:30〜15:00 ブース形式・個別相談会)
11月30日(土)(14:00〜 定員1200名)
(2)新学習指導要領への取り組み
総合的な学習に関しては、10年前から、中3時の卒論へゴールを定めた、調べる、考える、まとめる、発表するといった手法を教える授業が存在する。新課程では、これに高校の内容を上乗せする対応を行う。
また、本年より文系における文A・文Bというコースを文系コースとして統合。理系との2コースとする。ただし、この二コースに関しては、センター試験受験率95%以上という現状からいずれも理社履修単位数を同じとする。
(3) メールマガジンの発行
7月2日にホームページ上では発表済みだが、より海城を知ってもらうためにメールマガジンの配信を始める。ホームページも月二回を目標にアップデートしたい。ホームページ等は本校教員の手作りのもの。
(4) 新しい紳士像
海城学園は「国家」・社会に有為な人材を育成する」という建学の精神に基づき、フェアな精神・思いやりの心・民主主義を守る態度・明確に意志を伝える能力を兼ね備えた「新しい紳士」を輩出するのを目標としている。そして、昨今は、このなかで、「明確に意志を伝える」=コミュニケーション能力を重視せよ、ということを生徒に話している。現在の在校生たちが社会の中堅をになう20〜30年後、日本には30%を越える外国人(労働者)が現れることになり、コミュニケーション能力に欠けるものは対応できないことになる。学習課程はそういった力も補うのでありたい。
2 関学習指導部長「安定志向のための試験対策をするのでは、学校ではない」
(1) 進学状況
昨年比では、東京大学の合格者総数(02年度合格者総数53名。うち現役30名)が減少した。生徒および保護者の動向として、安定性を求めて医科歯科系の大学への志望者が増えているからだと思われる。実数としては、例年それぞれ一桁だった国立および私立の医学系の大学への合格者が本年は以下の通りである。
国立医学部 38名(うち現役18)
私立医学部 49名(うち現役23)
関西の進学校では、数年前からこの傾向が続いているようである。
また、医学部自体のボーダーラインが下がっているようだ。千葉大学医学部や東京医科歯科大学といった国立医学部のセンター試験のボーダーラインは720/800だったのが、昨今は680〜690点あたりまで下がっている。全国的に見ると国語の得点率がさがっており180/200はおろか160も危ない。
早稲田・慶應の合格者は例年と全く変わっておらず、そういった意味では学内のレベルが下がっているのではなく、特に保護者の安定志向が強く働いているように思われる。進路指導室を訪れる生徒の質問も医学部に関するものが多くなった。
昨今の生徒を見ると、人(学校や予備校/塾)に頼る子が多く、自分でこつこつ勉強することが苦手になってきているようだ。効率よく点数がとれる、入試一辺倒へ体制を変えてしまうようなことは、社会的に危険なのでは? 学校の役割はそのようなものであってはならないと思っている。
(2)新課程に関して
5日制を導入するかどうかは議論があったが、6日制を続行する。カリキュラムも従来と同じである。現行の新教科書はとてもつかえる代物ではない。数学に至っては絵本も同様である。問題集等は2年分過去のものを買い貯め、現在はそれを使用しているが、現在独自のカリキュラムで推進できるように教材を作成中である。
中学入試の難度は例年と変わらない。高校入試に関しては検討中。高校一年は内進生と混合クラスになるのは海城の大前提。レベルを下げたくはない。現在は数学週6時間のうち3時間を別クラスで対応。プラス補習を実施。また、国語では古典を中学で取り扱っているため、これも補習がある。よって補習は週二回、それぞれ3時25分から80分。高校からの生徒は概ねまじめで、一生懸命取り組むので助かっている。早高院や慶應義塾ではなく、海城高なのは、やはり医学部志望者が多いからかもしれない。また、他学部でも大学院進学を勘案するものも増えている。とはいえ、今後はこれだけの対応ではだめかもしれない。何をしてあげればいいのかを模索中である。心配なのは、現行の新課程が適用されている4年後の生徒。内進生は中学生として情操涵養のための芸術鑑賞などの行事ももちろん行っている。
情報の授業に関しては、教員の数が足りないのがどの高校でも現状のようだ。本校でも情報の教員免許を持っているのは一人。講習会が開かれているが、公立優先で私立をなかなか入れてくれない。海城では、私立校では情報は積極的に取り組まなくてもいいのかとも解している(笑)。
高校でのコース統合は校長もふれたとおり、早稲田・慶應進学者対象の文Aコースを国立文系進学者対象の文Bと統合、選択制の授業で対応する。前述の通り、入試対応型で絞り込んだ勉強をさせるのではなく、きちんと基礎教養を付けさせるべきだと考えている。よって、理科も、文系生徒であっても生物・化学・物理の履修を必修としている。
3 五十嵐教務部長
中学入試に関しては、基本的に変更点はなし。ただ、03年度から、入学辞退者には、施設・設備費および教育充実費(計)18万円)は返金(ただし、2月28日午後3時までの申し出に対して)をすることになった。
(1) 02年度結果・得点等
第1回 合計 国語 算数 社会 理科
360 120 120 60 60
合格者平均 217.1 66.4 82.0 36.4 32.3
全体平均 180.7 57.9 63.8 31.5 27.5
最高点 286 92 120 59 52
合格最低点 187(51.9%)
第2回 合計 国語 算数 社会 理科
合格者平均 240.6 77.6 90.1 35.2 37.7
全体平均 200.0 68.9 68.2 30.5 32.4
最高点 318 104 120 60 54
合格最低点 210(58.3%)
なお、科目バランスが悪い生徒は不合格になる可能性が大きい。足切り点に関しては年度によって異なり、受験生全体の平均点や得点分布状況、さらに教科の出題者の意向(そのテストの中に含まれる本当に基本的な問題の配点の合計など)を考慮し決定する。基本的には合計点が合格ラインに入っている生徒には適用されにくいが、前例がないわけではない。足切り点が存在するのは、基礎教育を重視するため。
(2) 合格者数および補欠の有無について
02年度
第1回 第2回
定員 120名 120名
応募者 402名 998名
合格者 153名 256名
繰り上げ合格は第2回のみ、当日の5時までに連絡。
(3)必要書類に関して
小学校の調査書等、すべて不要。
(高校入試に関しては、ここでは割愛するが、絶対評価や学校間格差を考慮し、内申点のウエイトを下げるとのこと。そのぶん、筆記試験最重視となる。)
(4) そのほか
特待制度はない。
1クラスが45名に満たないかたちで欠員が出た場合、海外帰国子女のみ対象として編入試験を行う。ただし、中2の夏まで。
(雑感)
毎年行われている塾対象説明会とあって、学校の紹介ではなく、進学状況や入試に特化した説明会であった。ご担当の先生が高校受け持ちの方が多いのか、問題意識が高校生の学力低下にあるのか、中学入試生の学力構築や生活などより高校入試にウエイトが置かれているように感じた。率直に感想を申し上げれば、今後中学新課程の生徒を高校入試で受け入れるとしても、彼らがはたして高校生らしい生活を送れるかどうかという不安が残る。学校側としては、頭が下がるほどていねいに補習や別対応を行われているわけだが、そのぶん高校入試組の生活は現在以上に学習一辺倒になり、結果として学校生活のバランスは著しく崩れるのではないだろうか。(報告 A.Og)
http://www.kaijo.ed.jp/
西大和学園 塾対象説明会(02年7月10日)
ビデオ上映(約15分)
西大和学園の学園生活を中心に作成したビデオを上映。ナレーションが入りながら学園の教育理念や学園行事をわかりやすく説明されている。
西大和学園の魅力 岡田清弘教頭先生
開講して17年。若い学校だが充実した楽しい学校生活を送っている。そもそも奈良県に進学校を作ろうとして開校し、近畿圏中心に生徒が集まり、進学校としてなりふり構わず頑張ってきた。その結果これだけの若い学校でありながら、毎年東大20名前後、京大には60〜70名前後の合格を出すことが出来ている。関西ではスパルタの学校と言われているが保護者、生徒が何を求めているのか?を常に考えてやってきた。
西大和の特色として現役合格の多さです。サンデー毎日からの資料として、東大・京大の全国現役合格数ランキングの上位3位に西大和学園が入っている。
第一位 開成 東大108名 京大 2名 合計110名
第二位 灘 東大 78名 京大23名 合計101名
第三位 西大和 東大 19名 京大52名 合計 71名
今年度合格者の東大21名中19名(90%)京大69名中52名(75%)と高い現役合格率を誇る。全体では国公立271名、早稲田28名、慶応35名、同志社99名、立命館48名と開校17年の学校とは思えない成果を挙げている。
西大和学園では中1中2の低学年を基礎学力と人間形成の位置付けとし、中3高1の中学年のを大学受験に向けた基本の定着、アメリカホームステイなどを実施。高2校3の高学年では、カリキュラムが高2で終了するため、高3の1年間は進路に合わせた指導を行う。西大和の特書としては20数種類の体験学習(帆船での航海体験、アカウミガメの産卵、磯採集、ガーネットサファイアの原石採集、過積載週、ファーム酪農体験など)を用意し、“机にかじりついてばかりが勉強じゃない”という実践教育を実施。その体験から中学の卒業論文に取り組みます。生徒達の心の中に潜在する声なき声を汲み取ります。将来が楽しみな生徒達を見ることが出来ます。昨年にはこんなテーマがありました。(遺伝子とガン発生のメカニズム、虫歯になる口とは?、国鉄分割民営化とその成果、宇宙とブラックホールについて、走運動のバイオメカニクス、クローン技術について・・・等々)
この他中学3年では語学研修旅行を実施。一人でホームステイを4日間行う。高校1年には海外探求旅行として中国に。事前に向こうの学校の生徒と文通をしており、学校交流を行う。また、卒業生の7割が理科系に進学している同校は、文部科学省の理数系の科目に重点を置き、世界に通用する研究者や技術者を育てるためのカリキュラムを研究する「スーパー・サイエンス・ハイスクール」に奈良県内唯一指定され、東大、京大などの第一線で活躍する研究者の講演・実験等を実施し、世界的研究者の育成を目指している。
関西で1800名もの志願者を集める同校ではあるが、首都圏入試に参入する理由は、この充実した教育を一人でも多くの子どもたちに受けさせたいと同時に、西大和を全国に知ってもらいたいという願いから。最後に「近い将来、西大和学園は灘に肩を並べます!」と自信を持ってお話しされた。開校17年の動き、大学進学実績、体験学習、教育内容の充実など、躍進している西大和が全国に認知されるのも時間の問題であろう。
青雲寮について 上村佳永教頭先生
同校にある青雲寮についての説明。
1学年に20名、合計120名定員のアットホームな寮。現在は70名ほどが入寮している。規則正しい生活をしっかり身に付けさせています。名古屋地区から5〜6名いるが東海から関東方面の入寮者いない。是非この機会に一人でも入寮してくれる子供を望んでいる。寮には専属のスタッフという者はおらず、各学年の担当教諭から2名づつ、更に中1の教諭からはメンタルフォローのため2名が住み込み、専属ではなくても14名の教諭が生徒の面倒を見ている。中にはネイティブの外国人教諭も住み込みをして、週1回1時間30分の英会話授業を寮内で行う。(寮生のみ)
ただ寮のある学校ではなく、寮教育を見直しをする必要を感じている。寮内では日本語禁止で英語教育に力を入れ、1年間の留学システムを取り入れるなどの寮生独自のシステムを構築したいと考えている。
寮費用/月10万円 授業料など/6.2万円で、年間200万円近く必要だが、西大和の大学合格実績が示すように、予備校は全く必要ないことを考えればそれほど高くはないと思える。
入試関連について 中岡入試広報部長
あくまでも予定だがという前置きで、
募集定員 男子220名
出願期間 平成14年12月16日(月)〜平成15年1月7日(火)
受験料 18.000円
必要書類 願書・受験票・受験票返信用封筒
科目 国語・算数(150点満点、60分)社会・理科(100点満点、40分)
試験会場 早稲田大学 西早稲田キャンパス15号館
試験日 平成15年1月13日(祝)
合格発表 平成15年1月15日(水)レタックスにて通知
受験生保護者対象の説明会;10月27日(日)10:00〜早稲田大学14号館
(報告 A.S)
http://www.nishiyamato.ed.jp/ny/
洗足学園 塾対象説明会報告書(02年6月24日)
「洗足学園は立ち止まらない」
在校生の一部に「タイタニックの先端」と呼ばれている小講堂で、高校卒業生の弦楽四重奏+クラリネットの演奏。終了後、説明会が開始される。司会を玉木教諭が進行し、前田隆芳校長、吉田英也入試広報部長の順で説明された。以下、その概要を記す。
1 前田校長
(1)新校長として「所信表明」。
前任櫻井校長から交替した4〜5月には、保護者から「洗足学園は変わるのか」という質問が多数寄せられた。それに対する答えは「洗足は若返った」というものである。ネイティブ2人をふくむ計5名を新採用、教員の平均年齢は40.8歳。保護者の年齢層とも比較がなされ、12〜18歳までの思春期を「学校を一つの家族として」考えると、成熟期ともいえる理想的な年齢構成だと思う。
教頭として14年、二人の校長の下で学校改革に携わってきた。
@鈴木校長時代('87〜'94)
旧来の短大附属・クラブ活動中心の学校の構造改革。河合塾サテライトなどを経て、講習会や勉強合宿に取り組む教師が現れる。英・数のグレード制を取り入れ、英検を推進、さらにTOEFLへの転換を図る。結果、92年の慶應2名合格は、進学校への転換の先鞭をつけた。
A櫻井校長時代('95〜'01)
校長の強力なリーダーシップの下、進学校へのリストラクチャリングに取り組む。櫻井校長の「生まれ変わるか、他のところで活躍していただくか」ということで、30名(全教員の50%)が入れ替わる。新教員の採用は能力優先で、若手・女性もどんどん採用。さらに、進学を前提としたシラバス作りを行い、授業の公開を行って、教師の研鑽と生徒の人格形成(見られることによって、矜持を抱く)を狙った。そんな中、98年、青山学院大へ21名の合格を果たし、進学校として邁進するためのベクトルが教員、保護者、生徒とも同一になった。この結果に伴い、日能研R4偏差値も上昇し、生徒の「質」が向上した。完全中高一貫体制に移行。(高校募集は帰国子女、および音楽科のみに)
また、新校舎が完成し、新システム(二期制、授業5日制、70分五コマ制)は三年目を迎える。授業五日制は、生徒の家庭にアンケートを行い、結果その約80%が週休二日のサラリーマン家庭であったため、実施に踏み切った。自立と依存の中間に位置する世代の生活を勘案、田園都市線沿線という地域性に密着した方法をとった。土曜日は、行事および、生徒の自由時間として学校を開放、生徒側からは生活のメリハリがつくということで概ね好評。
(2)学校改革に終わりなし
@どのような生徒を育てるか
中高6年間は知性、品性、感性を育てる最も重要で豊かな時期。そこでは、進路を考えてやることが最も重要。大学進学は一つのハードルにすぎず、社会に出ることを前提としたキャリアプランニング、指導が必要である。
キリスト教に由来する校名だが、宗教的な活動はしない。年に一度牧師の講話がある程度。常に生徒に話すことは、「ルール」「マナー」「プライド」ということである。
「ルール」は、品格を育てる意図はあるが、生徒には「自らの安全を守ってくれるワクである」と教えている(校則)。「マナー」は挨拶が基本。相手の存在を認めることが大切。これはまだ、これからの課題でもある。「プライド」は、高慢ということではなく、洗足生としての誇りが持てるような行動をしなさいということ。ピアスなどは問題外だが、茶髪などは時代の流れを見据える視点も必要かもしれない。ただし、教員は日々格闘中。話して理解させることが大切である。
A中高一貫の利点・授業の充実
授業は、学力形成とともに人格形成の原点。教員の生きざまや経験がそのまま生徒に影響を与える。新学習指導要領に関しては、現在学校で取り組んでいることを当てはめるだけで、合わせて何かをやらなければ行けないというものではない。総合的学習にしても、英語の時間の国際理解やボランティア活動のレポート(中2)という形で従来から取り組んでいるし、情報はむしろITの陰の部分をきちんと教えることに意味があると思っている。学習面は、当然ながら旧課程ベースでシラバスを組んでいる。(本年度は旧課程教科書を使用)ただ、今後問題になるのは、教科書・副教材は新課程のものになるわけで、それを埋める自主教材の作成が課題となる。(以下、教科ごとの取り組み)
国語:オリジナル教材はほぼ完成。授業時にディベートも行うこともある。
英語:プログレスはすでに古い。簡単な例を挙げるとmultimediaという単語すら入っていない。よって、半分を授業で使用、残りを自主教材として、News Weekなどの引用などをプリント化している。
社会:中1は日本地理から。教科書より、参考書ベースの授業。
理科:実験を中心とした参加する授業。
体育:近年の生徒の体力のなさは瞠目もの。人工芝のグランドは怪我こそしないものの、筋肉を痛めることが希にある。体力づくりが基本。
芸術:理論よりも感性。演奏中心に、やはり参加する授業。
家庭:お米を研げない生徒が増えた。家の手伝いができるような実学的なものを学ばせたい。
全体として再度教科内容の見直し、指導方法の研鑽を行っている。生徒の質があがってきたことにより、宿題をさせる方向から、自主学習の達成度を測る小テスト型へ徐々に切りかえつつある(80点が取れるまでは再試験が続けられるとのこと)。目指すのは、グローバルスタンダードの学力、「ゆるみ教育」ならぬ「ゆとり教育」というスローガンには追従しない。
B社会に有為な女性を育てる
(ここでは、本年度卒業生で、留学の時に触発され、国連で働くという希望を持って、東京大学文科一類に進学した生徒の話に触れられた。彼女の評定は平均的だったが、頭を短く刈り込んで、髪が乾く時間を惜しんで勉強する高3時のモーレツぶりを感心して話されていた。こういった先輩から目的意識を持つことについて、示唆を受けた生徒も多いとのこと)
(3)進学対策
@大学のグローバル化への対応
アメリカの大学はどんな生徒を求めているか。(留学生受け入れには)TOEFL600以上のスコアと小論文(英文)作成が一般的で、スコア500台であっても一つのテーマから総合的に研究する資質と発展する可能性を持った生徒は合格する。
本年度は、4名受験で2名が合格。失敗した二人は慶應、上智に進学したが、再挑戦を狙ってるとのこと。
A国公立大対策
本年度17名合格。現在の体制では、後期で合格していく生徒がまだ多い。当面は土曜日の国公立対策講座で対応しているが、いずれは授業での対応をしたい。医科歯科系も増えている。
通塾率は中学生が2%弱、高1〜2が20%、高3が60%程度。全体として下がっているのは、学校側が補習や単科講座で受験の対応を行っているから。
進学実績の伸びは、教員の指導力強化、授業のレベルアップもあるが、OGの頑張りも推進力になって、意識の向上につながっている。さらに、70分授業は、家庭学習の時間増加も伴った。また、自己表現をさせるHR授業などにより、思考力も向上しているようだ。
2 吉田英也入試広報部長
(1)02年度の結果として
少子化・不況による応募人数が減少傾向にある。しかし、受験率は10%上昇、第一志望としての位置づけで受験する生徒が増えた。教科別では四科目生の割合が上昇。
合格判定法は、全受験生の二科目での成績上位者で発表数の約80%を決定、残りの人数を四科目生の中での上位者(二科目合格者を含まず)で決定。よって、四科目受験生は二度チャンスがある。今年の二回目を例にとると、91名合格のうち、二科目判定で73名(うち、47名が四科目受験生)、四科目判定18名。
足切り点はない。複数受験をした生徒は、試験に慣れ、リラックスしたおかげか、三回入試での合格も多かった(三回連続入試出願者370名。二回目での合格者186名。三度目の正直、三回目のでの合格者は21名)。締め切りは2月7日、繰り上げは2月11日。手続き辞退者は帰国生に多い。
一般受験生の国語での点数のばらつきがないぶん、算数で決まったケースが多いようだ。帰国生入試にはA方式とB方式があり、Aは純粋にインターナショナルスクール生向け。英語の試験と面接(ESL教員による)で構成される。また、Bは英語がAよりやや易しく、算数・国語も一般試験よりやや易しい。英語の勉強をしたことのある日本人学校生向け。または、国内でも英語をきちんと勉強してきた生徒は対応できる。A・Bともに模擬面接を実施する。Bの方などは試し受験で一般生が受けることも可。なお、帰国受験に出願しておくと2月2日の受験資格を取得できる。
(2)03年入試
@ 2月2日(第1回) 2科目 → 2科4科選択制へ
A 第1回目・第2回目の発表は当日21:00にFAXおよびインターネットによって発表。翌日に掲示。3回目は当日。
B 科目の出題傾向
国語:説明的文章+文学作品の設問2題は同じ。ただし、「国語常識」の知識問題の出題を減らし、記述問題を増やす。
算数:3・4・5点の傾斜配点。問題によって途中式での加点を採用。よって、若干問題数を減らす。
社会、理科:記述式設問を出題。出題範囲は全範囲。
Cそのほか
帰国入試は昨年同様のA・B方式(前述)。高校入試は、帰国生と音楽科のみ。
(感想)
授業見学の折、報告者と一緒に参加した者と顔見知りの先生がいらっしゃって、校舎案内をしてくださった。その際、持ち場を離れても大丈夫なのかという問いに対して、自分がいた位置には別の職員(先生)が判断して動きますよ、とのこと。この柔軟性が洗足学校改革成功の原点なのだろう。櫻井校長から前田校長に代わっての学内の変化は、トップダウンの色が濃かった前体制に比べ、ボトムアップもなされるようになったとのことで、現場の声が反映しているそうだ。
鈴木校長時代の九年前に初めて訪問したときとは、全く別の学校の印象を与える。駅前の再開発が行われたという順風に加え、新校舎であることもその心情には大きな影響を与えているが、なにより説明会が明快である。生徒の学習内容は一新され、当時理解しにくかったコースもすっきりまとめられて、その目的志向の色合いが濃い。学校全体にインテリジェンスが漂うまでになっている。授業を行っている先生たちの年齢は若く、エネルギッシュな印象である。生徒たちも、昔ながらの明るく元気な洗足生の気質は残しつつも、勉強に打ち込む姿は(多少なりとも、見学があることでの学校側の演出はあっても)、好ましいものに映る。もちろん、まだまだ課題として残る部分はある。生徒の来客に対する挨拶や彼女たち自身の学習の工夫、教師側の授業法の工夫や生徒との学問的な部分での距離感など。しかしながら、受験者の「偏差値」を考えると、大学の進学実績も含めて信用に値するわけで、教師サイドの力量も校長の言「公開授業による研鑽」が実現すれば、その経験が育むものも出てくるだろう。
今回の説明会で印象に残ったのは、進学対策の説明の順序が@大学のグローバル化A国公立対応B医科・歯科への対応ということで、パンフレットなども英語を中心とした国際教育のページに数多く割かれている点である。単なるイメージ戦略とも受け取れるわけだが、各関係者はどのように評価しただろうか。
先駆けになることとは、異端になることを意味するわけで、新しい取り組みを行うには相当なエネルギーが必要なはずである。現在ではある程度世間の共通認識であるにしても、「英検よりもTOFEL」というスローガンは、その認知度や体制転換の面倒くささも相俟って、現校長が教頭職として改革を進めてきた鈴木校長在任当時としては、簡単に学校の看板にはできなかったはずである。にもかかわらず、進学校への転換と軸を同じにしてそれを推進したのだから、そこには多大な労力と人的な軋轢もあったに違いない。(風聞としての、櫻井校長時代の教員に対する「変わるかやめるか」など) だが、それは、結果的に時代の流れに応じた成果を提示することになった。帰国クラスが存在するとはいえ、TOEFLおよび英検のスコアは見事である。そして、今回は、看板教材たるプログレスを「切り捨てる方向」(少なくとも古くさいと否定的に捉えている)である。進学色が濃くなってきたところで「大学のグローバル化」である。あえて、ここで「(現在における)保守的なわかりやすさ」のシークエンスを外すわけである。
アメリカおよび英語圏の国の大学への進学に関しては、ある男子難関進学校の教頭の「そのほとんどが逃避としての留学だ」ということばが思い起こされる。大学卒業後にESLのある州立大学やコミュニティーカレッジなどで短期(1ヶ月〜半年程度)の語学留学をするのは、一種のモラトリアムとしての評価もあると伝え聞く。世間的には(少なくとも、企業サイドからは)逆風の評価もあり得るということだ。だが、洗足の英語教育は、このESLを学内で行うことで、現地のメインストリームに入るまでの時間短縮を可能にするだろう。ただし、現状では、講座やネイティブ英語科スタッフの存在は、生徒の英語学習のモチベーション・アップ・ツールとして働いている割合が大きいと見受けられる。では、「TOEFL対策」の次に、洗足はどんな手を打つだろう?
日本でESLの教員がいて、講座をとれば長時間英語に浸かれる環境は、帰国生にはありがたい。TOEFLとESSAY WRITINGが講座として選択でき、国内大学という選択肢なら、「日本語」の試験対策は当然しっかりしたものだから、帰国枠をベースとした大学受験はかなり有利になる。海外留学でもAO色の強い学校ならば、TOEFLとGPAで受験が可能なわけである。学校自体が海外進学に理解を示しているのだし、スタッフも方法論を心得ているはずである。得体の知れない塾に行かなくてもいいから、心情的にも楽である。また、そのような環境が、講座という開かれたところにおかれて、なおかつ同窓生としてその道を目指すものがいるという環境は、一般生徒にも少なからず影響を及ぼすだろう。ここで難関国立の話を持ち出すのも何だが、「東大合格が出たのは大きい」という前田校長のことばにもあるとおり、OGの生み出す推進力と学校側の努力が相乗効果を生むからだ。OGが開いた道は、大人が用意したレールとは性質を全く異にする。可能ならば、進路は国内外を問わないはずだ。
中期的な将来(10〜15年後・現在二十代半ばの世代が二十代後半で結婚、子供を作ったと仮定して)に、受験生の保護者の中にTOEFL受験経験者や現役の人が現れる時、講座や学校としての方向にどんな商品価値を持たせるか。女子教育においてはまだまだ保守的な日本で(経済的理由も絡めて)、その時点で留学が一般的になるとは考えにくいが、SATUまで学校が面倒を見られるようになれば、話は別になるだろう。(男子難関校は、そこへ視点を定めて人材確保に動いている節がある。)または、今の英語を完全な受験ツールとして役立てて、本格的な進学校として「進化」するか。
転がる洗足に苔は生えない。ここまでの学校改革は大成功を収めているように見える。いわばジャパン・ドリームの体現を当学園は果たそうとしているわけで、今後の展開から目を離せない。(報告 A.Og)http://www.int-acc.or.jp/senzoku/
横浜英和女学院 塾対象説明会02年7月8日
学院の教育方針 森山校長先生
1880年宣教師H・G・ブリテンによりブリテン女学校として設立し、横浜英和女学校に。1916年、8代校長のオリーブ・アイ・ハジス(34年間もの間、横浜英和で指導)の時代に現在地に移転。昭和14年に成美学園と校名改称するが、平成8年に戦前の名称である横浜英和女学院に改称した。キリスト教育の学校で「心を清め 人に仕えよ」を校訓に掲げ、1日はお祈りから始まる。創立当初は国語と家庭科以外は全て英語で授業を行ってきた。帰国生も多数在籍し、国際性の豊かさは伝統的なものである。と、学校の沿革、教育理念、横浜英和が目指す「自分で選択する・選択できる女性」の教育を説明。
学院のカリキュラム 伊藤教頭先生
新学習指導要領になっても学習内容の削減はしておらず、5日制や二期制の中で工夫しながら効率よく指導している。どの方面に進んでも大丈夫なように基礎科目に力を入れている。英語教育では中1・中2では少人数授業、中3以降では選択制グレード別・少人数授業で行っている。プログレスがメインで、ブック1〜3までの3冊を中1〜高1までの4年間で終えるように進んでいく。高校からは選択科目を設け、各自の進路に向けた学習を可能にし、高1では2単位、高2で12単位、高3では15単位が選択科目。高3の選択科目ではT類〜X類に分けて25〜30の講座が設けられている。採算は度外視の設定の仕方である。豊富な選択科目の中から自分の進路に必要なものを自由に選べるように工夫されている。
進路実績 進路指導部小宮先生
2002年度大学入試結果を、進路指導部による集計分析した資料を配付し説明。各大学への合格人数の延べ人数を、推薦・一般・浪人と区分し、進学人数まで示してあり、わかりやすい資料であった。生徒一人一人が自分の進路を選択し、短大→四大へとシフトしてきているのが、96年に31.5%占めていた短大進学が01年には17.2%と5年で半減してきていることからこの学校に勢いがわかる。
今年度卒業生239名の進路状況は、大学131名(54.8%)短大(17.2%)専門学校(10.9%)その他6(2.5%)浪人35(14.6%)。卒業生の進路状況推移では、1999年に大学進学が61.3%をピークに59%→54.8%と下降しているが、浪人を選ぶ生徒も増加しているので、一概に下降とは言えない。しかし、四年制大学の志望者209名と決定進路の131名、その差78名のうち35名が浪人の道を選択し、残りの43名が短大や専門学校に進路を変更している。この43名の進路変更をいかに減らしていくことが出来るかが今後に向けた課題ではないか。
入試問題傾向と対策 4教科担当教諭
国語・・・評論文、小説、漢字、語句。A、B、特別入試どの回でも大きく出題傾向は変わらない。今年度入試でも最近気になるのは、語句や四字熟語などは学習していることがよく出来るが、「ことば」を知らないこと。例えば「後ろめたい」「はからずも」といったことばの意味を聞く問題は、正答率が低い。それが読解力不足につながっていると思える。
2003年入試では、特に傾向は変えませんが、漢字・語句を活かす読解を考えている。新聞等を読む習慣を持っていて欲しい。
算数・・・四則計算、一行題、図形といった基礎問題を前半に、後半にはグラフ、水そうの問題を配した。〔1〕〔2〕をきちんと得点できれば6割以上の得点に結びつくので、基礎部分の問題を練習しておいて欲しい。
社会・・・日本の地理(都道府県名、位置など)、歴史、公民で出題。地理の県名でもそうだが、漢字で書けるように。歴史ではペリー来航を境にして、江戸〜来航、来航後〜現代の部分で考えている。公民では国民主権、基本的人権、平和主義の部分を中心に考えている。それぞれ16〜17点の配点で構成するが、とにかく漢字で書ける学習を!
理科・・・応用問題はそう多く出題していない。物理→力の関係、ばね 地学→気象、天文 化学→過去の傾向通り 生物→実験、観察といったところで出題を考えている。
2003年度入試について 谷沢入試情報部長
来年度変更点・・・@2/2のB日程を2/3に。A2/5に実施していた特別選抜をC日程と表示変更する。BA日程50名→60名 B日程50名→40名に定員を調整
2科4科の選択入試の判定方法は、A→まず2科、4科受験生を国算合計で75%〜80%を判定し、残りを4科受験生で判定する。 B→4科合計でまず判定し、2科合計で判定。更に受験生の特性を見た判定を10%程(国社または算理) C→国、算のどちらかよい方を見る。国語、算数、合計とそれぞれ偏差値を出し、様々な角度から見て判定する。
グループ面接は変更なし、帰国生入試は12/12と1/10の2回を予定。
2004年度(現5年生の入試)には、2/1が日曜日にあたるため、2/2、3、5で実施することを考えている。(報告 A.S)
http://www.yokohama-eiwa.ac.jp/
森村学園 03年入試要項
1回 2月2日 男女50名 2科4科
2回 2月4日 男女20名 2科4科
3回 2月6日 男女20名 2科4科
入学手続は各回とも2月17日15:00まで。
02年入試結果
1回 男子 女子
募集 50名
応募者 142 179
受験者 121 149
合格者 51 72
2回 男子 女子
募集 20名
応募者 187 198
受験者 98 76
合格者 25 19
3回 男子 女子
募集 20名
応募者 165 180
受験者 74 64
合格者 18 12
森村学園を受験すると決めた理由(説明会資料・・・新入生アンケートより)
生徒、保護者のあげた理由の上位5項目を資料より抜粋(複数回答)
生徒
1 自然環境 18名
2 先生の雰囲気 17名
3 在校生の雰囲気 15名
3 学校の雰囲気 15名
3 通学の便 15名
保護者
1 先生の熱意 34名
1 家庭的な雰囲気 34名
3 環境 28名
4 カリキュラム・授業の質 17名
5 通学の便 15名
森村学園の目指す教育(説明会資料より)
森村学園中・高等部 校長 富岡浩行
「私たちを行動するよう教育し、私たち相互間を親密にし、無知によって生じた不運と、必要によって生じた不運とを区別し、前者を避け、後者をば愚痴をこぼすことなく耐え忍ぶことを教えた知的教養はアテナイから起こった」(イソクラテス)
この引用文の最後の個所、アテナイを森村に置き換えて、そっくり同じ事を卒業生に言わせてみたい、これが私たち森付学園中・高等部教職員の夢です。
今や国立大学も含めて学校間競争の時代、よりよい教育を提供すべく各学校は相互に切瑳琢磨しております。競争がないところに進歩はありませんから、これまで社会の動きと没交渉で万事にのんびり構えていた学校が覚醒したことは、社会全体にとって大きなプラスです。学校は生徒の学習への動機付けをもっと工夫し、乾燥した砂地が水を吸い込むように知識と教養を生徒に伝達するためにもっともっと努力すべきなのです。たしかに人生は長く、その中での学校在学期間は限られていますから、人間にとって学校がすべてではありません。ただ、三つ子の魂百までといわれるように、人間にとって幼児期は大切な時期で、同様なことが学校にも当てはまるのではないでしょうか。どのような教育環境で誰と過ごしたのかは大なり小なりその人の人生に影響を与えます。
本校もここ数年、旧弊を改め教育改革に取り組んでまいりました。しかし、ここに来て痛感するのは、学校は初心を忘れてはだめだ、原点に返らなければだめだという単純な事実でした。改革をアピールし自己PRをするのもよいが、個々の教員が自己啓発し、能力が不足している者はそのことを自覚して研鑽を積み、自分の授業の質を高めなければ制度改革は本末転倒でありヴィジョンは文字どおり絵に画いた餅となってしまいます。教員と生徒が一時間一時間の授業を大切にする学校、これを21世紀の森村の新しい伝統として形成してゆきたいのです。また、学校で学ぶことは勉強面だけではありません。様々な学校行事を通じて経験を広げ、豊かな感性を創造し磨いてほしいと願っています。今後も生徒会活動等を活性化し、生徒達の自主自立の精神を育ててゆきたいと思っています。
http://www.morimura.ac.jp/
合同説明会
文京区私立中学高等学校進学説明会 (7月14日実施)
日能研公開模試、四谷大塚公開模試と重なり参加者は昨年よりもやや少な目。
各学校の個別相談ブースの他に、ミニ説明会の会場も用意される。
個別相談の様子
千代田・中央私学フェア (7月20日実施)
700組の保護者・生徒が参加。終了間際になって相談希望者が列を作っている学校もあった。
相談会の様子
教育情報
センター試験 06年度からリスニング導入
(毎日新聞 7月12日)
文部科学省は、06年度の大学入試センター試験に外国語のリスニングテストを導入する方針を固めた。高校の新学習指導要領が来年度から導入され、新課程で学んだ生徒が大学受験を迎える06年度が最適と判断した。同省は今後、大学や高校関係者とさらに細部について協議し、4年後の実施に備える。
リスニングテストについては、00年11月の大学審議会(現・中央教育審議会大学分科会)答申で、センター試験改革を進める方針を打ち出した中に盛り込まれた。答申を受け、文科省は大学入試センターなどと協議を重ね、テストの実施方法や導入年度、日程などの調整を図ってきた。
現在のセンター試験は、1月下旬に2日間の日程で実施されており、教科・科目の時間割設定はぎりぎりになっているため、試験日程を3日間にすることも含めてさらに検討を進める。
英語力戦略構想 文科省が英語力を高める戦略構想公表
(毎日新聞 7月12日)
高卒で英会話OK、大卒なら英語で仕事を――。「英語が苦手な日本人」を克服するため、文部科学省は12日、日本人の英語力を高める「戦略構想」をまとめ、公表した。国民に求められる英語力を具体的に示した上で、それを教える中学・高校の英語教員に求められる英語力として英語検定準1級などの目標を示した。また、英語を母語とする外国人を正規教員に採用する方針。同省は、早めにできる施策から来年度の概算要求に盛り込む方針だ。
日本人の英語力は米国大学留学のための英語能力試験(TOEFL)の平均点で156カ国・地域中144位、アジア23カ国・地域で22位と極めて低い。
構想では、生徒たちの目標として「高校卒業段階で、英会話ができること」「大学卒業段階では仕事・研究で英語が使える」などを設定。そのために、英語教員に対しても英検準1級のほか、TOEFL550点、国際コミュニケーションのための英語能力試験(TOEIC)730点など、比較的高いレベルを求めている。さらに、教員採用の際にもこれらの点数を評価したり、教員の評価に考慮することを教育委員会に求める。
さらに来年度から5年計画で、現職の中高の全英語教員(6万人)に研修を実施し、現在ではアシスタントとして授業にかかわっている外国人教師を、今後3カ年で中学校で300人ほど正規教員として採用し、将来的には中高で1000人を採用することも計画している。また、高校生の海外留学も促進する。
このほか、今年度から始まった「総合的な学習の時間」の時間で英会話を実施している小学校にも、外国人教員が授業時間の3分の1程度を指導できるよう支援する。次の学習指導要領改訂で小学校での英会話活動の位置付けを議論するため、実態把握や研究を進めるとしており、将来的に英語が小学校で正規の授業として位置付けられる可能性も出てきた。
家庭の教育力 親の67%が「低下」と認識
(朝日新聞 7月12日)
子どもを持つ人の7割近くが「家庭の教育力が低下した」と感じていることが、国立教育政策研究所の全国調査でわかった。小学校入学前、自分の子どもが「はしが使えた」「ひとりで歯磨きができた」という回答は、若い親ほど少ない。同研究所は「しつけが手薄になっていることがうかがえる」としている。
家庭教育としつけについての調査は、同研究所としては初めて。昨年10月、子どもを持つ全国の25〜54歳の男女1万2千人に郵送で依頼し、3859人から回答を得た。回答者の男女比は4対6。(1)25〜34歳(2)35〜44歳(3)45〜54歳に分けて分析した。
「家庭の教育力が低下したと思うか」との質問に、「その通り」「ある程度そう思う」と答えたのは67%。45歳以上では72%、34歳以下では55%と、年代が高いほど多い。低下の理由としては、「過保護、甘やかし過ぎや過干渉な親の増加」との回答が多かった。
自分の子どもについて、小学校入学までに、どのような生活習慣が身についていたかも聞いた。「はしを使って食事ができた」は、45歳以上は80%だったが、35〜44歳は72%、34歳以下では52%。「朝晩ひとりで歯磨きができた」は、45歳以上では47%だが、34歳以下は21%だった。
小学校低学年までに子どもを最も激しくしかったか、しかる必要があると思った場面を二つずつ選択してもらうと、全体では「うそをついた時」(56%)、「物を粗末にした時」(27%)、「弱い者いじめをした時」(26%)が多かった。
高い年代ほど「親のいいつけを守らなかった時」「わがままを言った時」が多く、若い層は「暴力をふるった時」が多いのが特徴的だった。
教育への株式会社参入 時代の要請、石原行革担当相
(朝日新聞 7月14日)
石原伸晃行革担当相は13日、京都市内で開かれた日本私立大学連盟学長会議で講演し、学校経営への株式会社の参入について「農業、教育、医療、福祉という4分野への株式会社参入を図る門戸の開放は時代の要請ではないか」と述べ、規制緩和を積極的に進めていく姿勢を強調した。
石原氏は教育分野への株式会社参入について「株主の意向で安易に教育内容が偏向されないかなどと指摘されている」と認めたうえで、「(学校経営は)相当の市場規模があり、経済活性化にもプラスになる。中高段階では公立校中心にいじめや学級崩壊が深刻になっている。21世紀にふさわしい、新しい学校のあり方を考える時期に来ている」と主張した。
石原氏は中教審が公表した法科大学院の設置基準については「過剰と思われる設置基準が並んでいる。本当にやろうとしているのか熱意を疑いたくなった」と批判。「第三者による評価制度を前提に必要最小限として欲しい」と注文をつけた。
=利潤と効率を追求する株式会社と本来学校に求められる教育とは両立しないのではないか。=
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学校経営、株式会社も 規制改革会議が中間まとめ案
(朝日新聞 7月3日)
政府の総合規制改革会議(議長・宮内義彦オリックス会長)は、今月中に策定する中間とりまとめに、医療、教育分野への株式会社の参入や下水道事業の民間開放、地方公営企業の民営化促進などを盛り込む方針を固めた。12月の最終提言を経て閣議決定されると、各省庁は提言の実行や検討を迫られる。今後、省庁や関係業界の抵抗も予想される。
総合規制改革会議は昨年度から3カ年にわたって規制の見直しを進めており、今年度は経済活性化をテーマに規制改革特区や官製市場の見直しなど5分野を検討している。このうち官製市場の見直しでは、医療、福祉、教育、農業など公的関与が強く市場参入が制約されている分野の規制を緩め、民間参入や民間委託、民営化などを促し、市場の活性化を狙う。
中間とりまとめ素案では、国や地方公共団体、学校法人に限定されている学校経営を株式会社にも認めるべきだと明記。資金調達の多様化や教育サービスの向上、経営の効率化などが期待できるとしている。
昨年末の第1次最終提言に盛り込みながら、与党や関係団体の抵抗で閣議決定では削られた医療機関経営への株式会社参入も再び盛り込む方針。
福祉分野では、市町村と社会福祉法人に限定している特別養護老人ホームの経営に株式会社の新規参入を認めるべきだと指摘。条件付きで参入が認められている農業生産法人の参入条件を撤廃することも求めている。
官から民への事業移管の推進では、民間委託が認められている上水道事業に加え、新たに下水道事業の民間開放を掲げ、下水道設備の維持・更新を含めた包括的な民間委託を進めるべきだとしている。公営ガスや公営バス事業、自治体病院といった地方公営企業についても、その業務内容に応じて事業譲渡による民営化や民間委託を進めることを盛り込む方針だ。
週5日制対策 夏休み期間短縮し授業や実習に、大阪府立高6校
(毎日新聞 7月13日)
大阪府立高校の6校が、今年の夏休みを短縮し、授業や実習を行うことが13日、分かった。学校週5日制の完全実施に伴う授業時間の不足を補うためだが、夏休みが9日も短くなるなど、年間授業日数が昨年より増えている学校もある。近畿では京都、和歌山でも同様の動きがあり、「ゆとり教育」への転換が必ずしも順調に進んでいないことを示している。
大阪府教委はこれまで、「学校運営管理規則」で、府立高校の長期休暇(夏休みは原則、7月21日〜8月31日)を一律に定めていた。しかし、今年4月の学校5日制導入で授業日数は従来の190日から175日に削減。学力低下を懸念する声が学校現場から上がり、今年度から長期休暇を最大で約10日間、高校が独自に調整できるように規則を改正した。
茨木高(茨木市)は夏休みを土、日曜日を除く8日間短縮し、8月21日から全学年で午前中に授業を実施。29、30両日は実力試験を行う。同時に、今年度から2学期制を導入して学校行事や定期テストなどを減らし、授業時間も15分長い65分に。この結果、年間の授業日数は従来よりも数日増えた。
このほか、箕面高(箕面市)は、3年生が夏休みを9日間短縮して8月20日から、1・2年生も同26日から授業を始める。福井高(茨木市)も授業開始は3年生が同21日、1・2年生は同28日になる。また、園芸高(池田市)は、1学期末に行っていた農場実習(約1週間)を繰り下げ、夏休み中に実施する。
同様の規則改正を行った京都府教委では府立48高校のうち嵯峨野高(京都市)など3校が最大3日、和歌山県教委では県立34高校のうち向陽高(和歌山市)など5校が最大5日、「授業時間の確保のため」(両府県教委)、それぞれ夏休みを短縮する。兵庫、奈良、滋賀の各県教委は規則改正はしていない。
こうした動きに大阪府教委は「長期休暇の弾力化は、学力低下への対策だけではない。特色ある学校づくりにも活用してほしい」(学事課)と話している。
絶対評価1 来春の高校入試内申書、7割の都道府県で絶対評価採用
(朝日新聞 7月14日)
来春の公立高校入試の調査書(内申書)の学力評価をめぐり、東京など21都道府県が「絶対評価」で記すことを決める一方、大阪、愛知など10府県は「相対評価」の維持を打ち出すなど対応が割れていることが朝日新聞社の調べでわかった。両方を併記して独自の対応をする県もある。絶対評価を入試の合否判定に使うことの難しさをうかがわせている。
新学習指導要領に伴い、文部科学省の方針で小中学校の通知表などは今年度、相対評価から絶対評価に全面移行したが、調査書の評価法は各教委に判断が委ねられた。
調査書は高校入試で、学力テストと並ぶ重要な合否判定資料。全員に満点をつけることも可能な絶対評価で「十分な判定ができるか」といった懸念があり、どう対応するかは焦点になっている。
13日までの状況では、34都道府県が来春入試の方式を正式決定した。このうち絶対評価で記すのは東日本を中心にした21都道府県。ほかに8県がこれに加わる方向で、最終的には全国のほぼ7割の教委が絶対評価を採用する見込みだ。
絶対評価を選ぶ理由は、「調査書に相対評価を残した場合、指導要録などの絶対評価と二重基準になり、混乱を招く」(千葉県)▽「二つの評価の併存は教育上おかしい」(静岡県)▽「子どものいいところを伸ばす絶対評価を定着させたい」(埼玉県)――など。
一方、相対評価を選ぶのは10府県。東海から北陸、近畿にかけての地域で目立つ。このうち新潟、茨城、愛知、鳥取県などは2、3年後、絶対評価が学校になじんだ段階で調査書も切り替える方針。奈良県は05年春まで相対評価を続け、06年以降は改めて検討するという。
「絶対評価は始まったばかり。客観性、公平性の観点から、問題ないと評価される状況になっていない」(大阪府)、「保護者らの理解を得るには相応の期間が必要」(富山、鳥取県)などと説明している。
しかし、通常の通知表は絶対評価、調査書は相対評価と2通りの作業をしなければならず、教師の負担を心配する声も出ている。
独自の方式をとるのは福岡、熊本、広島の3県だ。福岡は「現3年生の調査書は絶対、相対の両評価を併記する」と決めた。熊本は英語、数学、国語など主要5教科は調査書の評価を入試に使わない。広島は推薦入試は絶対、一般入試は相対と使い分ける。
このほか、絶対評価を選ぶ山形、栃木、島根県などは、調査書より学力テストの比重を高める方向で、高校の裁量の幅を広げる。「絶対評価は選抜に使いにくい」という高校側の声に配慮するねらいもあると見られる。
【相対評価と絶対評価】 学年、学級でどの位置にいるかを他の生徒との比較で示すのが相対評価。高校入試の調査書では5段階の場合、「5」は何%、「4」は何%などと配分率を各都道府県教委が決めていた。絶対評価は、他の生徒に関係なく、その生徒個人の学力到達度を測る。目標に到達した生徒全員に最高点の「5」がつくこともありうる。いずれも10段階で点をつけることもある。
絶対評価2 「相対評価」から「絶対評価」へ 先生悩む
(毎日新聞 7月19日)
新学習指導要領、完全学校5日制の導入で教育現場が激変した1学期が終わり、全国の大半の小中学校で19日、1学期の終業式が行われた。この日、中学校では、学習評価の方法が集団の中での位置を示す「相対評価」から学習の到達度を測る「絶対評価」に変わって最初の通知表が手渡された。5段階の「5」や「4」を何人につけてもよいため、成績の良い子供が増える“成績インフレ”の恐れも指摘されているが、どうなのか。先生たちに新しい評価の評判を聞いた。
「保護者に説明するための資料を作ったり、評価しやすいようにテスト問題を工夫するため、土曜、日曜も出勤した。評価に振り回されて、授業に心の余裕がなくなった」東京23区内の公立中に勤務する国語の女性教諭は1学期を振り返った。
絶対評価では、学習内容の理解度だけでなく、やる気や表現力などを多面的に評価する。教師は各単元や授業時間ごとに観点を定め、それに沿って評価するよう求められる。親や生徒にも、これまでとどう違うか説明しなければならない。
一方、相対評価では、5段階の「5」は7%、「4」は24%などと決まっていたが、絶対評価では規制がなくなる。極端な場合は、「1」や「2」をつけなくてもいい。
女性教諭は「私は学習ができていない子供には『1』もつけた。保護者に反発されないかな」とちょっと心配そうだ。
一方、東京・多摩地区の公立中の男性の理科教諭は「今までなら迷わず『1』をつけていたケースでも、意欲・関心があることにして『2』をつけた。同僚も苦労していた」と“成績インフレ”の実情を明かす一方、「1時間の授業ごとに子供の意欲や関心を評価するのは、指導がおろそかになるので無理だ」と話した。
これに対し、千葉県の公立中の男性教諭は、授業の様子を毎回記録して、生徒の意欲や関心を中心に評価した。「1時間ごとの授業の後の評価でも、3段階の最低のC評価をしっかりつけ、むしろ頑張らせるように誘導した。全員が最高のA評価では向上心がなくなってしまう」と、評価が甘くなりすぎないよう注意したことを強調した。
兵庫県では来春の高校入試の調査書(内申書)で、従来通り相対評価を使う。このため中学3年生では、絶対評価でも成績の分布が相対評価とあまり違わないようにする学校が多かったという。
男性の社会科教諭は「絶対評価の通知表が『5』で、相対評価の内申書が10段階評価の『6』では、保護者に文句を言われても説明できない。しかし、内申書と関係ない1、2年生の通知表では、『4』や『5』が多くなった」と話す。
高校に予備校出張 講師派遣広がる
(日経新聞7月18日)
学習塾、予備校が私立高校と組み、大学受験対策の専用講座を放課後や土曜日に開設する動きが広がっている。講師を各校に派遣、生徒の学力に応じた講座を、半年や1年間のカリキュラムで運営する。価格面でも既存の塾、予備校に通うのに比べ生徒の負担が軽い。少子化で生徒が減る中、“学校内予備校”は保護者にもアピールできると、高校側も連携を強める。
学習塾大手の栄光は来春までに首都圏や大阪市を中心とした関西圏の約30の私立高校に講座を開設する。週1、2回の放課後講座のほか、土曜日、入試直前の短期集中や、夏・冬休みなど学校側のあらゆる要望に応えるようにする。軌道に乗れば、地方都市にも拡大する方針。
=学校内予備校がセールスポイントでは私学としてあまりに淋しいのではないか。そういうシステムを取り入れた学校の先生達の気持ちはどうなのだろうか。自分で講座を担当するよりは生徒の力がついて、自分たちは楽をできるから一石二鳥と思っておられるのだろうか。=
夏休みの補習 東京都港区立の小中学校全30校でスタート
(毎日新聞 7月22日)
夏休みが始まったばかりの22日、東京都港区の小中学校では夏休み補習が始まった。学校5日制で学力低下を心配する声があるため、「夏休み中に基礎をしっかり身に着ける」(区教委指導室)のが目的で、区立小中学校全30校が全学年の希望者を対象に4〜15日間実施する。
教育基本法 全面改正見送り
(読売新聞 7月16日)
中教審 「宗教教育」盛らず
文部科学相の諮問機関、中央教育審議会(鳥居泰彦会長)は16日、教育基本法の見直しについて、全面改正を見送り、教員の資質向上や、教育で家庭の果たす役割などを追加する部分改正にとどめる方針を固めた。2000年12月に報告書を取りまとめた首相の諮問機関、教育改革国民会議の議論では「新しい教育基本法を国民の了解と合意により制定すべきだ」など、抜本的な改正を求める声が出ていた。現行法が掲げる平和主義や個人の尊厳などの基本理念も残すことになった。中教審は今秋に中間報告をまとめ、早ければ年末にも答申を遠山文科相に提出する。
中教審がまとめた教育基本法見直しの基本方針は、〈1〉社会情勢の変化に合わせて不足した部分を補う〈2〉憲法の枠内で見直す〈3〉現在の教育基本法で掲げられている普遍的な理念は残す〈4〉教育振興基本計画の根拠規定を盛り込む――など。
新たに補う部分として、いじめや学級崩壊などの問題に対応するため、教員の使命感や責務をより明確にし、資質の向上や研修の重要性を盛り込む方向で検討している。家庭教育については、家庭の果たすべき役割や責任を明確にしたい考えだ。
教育改革国民会議の報告では、「宗教教育」について、「宗教的な情操をはぐくむという視点から議論する必要がある」と見直しが提案されていた。中教審でも、道徳教育を進める上で宗教的な情操を育てることが必要との意見が出たが、憲法二〇条で定めた「信教の自由」に抵触する恐れがあることから、教育基本法九条の「宗教教育」の条文は大幅な改正を避ける可能性が強まった。
中教審で議論されていた「義務教育」「教育の機会均等」などの条文に関しても、憲法に関連しており、「憲法に関する議論は立法府にゆだねるべきだ」との意見が強く、「憲法の枠内で見直す」として踏み込んだ議論は避ける見通し。
また、教育基本法の前文にうたわれている「世界の平和に貢献」「個人の尊厳を重んじ」などの理念については、「普遍的な理念は残しながら、新しい教育基本法はどうあるべきかという視点から見直す」とし、憲法にも掲げられていることから、残す方向となった。教育改革国民会議の議論では、「自由と平等、個人の権利に傾いている」「民族固有の伝統文化に対する尊重と愛情が一言もない」など、批判的な意見が出されていた。
現在、策定に向けて議論している教育振興基本計画は10年後の社会を見通し、今後5年間の重点施策を明示する重要な指針と位置づけ、教育基本法に根拠規定を盛り込むこととした。
教育基本法見直しと教育振興基本計画の策定は、教育改革国民会議が報告の中で提案した。当時の町村文相は「部分的に字句修正するのではなく、新しく書き下ろす心構えでやった方がいい」と全面的な見直しに意欲を示していた。
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宗教教育 教育基本法見直しで、中教審が導入見送りへ(読売新聞 7月17日)
重要性は認識、幅広い論議が必要
文部科学相の諮問機関、中央教育審議会(中教審)は16日、教育基本法の見直しに伴い、「宗教教育」の積極的な導入は避ける見通しになった。
憲法二〇条の「信教の自由」にならい、教育基本法九条二項では「国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない」と定められている。これに基づき、国公立学校では事実上、宗教教育が行われてこなかった。
戦時中、神道に特別の地位を与えて学校でも宗教教育が行われたほか、国家神道の支配下に他の宗教を置き、信教の自由を圧迫したことへの反省からだ。
宗教教育見直しの機運が高まったのは、首相の諮問機関、教育改革国民会議がまとめた2000年12月の報告がきっかけ。凶悪化する少年犯罪やいじめなどの問題を念頭に、報告は「宗教的な情操をはぐくむ」視点の重要性を指摘し、教育基本法を見直すことを提言した。
背景には、カルト(狂信的宗教集団)に無自覚なまま走るなど、宗教に対する基本的知識を持たない若者が増えている事情や、日本人が世界で頻発する宗教的対立が原因の地域紛争を理解できないとの指摘もある。
ただ、「宗教教育」の受け止め方は様々だ。複数の宗教に関する知識を教えて宗教的情操を養い、人格育成を目指すという広義の考え方がある一方、狭い意味では、特定宗教の教義や儀式を教えることも重要とする考え方がないわけではない。
16日の中教審基本問題部会でも、京都ノートルダム女子大学長の梶田叡一委員が「宗教は人類の重要な文化遺産だということを忘れている」と宗教の知識に関する教育に前向きな姿勢を見せれば、元日教組書記長の渡久山長輝委員は「戦時中の歴史の中から教育基本法九条は出てきた。たいへん重い条文だ」と慎重な姿勢を示し、激論が繰り広げられた。鳥居泰彦会長が中教審総会で再度議論することを提案し、ひとまず収めたが、宗教教育について提言を集約することの難しさを垣間見せた。
さらに、大きな障害は憲法との関係だ。宗教教育について定めた教育基本法九条に手をつければ、「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」とする憲法二〇条三項の条文見直しに議論が波及しかねない。中教審内では「憲法に関する議論は立法府にゆだねるべきだ」との声が強まっており、委員の1人も「文部科学省は、憲法に関する部分をタブーとすることで、(法改正が)政治問題化するのを避けたいのだろう」と分析する。
もっとも中教審で議論を積み重ねてきた結果、〈1〉宗教についての知識とその文化、価値の理解についての教育〈2〉カルトやマインドコントロールに対し自分で意思決定できる個の確立のための教育――の2点を重視、宗教教育は何らかの形で必要とのコンセンサスは出来つつある。
中教審が今年2月、「新しい時代における教養教育の在り方について」と題する答申をまとめた際も「東西冷戦の崩壊後、他者や異文化やその背景にある宗教を理解することの重要性が一層高まる」と指摘した。
ただ問題は、宗教教育を学校や家庭、地域などで、どういう形で行うか、意見が大きく分かれていることだ。必要なのは、中教審に性急な結論を求めず、宗教教育について、国会を含め、国民全体がタブーのない議論を広げていくことだろう。
公開模試情報
首都圏模試7月 統一合判(7月7日)
前年比4.6%の増加。男子の3.4%の増加に対して、女子は5.7%の増加。
02年 01年 00年
男子 4科 4252 4030 3691
2科 774 832 833
女子 4科 3552 3041 2687
2科 1988 2200 2591
合計
10566 10103 9802
日能研模試7月 志望校選定(7月14日)
今年は四谷大塚と実施日が重なったにもかかわらず、昨年比3.3%の増加。
男子は4.0%増。女子は2.7%増。
02年 01年 00年
男子 4科 7126 7050 6483
2科 700 477 617
女子 4科 5492 5120 4791
2科 1765 1948 2185
合計
15083 14595 14076
四谷大塚模試7月 合不合予備(7月14日)
今年は日能研と実施日が重なったにもかかわらず、昨年比4.9%の増加。首都圏だけでも4.0%の増加。男子は2.6%増。女子は7.6%増。
02年 01年 00年
男子 4科 4784 4609 4931
2科 447 487 562
女子 4科 3555 3048 3237
2科 992 1178 1534
合計 9778 9322 10264
7月三模試合計
三模試合計で前年比4.1%の増加。しかも昨年は三模試とも実施日が違っていたのに、今年は四谷大塚と日能研の実施日が重なっていながらの増加。
男子の3.4%増に対して、女子は4.9%増と昨年の減少をカバーしている。
来春の首都圏入試は5%以上受験生が増加する可能性が高い。
02年 01年 00年
99年
男子 4科 16162 15689 15105 14690
2科 1921 1796 2012 2328
女子 4科 12599 11209 10715 9797
2科 4745 5326 6310 6760
合計 35427 34020 34142 33575
その他
夏休み自由研究サイト
ニフティは19日から、特集サイト「夏休みの自由研究2002」を開設した。9月1日までに合計30テーマの研究題材を紹介する。
初回はマイクロスコープで覗く「拡大した世界」を取り上げた。今後、わが家のADSL、バター作り、ハトの模様を調べるなど、大人と子供が一緒に楽しめる情報を提供していく。
このほか、夏をテーマにした「今日冷やし中華を食べた人」などのアンケート結果をリアルタイムで日本地図上に表示したり、全国の水辺写真の投稿を募集して掲載するなど、夏休みを満喫できる応援コンテンツを用意する。
[夏休みの自由研究2002]
http://portal.nifty.com/summer/index.htm
新聞のコラムより
ステップアップの悩み (毎日新聞 5月6日)
九州のある県で私立高校の家庭科教諭をしている知人の女性が、「福祉科」の免許を取った。来年度から高校で実施される新学習指導要領で設けられた新教科で、免許を持っている人は県内に数人しかいないという。
県教委の課長をしている高校時代の恩師は「福祉の免許があるのなら、県立高校の採用試験を受けろ。今なら絶対に採用される」と勧めたという。県立高校では福祉教諭が不足している。少子化に伴って教員数も減っており、一人二役が可能な複数教科の免許を持っている教員は重宝される。
私立高の教員は異動がないため、ずっと同じ学校に勤務するが、県立高の教員はいろいろな学校で教えられる。私立より教員数も多いため、産休や育児休暇も取りやすいという。
しかし、勤務校からは採用時に「県立高校には行くな」と念を押されている。「県立に移れば『裏切り者』と白い目で見られる」と悩む。
勤務条件のいい職場に移るのは、当然の権利である。待遇の格差を放置したまま、ステップアップしようとする人間の足を引っ張るような学校が、生徒の向上心を育てられるのだろうか。
“鏡”磨くより我が身を
(毎日新聞 7月8日)
先日、地下鉄で小学生らしい男の子に席を譲られた。私はまだ38歳。丁重に断ったが、「そんなに老けて見えるのか」とちょっとショックだった。しかし、笑顔で席を立った男の子の礼儀正しさに、家庭の行き届いたしつけと温かさが見えた気がした。
国立教育政策研究所が公表した「キレる」子供の成育歴調査で、子供を追い込む家の事例を見た。父親が日常的に暴力を振るうなどの極端な例のほかに、両親が世間体を気にしすぎる、子供に干渉しすぎたり、言いなりになるなど、普通の家庭によく見られる例もあった。
思えば、私も中高生時代にはキレていた部類に入る。受験に失敗するなど、思うようにいかぬイライラを家の中で爆発させたこともある。親のどんな態度が子供のカンに障るか身に染みて知っているので、そういうことはしないよう注意しているつもりだったが、調査の指摘は我が家にも一部当てはまる気がした。
子は親の鏡という。鏡に美しい姿を映すには、親が自分を磨くしかない。しかし、我が身より鏡を磨くことばかりを気にしている親が多いのではないか。私自身を含めて。
絶対評価で愚行再び
(毎日新聞 6月3日)
「こんなものをつくった人間の顔が見たい」と思った。国立教育政策研究所が作成した絶対評価のための参考資料のことである。
4月から小中学校の成績の評価方法が、ほかの子供と比較して評価する相対評価から、学習の到達度を見て評価する絶対評価に変わった。通知表から内申書まで全部変わるから学校の混乱は必至。そこで「こうしたらどうか」と具体例を示したのがこの資料だった。
中学校のある教科では、授業ごとに一人一人の子供を「関心・意欲・態度」「思考・判断」「知識・理解」の三つの観点から評価する。各観点はさらに三つに細分されているから、生徒1人当たり9項目。それぞれ「十分満足」「おおむね満足」「努力を要する」の3段階の成績をつける。実際には授業の内容に応じて1人3〜4項目程度に絞るというが、それでも40人のクラスなら1時間授業するごとに120〜160項目の評価が必要になる。
「そんなことできるわけないから、教員はみんな適当にやるさ」と、知人の中学教師。
無理難題を押しつける国。従ったふりをする現場。教育界で長年続いてきた愚行が、また繰り返される。
エリートの教育論
(毎日新聞 2月18日)
「本人が消化できないものをいくら教えてもだめ。個人の遺伝情報に応じた教育をして本人の適性を伸ばしていくのがいい」
教育改革国民会議座長を務めた江崎玲於奈・芝浦工業大学長が、同僚記者に語った教育論である。
この主張の根本にあるのは、人間の能力が遺伝子によって決定されるとする「遺伝子決定論」と、生まれながらに優れた人間を劣った人間から選別すべきだとする「優生主義」である。
ナチス・ドイツをユダヤ人大量虐殺に導いた思想として、優生主義は戦後、タブー視されてきた。江崎氏はそれを承知で、あえて信念を披露したのだろう。「世界と競争できる個人を育てるには、ある程度、遺伝子差別が起きても仕方ない」と割り切った発言もしている。
しかし、人間の知性は環境要因に左右される部分も大きい。遺伝子から知的能力を推定することが可能かどうかさえ、はっきり分かっていない。
子供に順位をつけることを一切拒否する平等主義にもうんざりだが、一握りのトップランナーを育てることしか頭にない知的エリートの教育論はもっと恐ろしい。
勉強が「思い出」?
(毎日新聞 2月4日)
「一番印象に残っているのは、夏休みの学習合宿です。投げ出したくなりましたが、やり遂げられて自信がつきました」
長崎県のある高校の卒業式で、卒業生総代が答辞をこう切り出したのに驚いた覚えがある。高校生活の一番の思い出が勉強? 私にはとても考えられない。
合宿以外にも九州の県立高校では「ゼロ時限」と呼ばれる朝の課外学習が一般的だ。九州出身の同僚に聞くと、20年以上前からあったという。
いわゆる進学校に限らない。1年生からほぼ全員が受講し、部活動を引退した3年生は放課後にも補習を受ける場合が多い。飲み友達の塾講師が「県立高校がそこまでやっていいんかね」とぼやいていた。
学校にも言い分はある。大学受験では都会の高校生と競わなければならないが、東京、大阪と違って、地元には予備校などの受け皿がない。このため「学校でなんとかしてほしいという保護者が多い」という。
4月から公立学校は完全週5日制になる。しかし、私立の進学校に追随する動きはない。これに対抗するため、土曜日にさらに補習を検討している県立高校もある。
「大学に入るためだけの高校」では寂しくないか。
<問題>
次の図で、長方形ABCDと三角形EBCの面積は、ともに64平方cmで、三角形CDGの面積は3平方cmです。
三角形ABFの面積を求めなさい。(02年早稲田実業)
入試問題に挑戦第48回解答編
<問題>
次の図は将棋の駒を表したものです。
これと同じ駒を図のように順に並べて輪をつくります。
駒は何個必要ですか。ただし、将棋の駒は左右対称です。(02年渋谷教育渋谷)
<解答>
一見、面倒くさそうな問題に見えますが、将棋の駒が二等辺三角形の一部であることに気づけば、すぐに答えを導き出せます。
図のように、駒の左右の辺を延長して二等辺三角形をつくると、その頂角は
180−81×2=18(度)
これを並べて輪にするには、
360÷18=20(個)