NO.294

2008年12月15日 
アクセス教育情報センター

目次

学校情報

公開模試情報 教育情報 教育情報 その他
桐朋中学校

大妻多摩

横須賀学院

 

日能研模試12月

11月三模試学校別志望者比較(神奈川地区)

公立高校入試

授業料値上げ

都立日本橋高校

小中一貫

国際数学・理科教育動向調査

挙手禁止通知

大阪府高校入試

学校選択制

名言・迷言・冥言

さもしいのは誰だ

受験生応援商品

ウサギリンゴ

学校情報

桐朋中学校 中学自由研究
優秀作品にアクセスからの進学者4人の作品が選ばれる。
金賞 中2 N君 数学      双子素数の研究
銀賞 中3 O君 芸術・音楽  作曲「スウガク 〜冬の学校での1日〜」
展示 中1 T 君 家庭      オムレツの研究
展示 中1 T 君 芸術・技術  卓球のピッチングマシンについて
中2で金賞に選ばれたN君は2年連続の金賞受賞。
 オムレツの研究

 卓球のピッチングマシン 

http://www.toho.ed.jp/

大妻多摩 学校説明会(08年11月25日)
 11月25日に同校で説明会が実施された。大妻多摩中学校は多摩キャンパスが出来てから今年で20年になる。1994年に中学校を開校し、現在では高校募集なしの完全中高一貫校、また附属校ではなく大学受験に着実な実績をみせる進学校として評価が高い。小規模校(昨年度卒業生数115名、来年度以降は約160名)なので合格者数は目立たないが、国公立+早慶上智+GMARCHが進学者ベースで約80%など、学校をよく知る保護者ほど人気が高い学校である。
 大妻多摩は今年度から入試日程を1日・2日・4日の3回に変更する。(昨年は1日・2日・3日)今回説明会は小5対象ということで、それについての言及はなかったが、この変更はサンデーショックがらみのものではないということである。3日間続けるより1日あけたほうがすべての日程を受けたい受験生にとって受けやすい(3日に押さえ校を受けやすい)という判断のようである。4日が多摩地域の入試実施校が少ないというのも変更の狙いであろうが、実際に実質受験者がどの位集まるかが今後4日の入試日程が定着するかどうかの判断になるだろう。
1) 安川校長
 大妻多摩中学は入試をクリアして達成感を持って入学してくる生徒の多い「よい集団」である。そしてそのよい集団に今の時代にあった教育を与えていくことが重要だと考えている。いろいろ行事もあるが、学校でまず一番大事なのは授業である。
 これから受験に向かっていくにあたって、親ががんばらせたい一心でプレッシャーを与え続けることはやめた方がいい。もし仕事をしているなら続けてほしい。親ががんばって働いている姿をみて子どもは育つ。大妻には学食もあるので、常にお弁当を作らなくても通わせられる。母親も働くのを見て育つ、それは大妻の精神にも一致する。
 女子校では女子が積極的になれる。大学進学でも大妻女子大という保険を使う生徒がほとんどいなくなってきている。チャレンジ精神を持った生徒が多い。
2) 常盤先生(中2学年主任)
 大妻の教育は、「自立し、社会に貢献できる品位ある女性」を目指している。その為に、中1ではまず生活習慣、学習習慣の確立を大事にしている。「学校生活ガイダンス」という冊子を配り、その中にメモをとらせ、メモを取る習慣を身に付けさせる。これは忘れ物を減らす効果もある。また、職業体験を行ない、今学んでいることが将来に結びつくことを実感させている。
3) 教科について
国語 小野先生
 国語は中学3年間、週5時間ずつ。国語Tが3時間、国語Uが2時間となっている。国語Tは読解で、評論文の読解を重視している。要約し、作者の言いたいことをとらえる練習を繰り返す。また漢字は国語学習の基幹になるものなので、漢字学習を徹底している。中学生で漢検2級をとる生徒も多い。
国語Uは言葉や文法で、まず現代文、そして中2の後半からは古文・漢文の時間に充てている。高校分野の古典にまで踏み込む。
 読書が国語力の向上につながるのか?という質問をよく受ける。確かに重要だが、漫然と読んでいても仕方がない。自分の読みたいものだけでなく、先生や友達の推薦する本なども読むことが重要である。
数学 竹田先生
 中学校の間は数学を嫌いにさせないということに気を配っている。算数が苦手でも数学が得意になる生徒はたくさんいる。そのためには基本をしっかり身に付けさせることが重要と考えている。
 時間数は数学Tが3時間、数学Uが2時間。数学Tでは代数、数学Uでは幾何を扱う。中3では習熟度別クラスを週1回設定し、6クラス編成で授業を行なう。習熟度別クラスは学期ごとに入れ替えを行なう。
英語 天田先生
 英語は基礎学力の構築が重要と考えている。文法、単語の徹底を計るために補足プリント「Super Input」をレッスン前に実施する。また、各学期7・8回ボキャブラリーコンテストを行なう。事前に覚える単語を決め、2分間でテストする。時間が短いのできっちり覚えないと考えている時間はない。そして優秀者を表彰する。
 教科書の「New Crown」は量が少ないので過去のレッスン問題や読解問題のプリント・多少の先取りなどを行なっている。
 補習は長期休暇に下位補習を中1から行なうとともに、中3からは上位補習も行い、レベルに合わせた指導を心掛けている。もちろん下位補習にならないように日ごろからノート提出や小テスト、音読チェックなどを行っている。
4) 入試資料より
説明会自体は5年生対象のため入試の細かい話はなかったので資料より補足。
2009年度入試要項
    試験日      募集人員
1回 2月1日(1日)  60名(50名)
2回 2月2日(2日)  50名(50名)
3回 2月4日(3日)  30名(40名)      ( )内は昨年入試
※ 募集人員総数は140名だが、昨年度163名手続き。ここ数年165名前後の入学者数であり、今年度も同様。2月1日は100名程度の合格発表数になる模様。
昨年度入試より算数・国語の配点が100点、試験時間が50分(一昨年は60分)、理科・社会の配点が60点(同50点)、試験時間が40分(同30分)と若干理社の比重が高まった。試験時間の短縮とともに算数は問題が易化し、合格者平均は各回とも75点以上と高い。しかしながら受験者平均は60点強と差がついており、今年も同じ出題方針とのこと。また、足切り点は設定しない。
5) 感想
 大妻多摩中学は小田急多摩線の終点唐木田にあり、小規模な高校募集なしの完全中高一貫校ということで、「落ち着いた」雰囲気を持っている学校である。歴史が浅い学校のため、一時期学校説明会で進学、学習面ばかり強調したために一部の父兄からがり勉学校のイメージをもたれてしまっているようだが、女子にはめずらしいサッカー部があるなど、クラブ活動も盛んである。多摩地区や小田急沿線に住む女子進学校希望者、また将来社会に出て活躍したい女子にはお奨めの学校である。
 今年からの4日入試は昨年までの3日入試と比べて難しくなるのか易しくなるのか、読みづらい。1日空くことにより実受験者の数がどう変化するのか、また募集定員は減ったものの、合格者数が昨年の3日入試(53名)に比べてどの程度変化するのか、変動要素が多い。4日は受験校の空白日なので、見た目の倍率は高くなると思われるが、歩留まりによっては意外と入りやすい可能性もあるので、あきらめずに受験したい。
(報告 F.Hj) 
http://www.otsuma-tama.ed.jp/

横須賀学院 青山学院大学との連携について
(学校配布資料より 11月17日)
横須賀学院は、終戦直後の1950年に、青山学院横須賀分校(専門部機械科と土木建築科、第二高等部)を継承して設立されました。また、設立時理事の安井正男氏(第二高等部部長)・ローランドハーカー氏(青山学院宣教師)、第2代院長小坂ー城氏(第10代青山学院院長)、第4代院長斎藤忍氏(青山学院神学部卒業)など大勢の青山学院関係者が、創立以来の横須賀学院の教育を担ってきました。
この関係から、國岡昭夫氏(前青山学院大学学長)の第4代法人理事長就任を直接の契機として、近年、青山学院大学と連携授業を行うなど具体的な交流を深めてまいりました。さらにこの間、小学校・中学校校長・院長と青山学院理事との間で、様々な協議が重ねられ、次のような一定の方向性を双方で確認するに至りました。横須賀学院の教育に一層のご理解とご支援を賜りたく、皆様方へ、現在の交渉の進捗状況をお知らせいたします。
直、この横須賀学院と青山学院との連携・提携は、オア互いの学校法人としての独立性を保ちながらの事業であることを申し添えます。
さて、横須賀・三浦半島の地にキリスト教に基づく教育を行う指名を受け継いで新たにスタートした横須賀学院は、創立当初より、小学校から高校まで最長で12年間のキリスト教教育を実践する学校として、日々礼拝を守ってきました。青山学院もまた、幼少年期から高等教育までキリスト教に基づく教育を行う学校です。その意味で、横須賀学院と青山学院は、歴史的にもそして今後も、同じ方向に教育理念を掲げている学校と言えます。
しかしながら近年、青山学院大学においては、小学校や中学校からキリスト教教育を受けて入学する学生が減少しており、建学の理念・本来の「青学らしさ」の希薄さを憂慮されているとのことです。
そこで横須賀学院は、中等教育(中学・高校)と高等教育(大学)におけるキリスト教教育の連続性を強化するために、青山学院大学との提携を積極的に推進することといたしました。これは、先に述べた横須賀学院と青山学院との創設以来の協力関係によるものです。
具体的には次のような提携を行いたいと思います。
1.2010年に横須賀学院を卒業する一貫コース生(6年ないし12年間のキリスト教教育を受けた者)は、高校3年間の評定値が一定以上であれば学部学科を限らず青山学院大学に優先的に進学することができる。
2.また、在学中にキリスト教の活動を誠実に続けたと認められる生徒については、優遇された評定値を適用する。
3.但し、小学校・中学校からの入学生の少ない過渡期(数年間)においては、高校からの入学生に対しても同じ措置を適用する。
現在、青山学院では「21世紀の青山学院が目指すもの〜伝統の中での新生、青山学院の新たな出発〜」に向け、アカデミック・グランドデザインを策定して、その具体化に向けて全学的に取り組んでいます。横須賀学院との連携については、青山学院内部の協議が行われており、横須賀学院に対する進学枠を確保する方向で検討が進められています。まら、2011年以降においても、人数枠を増やしていく方向で青山学院との交渉を進めています。
今年度から始まった高大連携授業については、現在進学枠のある学部を中心に次年度以降も継続して行います。そして、最も重要な宗教教育やキリスト教行事における相互の交流、小学校・中学校の教員研修なども並行して追及したいと思います。
*具体的には
8学部×5人の40名の枠を設定。評定平均で4.0。
在学中に聖歌隊やボランティア活動などのキリスト教活動を続けた生徒は評定平均3.7。
高校からの入学者は選抜暮らすの生徒と一般クラスの生徒で基準となる評定平均が変わる。
現高2の選抜クラス在籍48名中11名が評定平均4以上。うち4人は他の難関大学志望、2〜3人は青山大学にない別の学部志望。4〜5名が対象になる。
2010年の中学入学者からは140名に枠を広げたいもよう。 
http://www.yokosukagakuin.ac.jp/y-gakuin3C.html


公開模試情報

日能研模試12月 合格判定テスト(11月30日)
前年比5.3%の減少。男子は6.8%の減少、女子は3.7%の減少。
         04年    05年     06年    07年   08年
男子 4科  8126    7924    7925   7547   7038
    2科   743     856     936    862    798
女子 4科  6757    6977    7487   7163   6866
    2科  1373    1051     796    584    594
合計     16999   16811   17144  16156  15296
=11月の日能研模試は前年比2.5%増だったが、12月は5.3%の減少。昨年まではと違い、今年は首都圏模試と日程をずらしたにもかかわらずの減少。=

11月三模試学校別志望者前年比(神奈川地区)

   男子     女子


教育情報

公立高校入試 進む競争
(朝日新聞 11月10日)
「平等」から「競争」へ
*現場では…独自の問題で高い学力見極め 
 「合否のカギは選択肢問題で取りこぼしをなくし、記述力をアップすることです」1日、東京都杉並区の都立西高校。視聴覚ホールに中3生や保護者約300人が集まり、教員の話に聴き入った。ここ数年、一部の都立高で開催されるようになった「自校問題解説会」だ。公立高の入試といえば、どこを受けるにしても、全県共通の問題を解くというのが決まったスタイルだった。東京都教育委員会がこれをやめたのは01年入試だった。各校の独自出題を認め、まず日比谷高が国語、数学、英語の3教科で導入。国立、戸山、八王子東など12の進学校が後を追った。 
 「『勉強が忙しい日本の中学生は学校生活を楽しんでいるのか』という米国の中学生の問いかけに、自分の考えを30〜40語の英文で書きなさい」「『敵の計略をカンパ』のカンパを漢字で」。独自入試の出題例だ。都教委が用意する一般問題の長文英語の単語数は1千語前後だが、独自入試では1・5〜2倍程度に増える。中学の学習内容を踏み出してはいないが、かなりの理解力、応用力が問われる。「独自入試対策」を掲げる学習塾も増えている。 
 独自入試の高校の目的は「高い学力をもつ生徒の選抜」だ。一般の共通問題だと、多くの受験生が高得点で固まる。ケアレスミスが合否の分かれ目になりがちで、高いレベルの学力差がわかりにくい――という考えがある。独自入試の都立高を目指す日野市の中3女子は「論理的にきちんと理解しないと解けないよ、と塾で言われた」。母親(47)は「都立も二極化していると聞く。力を見極めるには仕方ないのでしょう」と話した。動きは広がる。神奈川県では「学力向上進学重点校」に指定される横浜翠嵐、湘南など10校が独自入試を実施。群馬、広島、沖縄も共通試験に独自問題の追加を認めた。長崎は難易度の異なる2種類の共通問題を用意し、各校に選ばせている。 
*背景には…「振り分け制」が私立流出招く 
 都立高の制度改変の背景には、「平等」を強調した教育への後悔がある。都教委の内部には、かつての入試制度によって私学に人気を奪われた、という思いが強い。都立の普通科高校の入試には、67〜81年、「学校群」という制度があった。数ある学校の中から一つを選んで出願するのではなく、同じ学区の学校を2〜4校単位のグループにして、全体の合格枠に入った生徒の試験の成績などに応じて均等に振り分けるやり方だ。 
 「入試を目的とする教育は行わない」。都の教育長がこんな通達を出すほど、進学指導がタブー視された時代だった。「15の春は泣かせない」という言葉のもと、高校に行けない生徒をできるだけ生まないよう、各地で次々と学校が新設された。そして、東京のように複数の学校を一緒にして募集する「総合選抜」と呼ばれる制度が広がる。一部ででも制度を導入した都府県は、80年前後には14程度に上ったとされる。各校間の「序列感」は大幅に薄まった。しかし一方で、高い学力レベルの集団が競い合い、学力を伸ばし合う機会も減った。都市部では、経済的なゆとりがある家庭の受験生が、どんどん私立へ流れていった。教育情報会社の大学通信によると、58年時点では、東大合格者数の上位20位に公立高が15校入っていた。そのうち、都立は9校。 それが、今春には岡崎(愛知)、県浦和(埼玉)、宇都宮(栃木)の3校にまで減っている。都立は一つも入っていない。 
*問題点は…学校の序列化加速する恐れ 
 時を経ていま、総合選抜制が残るのは兵庫県と京都府の一部の学区だけになった。兵庫では来春の入試を限りに全廃されることが決まっている。
 99年に総合選抜をやめた岡山県では、大きな変化があった。旧制中学から続いている県立岡山朝日高(岡山市)は97年に東大と京大の合格者数が合わせて4人だったのが、単独選抜になって増え、今年は36人になった。総合選抜でちらばっていた中学校の成績上位層が集中しているとみられる。同高は県内で唯一、独自の入試問題も導入している。地元の学習塾は「長文の読解問題などの受験勉強を徹底的にやった、かなり学力をつけた子どもが入学している」と指摘する。 
 比較的安い学費で高い進学状況を提供する――。こんな公立高校の「復権」は、受験生と保護者に選択肢を増やしているように見える。都立日比谷高も60年代に200人近くいた東大合格者が減り続け、93年には1人になったが、制度改変の後に再び増加に転じ、07年には28人にまで増えた。 
 しかし、そこに危うさを見る向きもある。学力に長じた生徒が特定の高校に偏れば、その他の学校の進学実績は伸び悩む。少子化によってかねて高校の統廃合は進んでおり、高校入試制度の研究を長年続けている聖学院大学の小川洋教授(教育学)は「学校間の序列があらわになれば、『生徒が集められない学校』はいっそう苦しい状況に追い込まれかねない」と危ぶむ。「格差」の問題も頭をもたげる。「限られた一部の学校を目指す受験競争が激しくなれば、子どもの教育にどれだけお金がかけられるか、保護者の社会的・経済的な格差が進学先に響いてくる」「そうした『勝者』だけに、恵まれた環境を与えてしまうことになる」 「平等」と「競争」の間を揺れ動く公教育は、まだ確たる答えを示せないでいる。

授業料値上げ 大阪の私立中高の半数超、府助成金削減で
(朝日新聞 11月27日)
 大阪府内の私立中学・高校154校のうち、半数を超す84校が来年度の新入生の授業料を値上げする。大阪私立中学校高等学校連合会が27日発表した。10〜30校の例年に比べ大幅に多い。大半が府による私学助成金の削減を理由に挙げているという。
 高校は、94校中50校が授業料を平均4万9900円値上げする。入学金と授業料を合わせた新入生納付金の平均額は77万800円(対前年度比2万6500円増)になる。授業料の値上げ幅が最も大きいのは来春から早稲田大の系属校となる早稲田摂陵(現・摂陵。大阪府茨木市)の16万円。中学は、60校中34校が授業料を平均5万8500円値上げする。新入生納付金の平均額は79万6600円(対前年度比2万9700円増)。中学、高校ともに値上げ幅は過去最大となる。 
 大阪府の橋下徹知事は財政再建策の一環として、8月以降、私立学校の運営費への助成金を小学校と中学校で前年度比25%、高校で同10%、幼稚園で同2.5%削減。これにより歳出を約29億円抑えた。来年度も通年で約45億円の削減を予定している。同連合会が値上げする学校に理由を尋ねたところ、高校で9割、中学で全校が府の助成金削減を挙げたという。

都立日本橋高校 入試で点数改ざん
(朝日新聞 12月1日)
 東京都立日本橋高校(中央区)の06年度の入試で、問題が起きそうだと考えた2人の生徒の点数を引き下げて不合格にする不正が発覚した。先に神奈川の県立高で「茶髪、眉そり」といった「裏基準」で落とした問題が明らかになったばかりだが、日本橋高では、当時の校長の指示のもと、副校長が点数の改ざん行為にまで及んでいたという。いったい何があったのか。困難な教育状況に、学校はどう向き合えばいいのか。 
 「入試の根幹にかかわることで、断じてあってはならない」「すべての受験者、保護者、都民に心からおわびします」 28日午前、東京都庁であった記者会見。大原正行・都教育長は、深く頭を下げた。不合格にされた2人は中学既卒で、05年に一度、日本橋高に入学していた。当時、1人は校内で暴力をはたらき、もう1人は校外で問題を起こして補導されたことがあったという。同年12月、2人とも「一身上の都合」で自主退学し、改めて06年度入試に出願していた。同校は全日制普通科で、生徒数は約420人、教職員は約50人という規模だ。教育関係者によると、生徒指導上、難しい問題も一部にあったといい、06年度には39人が中退している。
 都教委によると、同校の06年度入試は「学力検査600点、調査書400点、自己PRカード100点」の計1100点満点で判断する仕組みだった。男子は62人が受験した。2人の入試の成績は、34位と59位。「2人が合格者とならないように」。合否判定会議を前に、苗村深校長は、武田富雄副校長にこう指示したという。 
 副校長が行った改ざんはこうだ。2人が自己PRカードで得た60点を「0点」に。さらに、同年に受験した中学既卒生8人の全員分の調査書の点数を「オール1」相当に。その上で、合否の境目にいた別の受験生の自己PRの点数を20点加算――。 パソコンでこんな操作を繰り返し、2人の成績を「61位」と「62位」に引き下げたという。同校は男子の募集人員を66人としていたが、結局、合格者は60人に絞り、受験者の中では2人だけを不合格とした。「入学させると生活指導上の課題が再発すると懸念した」。校長は、都教委の事情聴取にこう話したという。 
 2人は現在、18歳と20歳。都教委は27日に2人の保護者に謝罪しており、今でも入学したい気持ちがあるかどうかを確認した上で、どんな対応ができるか検討したいとしている。 
 発覚の発端は、今月7日、都教委にあった告発だった。校長と副校長は別の高校でそれぞれ校長、副校長として勤務していたが、都教委は更迭。今年度いっぱいはセンターで研修を受けさせるとともに、正式な処分も検討する。改ざんの刑事責任についても「専門家に相談して詰めている」という。調査の結果、都教委は「2人分以外の不正は見当たらず、他の教職員の関与もなかった」と説明している。石原慎太郎知事は28日の定例記者会見で「フェアでなく、あるまじきこと」「モンスターペアレントなどが跋扈(ばっこ)し、先生が子どもを鍛え直すことは非常に難しくなったのだろうが、教師を選んだならその使命感だけは忘れてほしくない」と述べた。 日本橋高によると、同校の中退者は06年度以降減っており、07年度は15人、今年度は28日時点で6人だという。 
「排除ありき」に懸念 
 「こんな生徒がまた入ってきたら大変だ、という現場の気持ちは分かる。しかし、データの改ざんは考えられない」 97年から03年まで都立高校の校長を務めた鈴木高弘さん(現・専修大学付属高校長)はそう話す。鈴木さんが着任した都立高も、当初は生徒の半数近くが退学する「指導困難校」で、問題を起こしていったん退学したのにまた受験する生徒もいたという。ガラスが割られ、ごみは散乱、廊下には至るところに土足の跡。登校してもさぼったり、妨害したりする生徒が多くて授業が成立しない。そんな状況から、学校再建に取り組んだ。まずは毎朝、自らジャージーに着替え、ほうきやガムをはがすへらを手にして、校内を掃除して回ることから始めた。すさんだ雰囲気をなくすと共に、生徒と言葉を交わすきっかけにした。授業はいかに退屈せず、興味をひくかに知恵を絞った。生徒が学校から抜け出さないよう、学ぶ楽しさを感じられることを最優先にした。近くのゴルフ場を借りて、体育にゴルフも採り入れた。3年目からは新しいカリキュラムを開始。普通科高校だが、卒業後に役立つであろう福祉や情報などコース別に学べるようにした。定員割れが当たり前だった入試倍率は2倍を超え、中退者も次第に減っていった。学校を改革し、生徒が立ち直っていく。評判が良くなれば、意欲ある生徒がたくさん受験してくれる。「日本橋高校にもその兆しはあったのでは」と鈴木さんはみる。不正に落とされた生徒はいずれも男子だが、問題があった06年度の入試で、女子の倍率は1.68倍と比較的高かった。「福祉教育などに力を入れた学校の特色づくりが評価されたのではないだろうか」 
 悪戦苦闘する現場が分かるだけに、鈴木さんは今回の問題を残念がる。神奈川県立神田高校(平塚市)でも外見による合否判定が明るみに出たが、問題がある生徒は切り捨てるという「排除の論理」が先行しているのが気にかかるという。「ルールとしての合格条件を満たしたら、受け入れて教育すべきだ。頭髪や服装は入学後の生活指導の問題だろう」 「1人も中退者を出さないという決意と、そのための魅力ある学校づくりへの努力。学校が本当の居場所となれば、3年間で生徒は大きく変わる。それが教育の使命でしょう」
=これは校長、副校長の個人的な責任とすれば済むことなのか。都立高校や県立高校全体が問題のある生徒をかかえたときに、教育委員会や教育庁から厳しい査定をされ昇進に響くような対応をされているのではないか。管理と強制が進む公立学校の中で、表面上だけでも無難に学校運営をしなければという意識が働いた結果ではないのだろうか。=

小中一貫 連携手探り
中1ギャップ
現状は―公立1542校、独自に実践 
 壇上に、私服とブレザーの制服が入り交じる。私服は5年生や6年生。ブレザーは「7年生」や「8年生」だ。みんな、同じ吹奏楽部員。アニメソングを披露すると、満場の体育館が拍手でわいた。今春開校した東京都品川区立の小・中学校、八潮学園。今月初めの文化祭の風景だ。義務教育の期間を一体ととらえる「小中一貫校」。品川区では06年度にスタートし、中1〜中3は「7〜9年生」と呼ばれる。9年間を「6・3」でなく「4・3・2」に分け、学ぶ内容にも融通を利かせるのが特徴だ。教科担任制も小5から始める。「上達したって先輩に言われたよ」。同区の主婦(46)は最近、運動部に入っている小6の娘からこんな話をよく聞く。「先輩を手本に目標を持って生活するようになった」と感じるという。 
 こうした公立の「小中一貫教育」は、00年の広島県呉市が始まりとされる。教育課程の特例で実施している学校は小中合わせて全国で1542校。近隣の学校で組むケースが多いが、学校の建物自体を一体化させるところも出始めている。学年の区切り方も「5・4」(香川県直島町など)、「3・4・2」(宮城県登米市)とさまざまだ。津軽海峡に面した青森県東通(ひがし・どおり)村では、3年前に16校あった小学校を来春には1校にした上で、一足早く1校になった中学との一貫校にする。小中一貫校は、法的にはあくまで別の小、中学校で、入学式や卒業式は通常の「6・3」に合わせて行われる。 
背景は―成長の境目、「6・3制」とずれ 
 中学に進んだとたん、勉強の内容や生活の変化になじめず、学校に適応できなくなる「中1ギャップ」。小中一貫教育はその対応策という意味合いが強い。端的なのは不登校やいじめだ。07年度の国の調査では、不登校は小6で約8千人だが、中1では3倍強の約2万5千人に跳ね上がる。いじめも小6の約1万件から中1で約2万1千件になる。 
 日本教育相談研究所長の木下貴博さんは、小中の「段差」の大きさを指摘する。まず、勉強のスピードと量だ。教科担任がそれぞれ宿題を出し、定期テストの前には遅れを取り戻そうと授業を急ぐ。さらに、部活動やふだんの学校生活では、小学校で経験しなかった先輩、後輩の厳しい上下関係がある。 
 子どもの体や心の成長も早まっている。広島県呉市立の小中一貫校・呉中央学園が全国統計をもとに調べたところ、身長が最も伸びるのは1950年は男子15歳、女子12歳だったが、04年には男子12〜13歳、女子10〜11歳と早まっていた。「周りから認められていると思う?」という校内のアンケートでも、「思う」子が小4まで8割以上いるのが小5で6割ほどに減る。思春期特有の心の変化がうかがえる。安彦忠彦・早大教授(カリキュラム学)は「発達の大きな境目が来ても、いまの学校では思春期として扱われていない」と指摘する。 
 小中の「6・3制」は戦後、内閣に設けられた教育刷新委員会が提言し、47年に始まった。当時の米国の制度の影響を受けたとされるが、その米国ではいま、高校を合わせて「5・3・4」が主流になっている。品川区の若月秀夫教育長は言う。「6・3制という靴はもう子どもの足に合わなくなった」 ただ、区切りを変えても、新たな境目でまたつまずく可能性もある。小中一貫は学校が始めた模索の第一歩だ。 
課題は―教員同士、理念共有できるか 
 宮崎県日向市の市立大王谷(だい・おう・だに)小中学校。今春の一貫校化を前に、行き来しやすいよう隣り合わせの小中を150メートルの渡り廊下でつないだ。名付けて「学びのかけ橋」。かかる時間は5分ほどで、休み時間の移動が可能になった。この「150メートル」が一貫教育を可能にする目安ととらえ、国立教育政策研究所の青木栄一研究員が調べたデータがある。中学の数が6校までの小規模自治体から抽出すると、近隣の小中が150メートル以内に収まったケースは約1割にとどまった。中1ギャップの処方箋(せん)も、どこでもできるわけではないことがわかる。 
 実際の教育現場にも課題はある。中学教員の経験が長い呉中央学園の二宮肇美教諭は最初のころ、小5の授業で板書をしたら教室がワーッとどよめいた。「先生、速い」。小学生には特に手順を追った説明が必要なのに、いつの間にか教員主導になっていた。意識の問題も大きい。初めは教員間で連携の必要性が理解されず、小中で壁をつくるような言動があった。小学校の教員は「中学は何しよるん」と不満をぶつけた。中学は中学で「連携に労力をとられて部活に割く時間が減る」と協力したがらない教員もいたという。しかし、経験を積んで運営は定着し、目に見える成果が出てきた。例えば、理解の進み具合をはかる県の学力調査で、いまの中3生は、小5の時に国語の正答率が70・5%だったのが中2では80・7%にアップした。中2の数学では県平均を7ポイント上回った。中学の不登校は02年度の20人から07年度は5人に、暴力行為などの問題行動は74件から16件に減ったという。 
 小中一貫の取り組みは緒についたばかりで、まとまった報告はまだ見当たらない。中1と同じ学年集団に入った小5や小6が本来より子どもっぽくなるという指摘もあり、二宮さんも万能とは思っていない。「子どもと日々対話し、教員が学び合っていくことが欠かせません」 千葉大の天笠茂教授(学校経営学)は「地域でカリキュラムや指導方法を見直し、工夫を重ねることが大切だ。国が号令をかけるのと違う新しい教育改革のスタイルになりうる」と話す。 
 どんな教育をどこまで進めるか。「わが町」の実験が続く。

国際数学・理科教育動向調査 日本、理数学力下げ止まり
(毎日新聞 12月10日)
 国際教育到達度評価学会(IEA)は、07年に実施した国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)の結果を公表した。日本は、中2理科の平均点が554点(3位)で前回03年調査の552点(6位)を上回るなど、実施4科目の平均点はすべて前回以上(中2数学は同点)だった。小4では「勉強が楽しい」と答えた児童の割合が増え、学習意欲も改善傾向を示した。文部科学省は小中学生の理数の学力低下に歯止めがかかったとみている。
 調査には、37カ国・地域の第4学年(日本は小4)約16万人と、50カ国・地域の第8学年(中2)約22万人が参加。日本からは計8799人が参加した。点数は経年比較を可能にするため、全参加者の平均が500点になるように調整した。日本の小4の平均点は、算数が前回より3点高い568点、理科が5点高い548点。いずれもデータ比較可能な36カ国・地域中4位(前回はともに25カ国・地域中3位)だった。中2の数学は前回と同じ570点で、48カ国・地域中5位(前回は46カ国・地域中5位)だった。
 「勉強が楽しい」と答えた小4の割合は、理科が87%(前回比6ポイント増)で国際平均の83%を上回った。算数も国際平均には10ポイント及ばないものの、70%で前回より5ポイント増えた。一方、中2は、「数学が楽しい」が1ポイント増の40%、「理科が楽しい」が前回と同じ59%で、国際平均をそれぞれ27、19ポイント下回った。
関連記事
ゆとり評価で二分(毎日新聞 12月10日)
 07年に実施された国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)で、日本の小中学生の平均点は前回以上となり、意欲も上向きつつあるとの結果が出た。テストを受けたのは、学力低下の元凶とされた「ゆとり教育」で学んだ子どもたち。授業時間も学習内容も増やす新学習指導要領への移行が来年度から始まるが、「ゆとりでも学力低下に歯止め」との結果が出たのはなぜなのか。
 元文相の有馬朗人・日本科学技術振興財団会長は「『脱詰め込み』のもと、着実に学力がはぐくまれていることがわかった」と強調する。前回03年の結果などから学力低下が指摘され、「脱ゆとり」の指導要領への改定につながったが、有馬さんは「日本の学力はずっとトップレベルで、下がったとの認識自体が間違いだ」。これまでの順位低下は、参加国の増加が原因と見る。6位から3位に上がった中2理科については「総合学習導入で授業が減ったが、相当の底力がある。教員の努力や国による理科支援員の派遣も、下支えになった」と評価する。ただ、勉強への意欲は特に中学生で低い。「知識を教えすぎるので、面白さより苦痛が先にたつのかもしれない。成績上位の台湾や韓国でも同じ傾向がある」と分析した。
 一方、「分数ができない大学生」の共著がある西村和雄・京大経済研究所教授は「1、2位グループの点数とは大きな開きがあり、世界トップクラスとはいえない。成績低下は30年近く続いたゆとり教育が原因だ」と厳しい見方をする。勉強の意欲が高まらないのは、学力評価におけるペーパーテストの比重を低めたことが原因とみる。「89年改定の指導要領は、学習への態度や関心を評価に加える『新学力観』を導入したが、これをやめるべきだ」。そのうえで「トップに返り咲くには、総合学習をやめ、大学入試の科目も見直して総合的な改革をしない限り難しい。ただ今後は授業時間も増えるので、これ以上下がることはないだろう」と結論づけた。
ことば・・・国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)
 主に授業で習得した知識の定着状況を見る調査で、95年以降は4年に1回実施。日本は81年調査で中2数学が1位になるなどしたが03年調査は3〜6位で、学力低下を巡る議論を呼んだ。経済協力開発機構(OECD)の学習到達度調査(PISA)は、15歳を対象に3年に1回実施、知識の活用や読解力に主眼を置くことから出題傾向が異なる。
◇国際数学・理科教育動向調査の順位と平均点
   <小4算数>         <小4理科>
 1 香港      607( 2) シンガポール 587( 1)
 2 シンガポール 599( 1) 台湾      557( 2)
 3 台湾      576( 4) 香港      554( 4)
 4 日本      568( 3) 日本      548( 3)
 5 カザフスタン 549(−−) ロシア     546( 9)
 6 ロシア     544( 9) ラトビア    542( 7)
 7 イングランド 541(10) イングランド  542( 5)
 8 ラトビア    537( 7) 米国      539( 6)
 9 オランダ   535( 6) ハンガリー   536( 8)
10 リトアニア  530( 8) イタリア     535(14)
   <中2数学>         <中2理科>
 1 台湾      598( 4) シンガポール 567( 1)
 2 韓国      597( 2) 台湾      561( 2)
 3 シンガポール 593( 1) 日本      554( 6)
 4 香港      572( 3) 韓国      553( 3)
 5 日本      570( 5) イングランド  542(−−)
 6 ハンガリー  517( 9) ハンガリー   539( 7)
 7 イングランド 513(−−) チェコ     539(−−)
 8 ロシア     512(12) スロベニア  538(12)
 9 米国      508(15) 香港      530( 4)
10 リトアニア   506(16) ロシア     530(17)
 (カッコ内は03年順位、−は不参加またはデータ不備)
勉強楽しい日本最下位(産経新聞 12月10日)
 小中学生の理数系の成績は国際調査で5位以内と優秀だが、「勉強は楽しい」は最下位レベル−。10日付で発表された「国際数学・理科教育動向調査」(TIMSS2007)で、こんなアンバランスな結果が出た。03年の前回より改善傾向はみられたが、特に中2でギャップが顕著。識者らは「授業方法に問題がある」と指摘し、子供の体験や発見を重視した指導が必要としている。
 算数・数学で「勉強が楽しいか」という問いに「強くそう思う」と回答したのは小4で34%で、36カ国・地域中32位。中2ではわずか9%で、48カ国・地域中46位と低迷した。「そう思う」を合わせた肯定的な回答は小4で7割に達するが、中2では4割にまで落ち込む。「数学を勉強すると日常生活に役立つ」に「そう思う」とした中2は71%(国際平均90%)で47位。それでも03年よりは8ポイント向上していた。算数・数学教育に詳しい筑波大の坪田耕三教授は、好成績とのギャップについて、「日本の子供たちは公式の丸暗記より『なぜ』を大切にした面白い勉強があることに気付いているのに、授業が対応できていないことが『楽しくない』理由では」と推測。「ただ解説するだけでなく、子供とやりとりし、発見を生かす授業が必要だ」と話す。
 理科では、「勉強が楽しいか」の問いに小4の57%が「強くそう思う」と答え、国際平均の59%と同水準。ところが、中2では18%に落ち込み、国際平均の46%と大きな差が出た。総合学習でビオトープ作りなど理科教育に力を入れる東京都新宿区立戸塚第二小の川越秋広校長は「楽しさ」の低下について「自然事象に触れるといった体験不足が原因」と指摘。「中学校では“黒板理科”になりがちで、外の世界とのつながりが切れてしまう。新しい学習指導要領で内容が増えるのはいいが、小中連携で理科イベントを行うなど、子供たちに理科の楽しさを伝える工夫が必要だ」と話している。
 TIMSSでは、学校外での時間の過ごし方も調査。日本の中2はテレビ視聴時間が1日2・5時間で、参加国・地域中で最も長く、小4も2・0時間で、シンガポールに次ぐ2位だった。対照的に「家の仕事をする」は小4が0・8時間で最も短く、中2も0・6時間でアルジェリアに次いで2番目に短かった。

挙手禁止通知 都教委は反社会的組織
(毎日新聞 12月10日)
 「東京都教育委員会は反社会的組織じゃないか」。教育評論家の尾木直樹さんが9日、都庁で開いた記者会見で、都教委の姿勢を酷評した。職員会議での挙手・採決を禁じた通知を巡り、都教委が都立三鷹高校長の土肥信雄さんや尾木さんらが呼びかけた公開討論に応じないまま「通知に問題なし」と結論づけたことを受けた発言。尾木さんらは改めて公開討論を求める要請書を提出した。会見で尾木さんは、都教委について「上意下達のヒエラルキー(支配制度)が確立した反社会的組織になってしまっている」と批判。都教委が都立校の校長、副校長の考えを聞いただけで「通知は言論の自由を奪っていない」と結論付けたことも「自己満足にすぎない」と切り捨てた。

大阪府高校入試 公私入学比率7:3「変えたい」
(朝日新聞 12月10日)
 大阪府の橋下徹知事が、府内の公立高校と私立高校との間で30年近く「7対3」の割合と取り決められてきた入学募集の定員枠について、公立の定員を増やせないか府教委に検討を求めたことがわかった。これに対し私学側は「経営がもたない」として国会議員にも陳情し、反対する構えをみせている。橋下知事は9日、朝日新聞の取材に「(定員枠は)カルテルみたいなもの。これでは何も改革できない」と述べた。 
 財政再建のため府は今年8月から、私学への助成金をカット、高校は一律10%減とした。このため、私立高校の過半数が来年度の新入生の授業料の値上げを決定。これを受け、知事は来年度予算案をめぐる11月末の府教委との協議で、公立への志望者をより多く受け入れられる態勢づくりについて、「早急に検討していただきたい」と発言。翌日、定員枠の見直し案をつくるよう求めた。 
 府内の私学でつくる大阪私立中学校高等学校連合会(中高連)はこうした動きを知り、今月初め、東京で大阪選出の国会議員約20人に7対3の定員枠を維持するよう陳情。近く議員を交えて知事と協議する場をもちたい考えだ。 高校での定員枠の設定は75年、第2次ベビーブームによる生徒急増を見越した当時の文部省が、公立と私立が協力して生徒を受け入れるよう両者の協議会設置を求めたことから始まった。大阪府では80年代の入試から府教委と中高連が協議し、公立と私立の入学者比率をほぼ7対3の割合となるよう定めてきた。府私学課によると、大都市圏では東京都59.6対40.4、神奈川県6対4、愛知県66対33、福岡県6対4(いずれも07年度)などと定員枠を定めている。ただ、入学定員増には教師の増員や教室の確保など、大がかりな制度改革と多くの予算が必要で、府教委幹部は「そう簡単ではない」という。一方、中高連幹部は「(定員枠を撤廃すれば)つぶれる私学は少なくないだろう」と話している。
=公私間の定員枠を協議する会を、生徒収容対策委員会と呼ぶそうだが、学校は生徒の収容所なんでしょうか。ただ、生徒の急増期に私立に生徒の受け入れを助けてもらいながら、生徒が少なくなって公立でじゅうぶん受け入れられるから私立はいらないというやり方は、最近の大手企業の従業員解雇と同じ無責任さを感じる。公私の受け入れ枠を撤廃するとともに、公立も私立も同じ土俵の上で選べるように私立に進学する生徒の学費補助を充実するべき。その上で生徒と保護者が学校を選べばよい。=

学校選択制 曲がり角
(朝日新聞 12月12日)
学校選択制が導入されて…ある市は―生徒数の格差深刻に…廃止へ 
 7対167。前橋市立第二中学校の女子バスケットボール部は、秋の新人戦でこんなスコアで負けてしまった。部員は5人。ギリギリの人数しかいない。これではどうにもならないと、7人しかいないバレーボール部と合同練習を始めた。苦肉の策で、バスケット、バレーの双方の部員が一体になり、どちらの試合にも出られるようにした。そもそも、学校の生徒数が減っている。同中の今年の新入生は1クラス分の34人。学区内には55人の子どもがいて、本来なら2クラスできるはずだったが、よその中学に進む生徒が多く出た。 
 こんなことになった理由は「学校選択制」にある。公立校でも、地元の校区から離れ、行きたい学校を志望できる制度だ。学校によっては、受け入れきれずに抽選になるところもある。規制緩和や公立不信が広がるなか、子どもや保護者に「選ぶ権利」を与える。「選ばれる」立場になった学校側は、より良い運営に努力するようになるだろう――。そんな考えのもとで広がった。06年の調査では、小学校で14・2%、中学校で13・9%の自治体が導入している。しかし、人気、不人気が露骨に表れる、残酷な制度でもある。 
 前橋市では制度導入から5年がたち、学校間の格差が大きくなった。中学では、学校によって生徒数に150〜600人程度の開きが出ている。第二中の場合、比較的近い場所に別の大規模な中学がある。部活動などが活発で、学区内の生徒が流れているという。鹿沼初男校長は「小規模を生かした良さはあるが、それにも限界がある」。一度生徒が減り始めると、マイナスの目でみられがちで、不人気に拍車がかかる。「良いイメージに変えるのは難しい」 
 こんななか、同市は9月、選択制を10年度の新入生限りで廃止する方針を決めた。「ここまで差が開くとは思わなかった。クラス替えができることが学校の適正規模の最低条件だ」という市教委は、学校の「統廃合」も今年度から進める。小中合わせて66校のうち10校をなくす計画で、第二中も統合される方向だ。4校を一気に2校にする地域もある。保護者には「行政は選択制を実験のように持ち込み、統廃合の根拠作りに使ったんじゃないか」と疑う声も出ている。 
「ある区は」―選択肢減らしても抽選校続出 
 02年に全小中学校で学校選択制を導入した東京都江東区も見直しを決めた。これまでは区内全域、どこでも行きたい学校を志願できるようにしていたが、電車やバスで通学する小学生も出てきて、地域のつながりが薄れたことを心配する声が強くなっていたという。来年度から、小学校では、歩いて通学できる範囲の学校しか志願できないようにした。また、人気校ではこれまで、地元学区内の子どもの数に一定数をプラスした定員を用意していたが、中学も含めてそれをやめることにした。これだと、学区外から志願しても、その学区内で私立校などに流れた「空き人数」程度の枠しかない。しかし――。ふたを開けると、「学校を選ぶ」動きは止まらず、来年度の入学者受け入れで抽選になる予定の学校が大幅に増えた。小学校は昨年は43校中9校だったのが今年は20校に。中学校では昨年は全22校中7校だったのが21校に。中学校で抽選にならないのは、今年7人しか新入生がいない学校だけだった。 
 一度「選べる」となると、保護者の気持ちは止まらない。進学内容、施設の充実度、校庭の広さ、部活動の活発さ、友だちとの関係……。選択肢が減っても、その中で「より良い」学校を選びたいと心が動く。例えば、部活が盛んで校舎が改築されたばかりの深川第三中。来年度の学区内の入学予定者数だけで225人いるが、さらに、他学区から320人の希望申請が出た。抽選は12月11日にあり、学区内の辞退者が出た数だけ順に繰り上がる。「行けるか行けないか」は、最終的には、私立希望者の行き先が定まる2月末ごろまで確定しないという。 
「先進地は」―保護者の6割「続けてほしい」 
 中学で導入して4年たった東京都練馬区は、検証の委員会を設置した。教員への選択式のアンケートでは、約65%が「うわさや風評で学校が選ばれるようになった」と答えた。学校選択制の肝とも言える「学校の競い合いで教育の質が向上した」という項目を肯定した教員は、わずか1・5%だった。 
 一方、00年に都市部で初めて選択制を導入した品川区は「区民に支持されている」という。今年2月のアンケートでは、保護者の5割が制度に満足し、6割が継続を望んだ。「選択制で、まず校長の意識が変わった」「成果や評価を意識し、子どもたちが力をつけているかをしっかり確認するようになった」。これが同区教委の分析だ。富田祥子学務課長は「課題のある学校があれば、予算も人もつけて支援している。ただ漠然と『制度を導入すれば活性化するだろう』と考えて導入したのでは、うまくはいかないだろう」という。 
 立場によって、大きく異なる評価や見方。制度の行く先は見通せない。全国の導入例を見てきた専修大の嶺井正也教授(教育政策学)は「先生の努力とは関係ないところで学校が選ばれることが少なくない」と指摘する。施設が新しい、制服がいい、駅に近い……。「人気」のもとは様々だ。坂の上にあるというだけで避けられている学校もあるという。「人気に格差が出ることは選択制を始めるときから予想されたが、思った以上に大きかった」。年を追うごとに増えてきた制度導入の動きも「今後弱まるのではないか」とみる。


その他

名言・迷言・冥言
(森清範 清水寺貫主)
やっぱり、ほんまもんの力をつけるには余分なことやらんと。小僧も寺に入ったらすぐお経教えてもらえるかというと、そうでない。朝は掃除、ご飯炊き、そして後片付け、そんなのをずーっとやってきて、お前、そこへ座れ、それからお経です。子守やお使いもするなあ。それがプラスになるんですわ。

さもしいのは誰だ
(読売新聞 12月7日)
 麻生首相は6日夜、長崎県諫早市で自民党長崎県連が主催した首相の演説会で演説し、追加景気対策の柱である定額給付金について、「貧しい人には全世帯に渡すが、『私はそんな金をもらいたくない』という人はもらわなきゃいい。(年収が)1億円あっても、さもしく1万2000円が欲しいという人もいるかもしれない。それは哲学、矜恃(きょうじ)の問題で、それを調べて細かく(所得制限を)したら手間が大変だ」と語った。
 政府は所得制限を設けるかどうかで混乱した末、「年間所得1800万円が下限」という目安を示したが、受給辞退を呼びかけるかどうかは市区町村の判断に委ね、実質的に制限がない状態が見込まれている。それだけに、今回の首相の発言は波紋を広げそうだ。
=12000円の給付金で人気を取ろうとして、混乱を招いたさもしい政治家は誰なんでしょう。=

受験生応援商品 食品メーカー、手堅い人気で戦争過熱
(毎日新聞 12月10日)
 受験シーズンを前に、食品メーカーが競って受験生応援商品を発売する。桜の花をデザインしたり、「大吉」のおみくじをつけたりと趣向はさまざまだが、ここ数年、縁起をかつぐ受験生に根強い人気。消費低迷の中、手堅く稼げる商品として定着しつつある。応援商品のはしりは、ネスレのチョコレート「キットカット」。九州の方言「きっと勝つとぉ(きっと勝つよ)」に響きが似ていることから話題になり、ネスレは03年の冬からマフラーとのセットなどの応援商品を毎年販売。キットカットは「4人に1人がお守り代わりに持っていくほどの人気」(広報担当者)となり、07年の売上高は02年の約1・5倍に伸びたという。この冬は金星をつかむとの思いを込め、サツマイモの人気品種「なると金時」のクリームを練り込んだ「大学いも味」=(希望小売価格136円)を29日に発売する。
 04年から受験の応援商品を販売する永谷園も、「お茶づけの素」の増量サービスとして、パッケージ裏面に「大吉」「大大吉」のおみくじがついた「カレー茶づけ」1袋が入った商品=を22日に発売する(同231円)。カレーは「受かれー」の語呂合わせだそうだ。ポッカコーポレーションは15日、紅白柄に満開の桜をデザインしたスープ2種(同241円)を発売する。永谷園やポッカは夜食需要を見込んでおり、「受験生に夜食で食べてもらって、売り上げは堅調」(永谷園広報室)と今年も期待している。

ウサギリンゴ 作れない親が増える
(読売新聞 12月11日)
 リンゴの皮をウサギの耳に見立ててむく「ウサギリンゴ」。お弁当の定番とも言えるウサギリンゴの作り方を知らない親世代が35%もいるという調査結果がまとまった。調査は青森県の青果販売業者らでつくる「青森県りんご対策協議会」が11月に実施し、全国の10〜60歳代の男女400人から回答を得た。
 このうち、2〜12歳の子を持つ20〜40歳代の男女95人に、ウサギリンゴについて尋ねたところ、「作り方がわからない」「作れない」と答えたのが29人(30・5%)いた。「知らない」(4人)を含めると、子育て真っ最中の親世代の34・7%が作れないことになる。50〜60歳代では、作れない人は20・6%。50〜60歳代女性に限れば、「作れない」は4%の一方、72%が「作るのが得意」としていた。
 総務省の家計調査年報によると、リンゴの国民1人当たりの年間購入数量は、1986年の4・8キロ・グラムから2005年には4・0キロ・グラムに減少。同協議会の調査でも、「ジュースや加工品を含め、リンゴをどのくらいの割合で食べるか」との問いで、60歳代は22%が「ほぼ毎日」なのに対し、現役親世代の41%は「月1回以下」だった。
 同協議会は「若年層のリンゴ離れが『ウサギリンゴ』を知らない人の増加につながっている」と指摘する。
=リンゴの皮むきをしたことのない子どもが増えているのもむべなるかな。=