NO.224
2006年11月25日
アクセス教育情報センター
目次
学校情報 |
教育情報 | 教育情報 | その他 | その他 |
武蔵中 | 川崎市で中高一貫 | 6・3・3・4制 | 名言・迷言・冥言 | タウンミーティング |
学校情報
武蔵中 学校説明会(06年10月28日)
昨年まで二学期に2回行っていた説明会を、今年は一学期に1回、二学期に1回と変える。
予定していた会場に入りきらず、急遽、第二会場を用意。当初用意した資料もなくなる。
1)武蔵の教育方針 校長 山崎先生
今年、説明会を1学期に1回、2学期に1回実施。
教育内容を外に向けて発信するのは学校の責務。4月以降、プレジデントやアエラ等の一般誌にも武蔵の教育が取り上げられるが、必ずしも十分に内容が伝わっているわけではない。保護者が自分で学校を見て、自分で判断して欲しい。
武蔵では生徒主体の行事が三つある。記念祭、体育祭、強歩大会。今年の記念祭でノーベル賞受賞の小柴さんを招いたが、これは、高3の生徒が小柴さんに直談判して実現する。
昨年行われた記念シンポジウムでは、中等教育におけるリベラルアーツの重要性が話される。今は実学志向で、その勉強が社会に出て役立つかどうかが基準になっている。多くの大学では教養課程を廃止してしまった。
学校でしか学べないものがあるのに、高等教育への入試が、中等教育での教養教育を阻害し、教育が一方向に流れてしまっている。
武蔵は旧制高校からの歴史を踏まえて本物教育を目指す。理科での実験・観察の重視、国語で変体仮名を読むなどはその一例。そうした中で、国際化学オリンピックで銀メダルを受賞した生徒も出る。
卒業生には世界マジシャン大会で3位になった生徒もいる。
6年間の中で自分の興味を持った生徒は伸びる。
1.武蔵の経緯
武蔵は旧制7年制高等学校として発足。日本で最初の旧制7年制高等学校。
当時は旧制中学5年、旧制高校3年という流れだったが、旧制中学4年で旧制高校を受験できた。それが一体となったのが旧制7年制高等学校。
他に、東京高校、学習院、成蹊高校、成城高校、甲南高校があった。
学制改革で旧制高校はほとんど大学になるが、武蔵は高等学校として残る。その後中学、大学を設置する。その意味で武蔵中高は武蔵大学の附属ではない。
2.武蔵の三理想
@ 東西文化融合のわが民族理想を遂行し得べき人物
現在は南北問題も考えなければならならないし、民族理想などの文言も考え直す必要があるが、その精神は生きている。
A 世界に雄飛するにたえる人物
中3から第二外国語を選択できる。ドイツ語、フランス語、中国語、韓国朝鮮語から一つを選択。上級に進んだ生徒の中から国外研修生として1学年17名程度(ほぼ学年の1割)が2ヶ月間ホームステイをしながら姉妹校に通う。姉妹校は6カ国10数校ある。
教員にも海外研修制度がある。
体験が文筆家を生むというのか、行く前はさほどでもなかった生徒が素晴らしいレポートを書く。
B 自ら調べ自ら考える力のある人物
自調自考は自分の子供には無理だと思う保護者が多い。
中1、中2では無理。自分でという習慣がない。6年間かけて育てていくので、初めから武蔵は合わないと思う必要はない。
そのためには時間と忍耐が必要。学校、保護者が生徒を見守ることが必要。
3.進路・進学
中高の12歳から18歳という時期は、人生においてもっとも大事な6年間。
大学受験だけに視野を狭めてしまうのはもったいない。
生徒の多くは大学へ進学していくのだから、大学へ行く学力もつける必要がある。入りたい大学に入れるようにするのも学校の責務であると思っている。
学力低下の根本は学習意欲の低下にある。勉強できるようになりたいと思う生徒が少ない。
そのためには、将来何になりたいのかを考えさせるとともに、学問の楽しさを教えることが必要。武蔵の、中1、中2における本物教育は学問の楽しさを教えるため。
進路情報部を設置して、大学や専門分野の情報を生徒に提供する。
預かった生徒がどこの大学に進学したかは学校の責務だが、合格実績だけで学校が評価されることには危惧を覚える。武蔵は合格者数ではなく進学者数しか発表しない。
世間で騒がれている合格ランキングは何の統計処理もされない実数だけが一人歩きをしており、おかしい。
4.中学入試
入試問題には学校のメッセージが込められている。
武蔵の入試問題は、本来的な理解力(読解力)、表現力(文章力)が必要な問題。
そういう力を持った生徒に入ってきて欲しいという思いの表明。
4科目の合計点で判定する。
不合格になったとしても、不運だった、縁がなかったというだけのこと。単なる学科試験にすぎず、その子の人格が否定されるわけではない。
学校を選ぶに際して、子供がこの学校に行きたいと思うこと、保護者もそこに行かせたいと思うことが必要。
5.その他
サッカーグランド、野球場を人工芝にする予定。
放課後のサッカーグランド
単位履修不足問題が言われているが、預かった生徒にいい教育を施して卒業させるのが学校の責任という観点にたって指導するべき。
2)学校生活、入試について 教頭 カジトリ先生
1.学校生活
武蔵は、中学、高校、大学が同じ敷地内にある。
中高は1つの学校として機能している。教員は中高の両方を教える。
6年間で、学年全員の顔と名前、性格がわかる。
週6日制。6時間×5日、4時間×1日。高校では7時間目、8時間目のある日もある。
中3から第二外国語。初級−中級−上級の設定で。
1学年176名。44名×4クラス。
各クラスの組主任(担任)4人で学年を担当し、その学年の授業担当者全員で生徒の面倒を見る。
英語、数学では分割授業を行う。
始業時間は年間を通して8:20。8:20からすぐに授業が始まる。HRがない。6時限目の授業修了後もそのまま解散。
学年が上がる毎に選択授業が増える。高3では、クラスでの授業は会合と体育くらい。
新しい図書館がオープンした。蔵書は7万冊。
明るく居心地のよさそうな図書館
弁当持参。生徒の食生活に家庭が管理責任を持って欲しい。
食堂はある。大学の生協を使うこともできる。
クラブ活動はさかん。運動部11、文化部11、同好会7。
ジャグリング同好会は近くの施設に慰問に行ったりしている。
校外行事として、スキー教室(希望者)、山上学校(中1、中2)、海浜学校(中1)、天文実習(中2)、地学巡検(中1)などがある。
生徒相談室を昨年10月にオープン。生徒はいろいろなところでつまずくもの。その精神面をバックアップする。現在は教員が中心になって運営。将来は専門家を置く予定。
武蔵は自由な学校、生徒の自立している学校と言われる。
自由・・世間では、武蔵には制服がない、髪の毛の色やピアス、携帯所持に規制がないというところを指して、自由と言うが、そこで武蔵の自由を言われるのは心外。
校則で生徒を縛れば縛るほど生徒はダメになっていく。校則に外れなければよいというだけで考えなくなる。校則で禁止はしない。自分で考えて欲しい。
武蔵の自由は生徒が考えることのじゃまをしないということ。それは学問の自由にも通じる。
武蔵には職員室がなく、先生は各教科の研究室にいる。生徒は質問や雑談をしにその研究室にいく。教師と生徒との垣根の低い学校。
生徒が企画したことに対して、教員はバックアップしていく。体育祭などでも体育科の教員は表には出ないが、よく見守っている。
自立・・中1、中2の時期は自立にはほど遠い。先輩にもまれ、先輩の姿を見て、自立した生徒になっていく。
武蔵は面倒見が悪いと言われるがそうではない。
2.入試に関して
試験日2月1日
発表は2月3日9:00。例年、2月2日の夕方には発表しているが、来年もそうなるかは確約はできない。
学問に王道なしと言われるように、武蔵に合格するための王道はない。
基本的なこと(読み書き、算盤)をしっかりやって欲しい。
しっかり読んで、しっかり書くこと。
読んでまとめる=自分の言葉で要約できるように。
自分の周りで起こっていることに関心を持って欲しい。
武蔵の入試問題は変わっていると言われるがそうではない。
穴埋め問題ばかりやっていてそれが役に立つとは思えない。また、小学校の学習範囲を逸脱していない。小学校の授業をしっかり受ける習慣をつけておいて欲しい。
武蔵の過去問題をぜひやってください。過去5年分をよく見て欲しい。解答例を見れば武蔵が要求していることがわかる。
答案の字が汚くても、何とか解読する。ただ、人に読んでもらうのだから丁寧に書くことはコミュニケーションにおけるマナー。
漢字で書かなくてはならないかは問題による。基本的な漢字はちゃんと書いて欲しい。
入試に向けて規則正しい生活を送って欲しい。
・睡眠時間の確保を。・・武蔵でも伸びない生徒は夜更かしの子が多い。
・食事をしっかり取ること。
・学校の授業を大切にすること。
3)各教科より・・各先生ともスーツ、ネクタイ着用
1.体育科(クドウ先生)
中1、中2は基礎体力の向上を目標にしている。
ランニング、水泳、各種ボールゲーム中心のメニュー。
入学時にボールを蹴れない生徒もいる。
中3〜高2
バスケット、サッカー、バレーボールを学期毎に。
高3は生徒が何をやるか立案する。
自分で運動ができるように=生涯体育の基礎を作る。
学校生活の中で体育科が関与するものとして
・体育際・・激しい内容だが、生徒がやりたいと決める。教員は協力する。
・スキー教室・・希望者100名程度が参加。初めての生徒から上級の生徒までがいる。 中1から中3までに6回あり、全てに参加した生徒は上級コースが滑れるようになる。
・海浜学校・・上級の班は遠泳で湾外(太平洋)に出る。サポート体制は万全にしている。水に顔をつけられない生徒がいたが、最終的に1キロくらいは泳げるようになる。サーフィンも体験する。
2.英語科(サカイ先生)
海外経験者が1クラスに2〜3名いるが、海外体験はさまざま。帰国生のための特別のクラス編成はしていない。ただし、専任教員にネイティブがいるので個別のサポートはできる。
小学校で英語を学習する機会もあるが、やり方がさまざまで違う。武蔵では学習の進め方もふくめ0からスタートする。入試に合格後、入学式の前までに英語の学習を特にやる必要はない。春休みはゆっくり過ごして欲しい。
中1〜高1・・英語力の体系化
読む、聞く、話す、書くの四つの力をバランスよく伸ばすことと、単語力をつける。
中1の5時間、中2の4時間、中3の4時間、高1の4時間は分割授業。
その他に、クラス単位の授業が1時間ずつある。
分割授業では検定教科書に自作のプリントを併用して使用。
クラス単位の授業は分割授業の内容を発展させる時間として使う。
中2後半から多読を行う。
ネイティブの専任教員が3名いるが、英会話という名前の授業はない。
伝えたい内容をどうわかりやすく相手に伝えるか=聞く、話すの授業を行う。英会話形式の授業ではない。
高2、高3・・発展的な内容に=4つの技能を越えたレベルの英語力をつける
ディベート、プレゼンテーションの実施。
演劇を通して英語を学ぶ。
小説、学術論文を読む。
専門的な分野で英語を主体的に使えることを目指している。
3.芸術科(カジトリ先生)
武蔵の芸術には音楽、美術、書道の三つの授業がある。
それぞれの手段を通して何を伝えるのかが芸術。
音楽が嫌いな生徒が半数以上いる。彼らは音楽が嫌いなのではなく音楽の授業が嫌いだった。→ 音楽の授業で嫌な体験をしてきている。
そのコンプレックスをとることから始める。音が外れていてもしっかり歌えれば満点。
上手、下手ではなく、何を表現したいのかを見ていく。音楽、美術、書道を通じてどう自己表現するか。
基本は大切だが、そこから何をしたいのかを見る。
そういう姿勢なので、1年後には楽しいという生徒が多い。
4.国語科(小池先生)
武蔵の国語の特色は
@ 本物教育=原典主義。
中1、中2の現代国語は明治から昭和にかけての小説を、旧字、旧仮名遣いのまま読む。古典も変体仮名のまま読む。・・・より本物に近いものに接する。
生徒はおもしろがって取り組む。変体仮名はパズルに取り組むような感覚で取り組む。
本物に接するきっかけ作りとしたい。
教科書に載っている文章は本物ではないことを知って欲しい。
真実とは何か、対象は絶対ではないことに気づいて欲しい。
A ゼミ形式の授業
自分で調べ、考え、レポートにまとめ発表する。
高校2年では分割授業(クラスを2分割)で1年間徹底的にそれを行う。
自分で調べて発表したものは自分の中に残る。
高3では源氏物語の1巻に取り組む。
教員も自分の専門分野を生かした授業を行う。
入試問題に関して
解答用紙に誤字や不明瞭な字があっても極力読むようにしている。
今までに判読できなかった答案はなかった。あまり字を気にせずに書いて欲しい。ただし、丁寧に。
漢字のトメ、ハネには細かくこだわらない。ただし、字として整っていること。例えば、土と士、末と未は字が違う。
記述に関して、要点を押さえていればできるだけ部分点を与える。
記述に際しては、字数の指定がないが、解答欄の大きさがメッセージになっている。普通の文字の大きさで、充分に解答欄を利用して欲しい。
武蔵の入試問題が記述にこだわっているのは、書く力を見たいということと、一つの文章を様々な角度から読む可能性を見たいため。
採点の許容範囲には幅があり、絶対的な解答というものはない。過去問の解説を参考にして欲しい。
読みを深める練習をしておいて欲しい。そのためには、書き換える練習を。
5.数学科(オカザキ先生)
(説明会に参加している子供に)算数は好きですか。算数が得意でも苦手でも構いません。武蔵の入試は4科目の点数で判定する。自分の好きなことを持っている人に入学してきて欲しい。または、入学してから何か好きなことを見つけたいという人でもよい。
@ 数学科としてやっていること
武蔵の数学は地道にやっている。高2までに高校家庭を終了して高3では大学入試問題の演習ということはやっていない。高3の途中まで、教科書をじっくりやっている。
中学では幾何に時間をかけている。中2、中3の平面幾何では高校内容以上のものに取り組む。幾何の授業で論理、論証能力を養うことができる。
数学で大事なことは紙とエンピツ。自分で書いて、考えて身につける。
なかなか思うようにはいかないが、そうした取り組みを続けている。
A 入試問題について
答案用紙は非常に細かく見ており、部分点をつけている。
答えは間違っていても、途中の過程が正しければ7〜8割の部分点がつくこともある。
算数ではあるが作文と同じ。自分は何がわかっているかを、式や図、場合によっては言葉で伝えて欲しい。考え方がわかっていればそれでよい。
6.社会科(カトウ先生)
@ 社会科の方針
中1から中3の社会は週4時間。歴史、地理、公民を扱う。
教科書に沿って知識をつけていくという授業ではない。テーマを設定し、テーマに関する資料を生徒、教員が用意し、それを多角的に検討していく。
地理では野外調査を行うこともある。
政治経済では、生徒が自分で考えたテーマを報告し、それについてクラスで討論する。
普通の学校で行われている教員主導の授業とはだいぶ違った授業形態。
入試問題は中学で行う社会科の授業のイントロダクションとしての性格もある。
高校ではかなりオーソドックスな授業になる。教科としての情報量が増えるので、教員の説明が主になる。選択の関係で少人数授業になることもあるが、基本的にはクラス単位の授業。
倫理・政経
世界史
日本史・地理・・・どちらかを選択
A 入試問題について
06年では300年前の富士山大噴火をテーマに自然災害について考える問題を出題。
武蔵の入試問題では、1つの社会的な事柄をテーマにして、資料を提示し、様々な設問を用意し、全てを総合して自分なりの見解を書くという流れになっている。
基本的には、今後もこの形で移行と思っている。
05年は大陸との公益をテーマに。
04年は旧暦をテーマに。
小学校ではそのまま扱うテーマではないが、テーマに関する知識をそのまま問うものではない。小学校6年生として、小学校の授業で、普段の生活の中で知っているであろう知識を前提にしている。その意味で、小学校で習う内容に準じた内容になっている。
時事的な事柄に強い関心を持っていて欲しい。→ 世の中で起こっていることに疑問を持ち、疑問を解き明かす粘りを持って欲しい。
日本以外で起きた災害を答える問題に、中越地震や阪神大震災と答えた受験生がいた。
授業中でも、時事的な事柄に関する質問に対して反応が鈍い。時事的な事柄に対する関心が薄らいでいるのではないか。家族で話し合う機会を持って欲しい。
世間に対する関心を持つ人に入学してきて欲しい。
7.理科
@ 理科の授業方針
武蔵の授業はアカデミックで大学の授業のようだと言われる。年齢にふさわしい内容にして行っている。
専門的なことがらも、幅広い教養に基づいた上で理解できる。クラスを理系、文系に分けることはしていない。
基礎となる教養=人が言葉にしたものを性格に受け止め、あるいは言葉で伝える能力。
自分が学んでいることが世の中にどうつながっているのかを意識することを大事にしている。
中1、中2・・自然に親しむ。生物、地学分野を中心に自然現象を科学的に捉える手法を体験的に身につけることを目指す。
中3、高1・・物理、化学分野を中心に自然に潜む法則性を定性的、定量的に理解することを目指す。
高2、高3・・選択授業で自分が取り組む教科を選ぶ。それまでに培われた科学的な見方、考え方を基礎に、より深い理解を目指す。
外に行かなければわからないものもある。→ 地学巡検、天文実習など五感に訴えるものもある。グランドを歩測して地球の大きさを測ったりすることも。
A 入試に関して
12歳の子に望む基礎を出題。
小学校の学習指導要領は1つの概念が途中で途切れたりしているが、その中で出題できるものを出題している。
知識としては小学校の教科書に出ているものを出題。
入試では問題文をしっかり読んで欲しい。反射的に答えている人がいる。文章を読むことで設問の意図をつかんで欲しい。
おみやげ問題では「〜に注意して」という条件がついているにもかかわらず、それを読まずに答えを書いてしまう人がいる。
過去問の解説を読んでもらえれば、設問の意図が書いてある。
=以上2時間10分の説明会。その後、図書館、校庭内の自由見学あり=
http://www.musashi.ed.jp/
桜蔭中 学校説明会(06年11月12日)
1)沿革、教育方針 校長 膳先生
大正13年4月創立。82年に。
東京女子高等師範(現・お茶の水女子大)の同窓会(桜蔭会)が創立。
女子教育の重要性に、自分たちの手で学校を作ろうと基金を集める。同窓生が1ヶ月分の月給を目安として寄付。
同窓生の当時の思い出によると「学校を作れるという楽しい思いで寄付をした」とのこと。
そうした先輩方の思いが流れている。桜蔭会から名前を取り桜蔭に。
桜蔭は女性の手による女性のための学校。最初の校長は全国の同窓生の投票で決める。
初代校長は昭和天皇の皇太子妃の教育係を努めた人。
初代校長の教育方針である「学びと礼」が建学の精神として受け継がれている。
「学べや学べ」は生徒を励ます言葉。女性の地位の低かった当時にあって、選ばれて入学してきた生徒に、学校にいる間は思う存分勉強に取り組みなさいという意味。はちまきを締めて勉強しなさいということではない。
学び・・学ぶことは生徒の本分であり、おろそかにはしない。
中高の時期は頭の柔らかい時期でいくらでも学べる。学問の基礎・基本をこの時期に身につけて欲しい。
礼・・すぐれた人格を持つ人材の育成のために、学校として、もっとも力を入れている。
学びと礼が並び立たなければ片手落ちになってしまう。
6日制と中高一貫の中で、人格育成のカリキュラムを組んでいる。
卒業生には桜蔭での礼法が役にったったという人が多い。
HRや道徳の時間を通して心を育む教育を行っており、進学一辺倒の学校ではない。
桜蔭では生徒同士の関係がよい。よい友人にめぐり会える。
中高6年間の友情は、その人を支えていく、その人にとっての宝物になる。
お互いにいたわり合い、助け合う気持ちがないと6年間はギスギスしたものになってしまう。
生徒は文化祭やクラブに一生懸命打ち込んでいる。
一時期、女子だけで過ごすことも必要ではないか。甘えるところがなく、自分たちでやらなければならにという意識になる。これまでに15,600名の卒業生おり、各分野の第一線で活躍している。それが在校生にとってもよい目標、指針になっている。
第二次大戦で校舎の3/4を焼失。みんなの協力で再建し、一歩一歩今の形になってきた。
2003年の西館で校舎の建て替えが完成。明るく、生徒と個別に話せるゆとりのスペースも。1号館は記念館として残す。
校舎の間に公道が2本通っているが、安全には全神経を配っている。
ひばりヶ丘に運動場、北軽井沢に山荘がある。
教員の団結が桜蔭の一番の財産であり、教育への情熱と理想は冷めることなく進んでいく。
2)教育内容、行事 教務主任 サイトウ先生
1.施設他
2003年に西館が竣工。中3から高3の教室が入る。中1、中2の教室は東館に。
東館地下1Fに温水プールがあり、5月〜11月末まで各学年週1時間は水泳の授業がある。中2の夏休みには外部コーチによる水泳指導がある。
ひばりヶ丘に運動場があり、中2は体力をつける学年として、4月〜10月末まで、毎週土曜日はひばりヶ丘に行き、2時間は授業、2時間は体育を行う。
浅間山荘では中1、高1が夏休みに1クラスずつ2泊3日の合宿を行う。
中1から高3まで各学年5クラス。1クラス48名。
小学校に較べ1クラスの人数が多いが、生徒のレベルも高く授業が大変と言うことはない。
各学年、担任と副担任1〜2名がチームで生徒を見守っている。
その学年を3〜6年担当する先生もいる。
教員は中高兼任なので、高校での広がりを見通した授業や、中学での授業を踏まえた授業ができる。
毎年クラス分けがあり、6年間でほとんど全員と同じクラスになる。
2.1日の生活
7:30 学校が開く。
8:30 授業開始。50分授業。午前中4時限、午後2時限。
15:10 授業終了。終礼・清掃。
16:45 クラブ終了。(原則は16:00下校)
17:00 閉門。
中高とも週1回朝礼があり、その日(中学は水曜日)は8:05までに登校。
3.クラブ活動・文化祭
中1〜高2は必修クラブになっており、必ず1つのクラブに所属する。1年ごとにどのクラブに所属するか申し込む。1つのクラブを続ける生徒が多い。
文化祭はクラブや同好会の1年間の活動のまとめの場。研究発表的な要素が強い。
文化祭企画委員会を高2が中心となって運営する。
4.教育課程
中学・・実技、芸術科目にも時間を割いている。教科に軽重をつけず総合的に学ぶ。
礼法の時間が5週に1度ある。50分を正座で過ごす。
礼の心=自分自身を見つめ、多の人のことを考える。
道徳は校長と担任が隔週で担当。
中3の自由研究のテーマは自由。9月に提出してHRで発表。その後、下級生、保護者向けの発表会を行う。下級生は刺激を受けている。
高校・・必修科目が多い。
文系、理系は高2からの選択科目で分かれる。
文系、理系によるクラス分けはない。同じクラスに文系を志望する生徒、理系を志望する生徒が混じっていた方が、お互いの刺激にもなり、人間的な広がりも出る。
習熟度別授業は高2から数学と英語で実施。
F(速い)とM(じっくり)の2段階に分けて。どちらを選ぶかは生徒の希望による。
勉強は自分でやるしかない。自分に向き合ってどちらが合っているか考える。
強制的にやるのは勉強にならないと思っている。
中学から安易に塾(予備校)に通って欲しくない。
勉強は1つ1つの地味な積み重ね。その中で、自分に合った勉強のやり方を見つけて欲しい。そのための時間を取って欲しい。
桜蔭の授業を受ける前から塾に申し込むことのないようにして欲しい。
5.行事
資料の年間行事を参照してください。
高校では歌舞伎か能、オペラの鑑賞に必ず行く。
卒業生による講演会・・社会の中でいきいきと活躍している卒業生から中3に対してのメッセージ。
6.入試に関して
2月1日 女子240名 4科 面接
通学時間は1時間位までが望ましい・・クラブ活動や家での学習、宿題などを考えると長時間通学は負担になってくる。新幹線通学は認めていない。
4月以降に1時間以内の場所に転居されてくる場合は出願時に遠くても問題ない。
通知表のコピーはできればA4版の両面コピーで。
二期制の学校などで、通知表に12月までの出欠日数が記されていない場合は報告書を。
生徒面接はグループ面接。
保護者との面接はどちらか一方の保護者と。
試験中の休み時間にお茶等を口にするのは構わない。お菓子は普段の学校生活でも禁止。
7.質問に対して(事前に質問用紙を配布。記入のあった質問に対して)
@ 通塾率はどのくらいか・・調査をしていない。
A 入学者の出身塾は・・調査をしていない。
B クラス分けの方法は・・成績によるクラス分けはしていない。生徒に成績を出すこともない。
C 生まれつき髪の毛が茶色だが・・自然なものは見ればわかるので心配はいらない。
D 不登校の対応は・・あった場合は、担任、学年担当者、カウンセラーなど学校全体で対応するとしか答えられない。
E 高校への進学条件は・・成績だけを理由に高校への進学を認めないということはない。
F 教員の構成は・・専任教員が校長、教頭を含め53名。講師30名。うち男子教員は5名。
G 高校での留学・・学校としての留学制度はない。個人で留学する場合、休学して行く場合と退学して行く場合がある。退学して行く場合は戻ってきたときに編入試験を受けてもらい、どの学年に戻るかを相談する。
H 帰国生の対応・・特別な配慮はない。
3)中1の様子について 学年主任 アンザイ先生
中学生のほとんどが電車通学。最初の1ヶ月は、まず学校に慣れましょう。
1クラス48名の人数に、最初、圧倒される子もいるが1ヶ月で慣れる。
昼食は6名のグループで、清掃は8名のグループで。
新聞部による中1アンケート
制服が地味・・68%・・虚飾を拝している。制服を着こなすには中身が伴っていなければならないと話す。制服を着こなしている生徒はりりしい生徒。
校章がかわいい・・87%
学校の印象・・入学前は真面目だと思っていた人が65%。入学後は明るいが77%、真面目は2%に。
5月にひばりヶ丘で体育大会が行われるので、2回練習に行く。中1は3種目に出るが2回の練習でできるようになる。
体育大会は中1から高3までを縦割りにして色別対抗。上級生の動きを見る機会になっている。
最初の中間テストは不安を持っているが、終わってみれば授業の復習をしっかりやっていればよいことがわかる。→ 桜蔭は授業が全て。それは6年間一貫したポリシー。
教員に何か用事があっても、時間割を変更するなどして授業は空けない。
授業は基礎を重視した授業。決して先取りに走ることはない。
6月からクラブが始まる。
夏休みの浅間山荘合宿の準備も。事前学習と事後のまとめを重視している。浅間山荘の体験は文化祭で発表する。
浅間山荘合宿・・クラス別に8月1日から11日の間の2泊3日。浅間の自然、歴史、文学の中から興味のあるものについてレポートを作成。
夏休みは宿題が多い。各教科のドリル、多面体作り、プールに行く、トイレ掃除やアイロンがけなどの家庭の仕事に挑戦。
生徒は手間のかかることや、答えのすぐでないことに取り組むのを嫌がる。家庭科でスモック作りをやるが、1学期に運針を居残りしてでもやったか、夏休みにアイロンがけにちゃんと取り組んだかが差になって現れる。
学習面で遅れた生徒には、居残りで個別指導を行っている。
今後は11月の音楽会、3学期の英語発表会と行事が続く。
4)各教科から受験生へのメッセージ(配付資料より)
《国語》
言葉は人と人とをつなぐ役割を果たすものです。パターン化した思考を身につけてしまうことで、逆に生きたコミュニケーションの力をしおれさせてしまうのは残念なことです。
たとえば文章を読むときでも、筆者・作者の言いたいことが何なのかを論理的にとらえ、自分ならどう思うのかを感性豊かに想像する。そして自分の思いや考えが相手に伝わるようにわかりやすく表現する。
国語の力は日々のコミュニケーションの力の積み重ねです。朝、窓を開けたときの風、おはようと交わす声、すれ違う人の表情、路地を走りぬける猫、すべての生活を大切にしてください。生活の中でひとりの人間として感じること、考えることをたいせつにしてください。それがコミュニケーションの力の根幹となります。
《算数》
文章題を正確にとらえられるか、平面・空間図形を正しくイメージする力があるかを見たいと思います。特に速く正しく計算する力が必要です。問題を解くときは、図をかいたり、いろいろな解き方を自分で考えるように心掛けてください。
また、答えを出すにあたって、どう考えたかを他の人に伝えられる表現力を身につけることも大切です。よって、解答用紙に途中の式や考え方が書いてあれば、それを評価し中間点を与える場合があります。答えが正しくても、不要な式があったり、途中の計算が違っている時、考え方が間違っていたり、書いてないときは減点します。
解答は、きれいに書いてください。
《社会》
入試問題は、地理分野・歴史分野・公民分野について、小学校で学ぶ内容を基本に出題します。地
図・年表・史料などを含む問題文を正確に読み取り、答を導き出すための総合的な判断力が要求されます。
社会科は、人間の営みを様々な視点から学ぶ教科です。日頃から、地域の身近な活動や日本・世界の動きに関心を持ち、また知識を単に暗記するのではなく、筋道を立てて物事を考える学習を心がけましょう。
《理科》
原則として物理・化学・生物・地学の各分野からそれぞれ出題します。小学校で学習した基礎的な知識を問うことはもちろんですが、普段の生活の中で見かけるさまざまな科学現象に、興味や関心を持って過ごしてきたかを試します。また、授業や教科書の内容を正確に理解した上で、より複雑な現象や新しい生態などにも柔軟に応用できるよう、限られた知識が科学的に体系付けられているか否かを判断します。暗記だけの高度な知識は必要ありません。日常生活で経験する現象にいつも好奇心を持ち、実験や観察を通して科学的に思考する心掛けと、得られた結果を正確に判断する習慣が必要です。柔軟で多面的なものの考え方ができる総合力を必要としています。
http://www.oin.ed.jp/index2.htm
桐蔭学園 個別相談会
12月9日(土) 個別相談会 9:30〜12:30
入試説明会・クラブ発表会 10:00〜12:30(出入り自由)
校舎見学 10:20〜12:30(自由見学)
http://www.cc.toin.ac.jp/GAKUEN/
明星中高 新校長インタビュー
(全私学新聞 11月13日)
明星中学高等学校(城戸一夫校長、東京都府中市)は、今後の同校にとっての指針となるための役割を果たすべき中期(平成18〜22年度)改革に基づき取り組んでいる。
その内容は「一、『和の精神』を基にした教育」「二、『真心と真心の人格接触』による『手塩にかける教育』「三、心の教育を育てる『凝念』教育」「四、学訓『健康、真面目、努力』の教育」「五、世界に貢献する人の育成」−−この5項目に集約できる。
中期改革によると、「A教育体制の改革」「B教育内容・教育方法の改善」「C教育力と指導力の改善と強化」「D教育環境の整備」−−を柱とする。
このうち、「A教育体制の改革」では、組織・カリキュラム面を検討し、「中高一貫教育」体制を確立する。「選抜クラス」や入試制度の見直しも行う。この点につき、入試制度を抜本的に見直すと同時に、全教職員を地区分けして学校紹介・広報の地区分担制を確立し、一丸となって受験生の獲得に努める。さらに、PTAおよび同窓会との連携強化と貢献を行い、世界に羽ばたいていく人材の育成などに努める。
また、「B教育内容・教育方法の改善」については、@一貫教育のためのカリキュラムの開発Aシラパスの開発B自主教材の開発C進路指導の充実D生活指導の充実E部活動の充実F学力格差への対応−−を目指す。Fについては、学習遅進生徒のための「学習支援センター」設立の構想がある。
また、「C教育力と指導力の改善と強化」については、教員研修の強化、教職員による授業評価、第三者機関による学校評価などを組み合わせた、適正な教育評価制度の導入を考えている。
城戸校長は「私は信念として、子供の人格をつくっていくという意味では、教育とは『芸術』だと思っています。この点を教員に理解してほしいと思います。本校の2、3年後を期待していてほしいと思います」と熱く語る。
城戸校長は、筑波大学付属駒場中学高校教員・副校長、その後、工学院大学附属中学高校の校長を歴任し、教育改革に携わってきた。専門は世界史。
http://www.meisei.ac.jp/jhs/index.html
合同説明会
寮のある学校合同説明会
11月21日(火)に横浜会場で、11月22日(水)にお茶の水会場で行われ、ともに300名を上回る保護者が参加。寮のある学校の教育が年々受験生の関心を呼んでいる。
相談会場(お茶の水)の様子
教育情報
川崎市で中高一貫 市立高改革推進計画
(東京新聞11月15日)
川崎市教育委員会は十四日、市立高校では初めてとなる川崎高校への中高一貫制の導入や、五校ある定時制を三校に集約するなど、二段階で再編する市立高改革推進計画素案を明らかにした。同計画は二〇〇六年度以降の十年間の方向性や施策を示すもので、単位制の検討や、定時制では昼と夜の二部制導入も盛り込まれている。
市立高改革検討委員会の初会合が同日、市役所で開かれ、市教委側が同素案を示し、再編方針などについて諮問した。同検討委は学識者や市民、学校・行政関係者で構成。来年五月ごろに答申を策定する。市教委では答申を受けて検討。同七月に、同計画を決定する予定。計画は、生徒の適性に応じた教育の充実や定時制に通う生徒の多様化、川崎高と高津高の耐震強度不足などといった教育環境の変化に対応し、改善するのが目的。素案は市教委が、中高一貫教育など専門検討委員会の議論を踏まえ策定した。
第一次計画によると、川崎高は校舎の老朽化もあり改築に合わせ、全日制の普通科を併設型の中高一貫制に転換する。中学は三学級、高校は一学級分の入学を受け入れ、四学級にする。定時制(普通科)は、二部制を導入。専用教室を設け、夜間二学級・昼間二学級にする。
商業高は、全日制では現行から商業科四学級と普通科二学級に改編。商業科には二年次から、専門コース制を導入。定時制は廃止。
総合科学高は、定時制で工学系を一学科一学級にし、商業高で廃止した商業科一学級を増やす。橘高は定時制(普通科)で三年制の一学級を廃止し四年制二学級にする。
二次計画では、高津高は、耐震補強を終えた後に一次計画を踏まえ改築する。その上で、普通科での中高一貫制の導入を検討する。定時制(普通科)は二部制にし、三学級を五学級にする。橘高の定時制二学級は廃止する。
慶応大学薬学部新設 共立薬科大学と合併へ
(毎日新聞 11月20日)
慶応義塾(安西祐一郎塾長、東京都港区)と共立薬科大(橋本嘉幸理事長、同)は20日、慶応大で会見し、両大学が合併協議に入ることを発表した。早ければ08年4月にも、慶応大が共立薬科大を吸収合併する見通し。橋本理事長は「実務実習の際、病院や医学部があると、(薬剤師育成などに)絶大な力を発揮する」と説明した。
合併の申し入れは、共立薬科大側が今月6日に正式に行った。これを受けて、慶応大側は20日、評議員会を開き、(1)法人の合併を前提に協議に入る(2)07年3月をめどに合併協定書を締結する(3)08年4月1日をめどに慶応大に薬学部と大学院薬学研究科を設置する−−の3点を決定した。橋本理事長によると、具体的な他大学との合併の検討は約2年前から学内で行い、薬剤師により高度な知識が求められるようになった最近の社会的背景などを踏まえて決断したという。橋本理事長は「落ち着いた環境で、質の高い薬剤師を育てたい」と教育効果を強調した。一方、今年度入試で志願者が対前年度比で14%減少したことについては「(共立薬科大は)収支も黒字で、学生の応募も薬学部の中では高い率を維持している。経営は何ら不足はない」と話した。また、安西塾長は「世界水準の薬学教育機能を有する教育研究機関になる」と慶応大側の長所を挙げた。
慶応義塾 幕末の1858年に福沢諭吉が創設した蘭学塾が母体。1868年に時の年号を元に命名した。大学は文、経済、医など9学部。在学者数は幼稚舎から大学院まで総計3万6541人(今年5月現在)。
共立薬科大学 1930年、東京・芝公園に共立女子薬学専門学校として開学。創立者の小島昇は慶応大経済学部卒。49年に薬学の単科大学となり、96年度から男女共学。学部、大学院を合わせた学生数は973人(今年5月現在)。
◇合併の背景に大学間競争の厳しさ
慶応義塾と共立薬科大の合併の背景には、大学・短大の志願者数と定員数が同じになる「大学全入時代」の到来を07年度に控え、大学間の競争が厳しさを増している状況がある。トップ校である慶応大も、東京大や早稲田大などとの競争は激しく、教育・研究の充実が求められている。大学関係者は、今回の合併について生き残りを図ろうとした両大学の思惑が合致したものとみている。
関係者によると、慶応大が薬学部を持つ他大と合併するという話は2〜3年前からあったという。慶応大にはこれまで医学部と看護医療学部はあったが、薬学部はなかった。慶応大のメリットについて、学校情報に詳しい出版社「大学通信」の安田賢治情報編集部長は「総合大学として薬学部を持てば、生命科学の分野など研究や教育の幅が広がると考えたのでは」とみる。
一方、薬学部は06年度から薬剤師の国家試験受験資格の在学年数が4年制から6年制に延長された。この影響で、大手予備校・河合塾の調べでは、薬学部全体の志願者は05年度の12万1534人から06年度は前年比65・4%の7万9427人と大幅に減った。その半面、来年度には五つの大学が薬学部新設を申請している「供給過多」の状況にあり、安田部長は「共立薬科大の経営者には危機感があったのだろう」と言う。
私立大を持つ学校法人の合併は、関西学院大と聖和大が09年4月に予定している。過去には、95年に南山大を持つ南山学園と名古屋聖霊学園が合併した例がある。
履修単位不足問題3
現場に配慮を 東京私立中高協会会長が文科省に
(全私学新聞 11月13日)
第54回全国私学教育研究集会が11月9・10の両日、東京・港区の新高輪プリンスホテル国際館パミールを主会場に開かれ、全国から参加した私立中学高校の理事長、校長、教員ら約1千人が、私学経営や教務運営など11の部会に分かれ今後の私学教育を研究協議した。このうち私学経営部会では今年の研究集会を企画・実施した東京私立中学高等学校協会の近藤彰郎会長が高校での「未履修問題」に触れ、学習指導要領の実施に当たっては、各学校ごとに生徒の状況等に応じた調整の必要性を強調、全国一律に学習指導要領の完全実施を求める文部科学省の対応方針に疑問を投げかけた。
「私学経営について東京からの報告」と題し講演した近藤会長は、未履修問題にも言及、富山県の公立高校での未履修が発端となった今回の問題について「卒業は校長が決めること。(あの校長は)生徒に、卒業させるから心配するなというべきだった。卒業までに履修させればいいこと」とし、「受験後、三月に集中してやらせることが大正解。生徒を不安にさせないことが大事」などとした。また文部科学省の態度について「疑問が残る。現場や生徒のことを考えてほしい」と語った。
現在、高校への進学率はほぼ100%。それだけに多様な生徒が入学しており、学校や生徒によっては、小学校の教育内容にまで遡っての学習やレポートによる代替など、少しでも脱落者を減らし学習意欲を引き出す様々な創意工夫が学校現場で行われている。反対に飛び入学制度では、高校の二年修了で大学に進学することもでき、さらに高校卒業程度認定試験もあり、生徒の多様化に合わせて様々な対応が取られている。一部の広域通信制高校では、いわゆるサポート校が通信制高校の課題の解答を生徒に教えるなど、不正履修といった実態も指摘されている。
近藤氏の発言は、そうした多様化する高校教育現場、またいかに大学受験が生徒や家庭にとって大きな存在かを指摘した発言と見られ、未履修校を探し回る現在の風潮について「魔女狩りのようだ」と評した。かつて学校5日制の実施が始まった際、5日制を行わない私立学校に当初、文部科学省やマスコミから厳しい批判が集まった。その後、同省は5日制を強要しない方針に転換、最近では5日制への移行が学力低下問題の要因の1つとさえ言われている。
私学経営部会ではこのほか、「私学の公共性と公費負担のあり方」を演題に市川昭午・国立大学財務・経営センター名誉教授が講演した。市川氏は、私学助成が公共性を根拠に行われていること、その公共性は教育課程や5日制などで私立学校が国公立学校にどれだけ似ているかが問われてきた。しかしこうした要求は私学の自主性を損なうことになると指摘。私立学校が自主性、独自性を発揮してユニークな教育を展開し、どれだけ公立学校と競い合えるかが重要で、私学による教育の多様化が学校教育に革新、生産性をもたらすことを強調した。その意味で、私学振興助成法が掲げる私学助成の3つの理由については説得力を持たなくなってきたとし、今後は私立学校が公教育全体に貢献していること、自治体の財政負担軽減に寄与していることなどを訴えていくべきだとした。仮に私立学校がなければ国と地方がその(教育機会の)分を負担しなければならず、少なく見積もっても負担増は5兆円以上になるとの見通しを明らかにし、国等の財政が苦しいからこそ私立学校の活用が必要だとも語った。
履修単位不足 私立校の22%に
(朝日新聞 11月22日)
高校の必修科目の履修漏れ問題で、文部科学省は公立と私立の計665校で漏れが見つかった、と22日発表した。私立の履修漏れの割合は全体の21.6%で、9.1%だった公立の倍以上だった。文科省教育課程課は「一部の教育委員会ではまだ調査を継続しているようで、確定値ではない」としている。
同課によると、今回の数字は20日現在の集計で、最初に発表した1日時点より125増え、すべての国公私立5435校(中等教育学校の後期課程を含む)の12.2%にあたる。うち公立は371校、私立は294校だった。
生徒数では、いまの3年生約116万人の9.0%にあたる10万4333人。未履修が4単位140コマを超える生徒は公立の1.6%に対し、私立は11.4%と7倍以上多かった。
教育基本法改正 参院で審議開始 安倍首相が意義強調
(毎日新聞 11月22日)
参院教育基本法特別委員会は22日、安倍晋三首相が出席して教育基本法改正案の実質審議をスタートした。首相は現行法について「教育水準の向上を図り、一定の役割を果たしたが、占領下でできた成立過程も指摘せざるを得ない」と述べ、公約である「戦後体制の見直し」の観点から改正の意義を強調した。舛添要一氏(自民)への答弁。
国旗・国歌に関しては「日の丸や君が代に一部の国民が拒絶反応を持ち、それを強要した。学校教育の現場で大きな影を落としていた」と、反対運動を展開した教職員組合を批判した。伊吹文明文部科学相は高校での履修単位不足やいじめ問題に関連し、「教育委員会に対し調査、指導する権限がない。教育の根幹にかかわる問題としてぜひ論議してほしい」と述べ、文科省の権限を強化する必要があるとの認識を示した。
6・3・3・4制 見直し検討、安倍首相が答弁
(朝日新聞 11月22日)
安倍首相は22日の参院教育基本法特別委員会で、小学校6年、中学校・高校3年、大学4年の「6・3・3・4年制」について「構造改革特区の試みや小中一貫教育などの様々な取り組みが行われている。この成果を分析・検証しながら、検討していきたい」と述べ、見直しを検討する考えを示した。ただ、首相は「現在の制度は戦後60年でかなり定着している。根本的に変えることになれば、国民的な議論や理解も必要だろう」とも語り、慎重に議論を積み重ねる必要があるとの認識を示した。伊吹文部科学相も「6・3のまま一つにくくることは考えられるやり方だと思う」と述べ、小中一貫教育に理解を示した。いずれも舛添要一氏(自民)の質問に答えた。
不当な支配 教育行政はあたらず、国会審議で文科相
(朝日新聞 11月23日)
伊吹文部科学相は22日の参院教育基本法特別委員会で、政府の教育基本法改正案が、教育は「不当な支配」に服することはないと規定していることについて「国会で決められた法律と違うことを、特定のグループ、団体が行う場合を『不当な支配』と言っている」と語った。一方、法律や政令、大臣告示などは「国民の意思として決められた」ことから、「不当な支配」にあたることはないとの考えを強調した。現行の教育基本法は「教育は、不当な支配に服することなく」と規定。政府の改正案も、この表現を踏襲しつつ、「法律の定めるところにより、行われるべきだ」との規定が追加された。これまで教職員組合などは「不当な支配」の規定を、教育行政による教育現場への「介入」を阻止する「盾」と位置づけてきた。また、9月の東京地裁判決では、国の学習指導要領に基づき国旗掲揚・国歌斉唱などを強要する都教委の通達や処分が「不当な支配」にあたると判断された。しかし、伊吹氏は、政府案の規定は、教育に対する「政治結社、イズム(主義)を持っている団体の介入を排除する」目的だと説明。むしろ、一部の政党や組合などによる「介入」を念頭に置いていることを示唆した。
一方、安倍首相は、国旗・国歌について「学校のセレモニーを通じて敬意・尊重の気持ちを育てることは極めて重要だ」と強調。「政治的闘争の一環として国旗掲揚や国歌斉唱が行われないのは問題だ」と批判した。
=教育基本法ができた経緯からすれば、国=教育行政機関からの教育への介入を不当な支配としていることは明らか。=
教職員に能力給導入 来年6月から兵庫県教委
(毎日新聞 11月25日)
兵庫県教委は来年6月から、一般教職員のボーナス(勤勉手当)に3段階の格差を付ける能力給(成績率)制度を導入することを決めた。資質向上が目的で、各校長が評価する。一部の教職員組合は「校長ばかりを気にするようになる」と反発している。県教委教職員課によると、対象は県立高校、市町の小中学校などの約3万6000人。校長が内申書を作成し、約6割を標準的な「良好」、約3割を「優秀」、約1割を「特に優秀」の3段階に査定。理由とともに各教委に提出する。人数の比率は今後さらに詰める。内申書は本人には開示せず、各教委が校長の評価を覆すことはない。
支給額は、「優秀」は「良好」の1割増し、「特に優秀」は2割増しとなる。導入時に全員の勤勉手当を0.015%切り下げ財源とするため、1回の支給額は「良好」の人で現在よりも平均約6000円減り、「特に優秀」と「良好」の差は平均約6万円という。県教委は「平等な支給を逆手に取って、一部に頑張らない先生がいる」と理由を説明している。同県では校長、教頭ら管理職には今年6月から能力給制度を導入していた。県には教職員組合が7団体あり、最大労組を含む3労組とは妥結。一方、反対する県高等学校教職員組合は「教育の世界は5年後、10年後に成果が出ることもある。教師が子供を向かず、校長ばかりに目を向けるようになる」と批判している。
同様の制度は鳥取、愛媛、高知県が既に導入している。
▽高見茂・京都大大学院教授(教育政策学)の話 人を評価するときには、好き嫌いなど、個人の主観的な判断が加わってしまい、教師間のやっかみや、校長にへつらう先生が生まれる恐れもある。相当に工夫しないとうまくいかないのではないか。
その他
名言・迷言・冥言
(ヘルマン・ゲーリング ニュルンベルグ裁判で)
政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です。
大人なら知っている 教育基本法改正に関して
(毎日新聞 11月18日 ブロードキャスト)
教育基本法改正案で、与野党の対立が続いている。17日の毎日新聞の余録は「教育勅語によって国の独立を守るよう教えられた世代は国を滅ぼした。個の尊厳や自他の敬愛と協力をうたった教育基本法下では、いじめの陰湿化や受験競争過熱が進む。勅語や法律に徳目を列挙しても、その通り子が育つわけではない。大人なら誰もが知っていることである」と書いている。簡潔に本質を突いている。
「誰でも知っている」ことが、どうして騒ぎになるのだろう? (1)「誰でも」の中に、「基本法を変えれば教育は良くなる」とする政治家は含まれない(2)本当は知っているのに、何かの都合で「知らないふり」をしている(3)一部の政治家は「大人」ではない−−。三択クイズならこうなるか。
(1)ならもっと現実に目を向けることだ。それでも「大人の常識」の方が違うと思うのなら、粘り強い説得しかない。(2)であれば、「何かの都合」を説明する責任がある。野党もそこを追及すべきだ。(3)の可能性も、なくはない。問題なのは「教育」よりも、「国会」と政治の仕組みかもしれない。
改正案では「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた国と郷土を愛する」ことを、教育の目標の一つにあげている。目標となれば「評価」と切り離せないが、その点についてはきちんとした説明がない。「伝統と文化」とは何かもあいまいだ。
またクイズ。(1)教師は、浅草の三社祭を見に行った子供の作文と、休日に父親とテレビゲームを楽しんだ子供の作文のどちらに高い評価を与えるべきか(2)児童・生徒に歌舞伎や能を見せることが難しい場合、テレビの「大河ドラマ」や「水戸黄門」などの時代劇で、「伝統と文化」を学んだことにしても良いか。
国民の合意がないなかで「改革」だけが先行すると、こんな珍問答が交わされることになりかねない。
男女平等度 日本はG7で最下位
(毎日新聞 11月21日)
スイスの民間研究機関・世界経済フォーラムは21日、世界115カ国での男女格差を指数化し、順位を付けた報告書を公表した。格差が少なく男女平等に最も近いと評価されたのはスウェーデン。ノルウェー、フィンランドの北欧勢が上位を占めた。日本は先進7カ国(G7)で最低の79位。政界・実業界での格差がG7で最悪レベルだった。
指数はビジネスや政治で決定権を持つポストへの進出度や教育機会の均等、平均寿命など14分野について国連統計などを基に算出した。日本は教育や健康分野で男女格差が小さかったが、多くの国が同様の傾向を示したため順位には大きな影響は出なかった模様だ。G7ではドイツ(5位)と英国(9位)がベスト10に入った。アジアでは各分野で男女格差が少ないと評価されたフィリピンの6位が最高だった。同フォーラムは昨年、主要58カ国の男女格差を比較した初の報告書を作成。首位はスウェーデン、日本は38位だった。
男女平等度ランキング
1 スウェーデン
2 ノルウェー
3 フィンランド
4 アイスランド
5 ドイツ
6 フィリピン
7 ニュージーランド
8 デンマーク
9 英国
10 アイルランド
14 カナダ
22 米国
49 ロシア
63 中国
70 フランス
77 イタリア
79 日本
92 韓国
98 インド
入札制度に反対 選手をお金では売らない
(サンケイスポーツ 11月16日)
巨人・清武英利球団代表(56)がポスティングシステム(入札制度)に反対の立場を示した。松坂のメジャー挑戦を祝福する一方で「(日本の)球界にとって大きな損失。一時的に球団は潤っても、長期的には自分の首を絞めることになる」と疑問を投げかけた。FA権取得前の移籍を認めれば、選手によって保有権の期間に不公平が生じるため「ウチはポスティングはやらない。選手をお金では売らない」と制度の見直しを訴えた。
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日本ハム・小笠原、巨人入り決定(朝日新聞 11月22日)
プロ野球・日本ハムからフリーエージェント(FA)宣言した小笠原道大内野手(33)が巨人に移籍することが22日、決まった。この日午前、東京都内のホテルで巨人と2度目の交渉を行い、「巨人にお世話になると思います」と入団に合意したことを明らかにした。
この日、巨人側が4年契約を提示。小笠原選手は「最初から4年という形で出してくれたのがうれしかった。最大限の評価をしていただいた」と語った。1年あたりの年俸は4億円(推定)で、再契約金と出来高部分については今後、話し合われる。今年、日本ハムを日本一に導いてパ・リーグの最優秀選手になった同選手を巡っては、巨人と日本ハムが獲得を目指して争っていた。これまで日本ハムと3回残留交渉に臨み、3年15億円(推定)の提示を受けていた。
=これまで、資金力にものをいわせてFAで選手を集めておきながら・・・・。巨人は、選手をお金では売らないがお金では買うということか。=
タウンミーティング 「エレベーター手動」で1万5千円
(毎日新聞 11月22日)
内閣府がタウンミーティング(TM)開催にあたり、閣僚らを接遇する経費として高額な基準を設定していたことが22日、明らかになった。民主党の蓮舫氏が同府の資料を基に参院教育基本法特別委員会で追及、安倍晋三首相は「節約できるところはもっとある」と無駄遣いを認めた。
TMの運営は02年度以降、広告代理店が一般競争入札で受注している。資料は03年12月の岐阜市での開催分。落札した代理店は内閣府の基準に基づき、到着した閣僚を会場に案内する費用(会場における送迎等)として、スタッフ1人当たり「4万円」、エレベーターのボタンを押す係(エレベーター手動)は1人「1万5000円」を請求した。
空港・駅での閣僚送迎等 15,000円
会場における送迎等 40,000円
エレベーター手動 15,000円
エレベーターから控室までの誘導 5,000円
内閣府との事前調整 428,000円
石原都知事 四男が公費で海外出張
(毎日新聞 11月22日)
東京都が若手芸術家育成を目的に取り組む文化振興事業に、石原慎太郎知事の画家の四男(40)がかかわり、公費で海外出張をしていたことが22日、共産党都議団の調査で分かった。この事業は「トーキョーワンダーサイト事業」で、石原知事の肝いりで01年度から始まり、作品発表や制作のため3カ所の施設を設けた。当初は都職員らでつくる任意団体が運営したが、今年度から都の外郭団体が事業主体となった。事業費のほとんどは当初から都の補助金で、今年度の補助金は4億7000万円。共産党の調査や都によると、四男は03年3月の1カ月間、任意団体の委嘱で事業への助言を行う委員を務め、同月18〜26日に調査として欧州の芸術祭などを視察した。旅費や宿泊費など約55万円は任意団体が支出した。共産党は「トップダウンで始めた事業に四男を深く関与させているのは都政の私物化だ」と批判。都生活文化局は「事業の円滑な遂行のため、若手芸術家として活動する四男を登用した」と説明している。
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手続き踏んでいる、石原知事反論(朝日新聞 11月24日)
東京都の石原慎太郎知事の四男(40)が、都の文化事業に関連して公費で欧州出張していた問題で、石原知事は24日の記者会見で、「ちゃんとした手続きを踏んでいる。息子でありながら、立派な芸術家ですよ。その人間の人格を踏まえて仕事をしてもらっている」と、問題はないとの見方を示した。その上で、「余人をもって代え難かったら、どんな人間でも使いますよ」と語った。都によると、四男は03年3月、都の文化行政担当の参与や都職員らと、石原知事脚本の「能オペラ」の準備のためにドイツやフランスに出張、四男の航空運賃や宿泊費計55万円を都が全額負担した。四男は同月、1カ月間だけ都の外部委員の嘱託を受けていた。石原知事は四男の出張理由を、「(四男がオペラの)音楽家と一番親しいから、(外部委員を)委嘱して(欧州に)行ったんでしょう」と説明。「息子の名誉のために言いますけど、一応の絵描きだし、キャリアがあって、いろんな人を知ってるから。そういう芸術家というのはそうたくさんいないからね。そういう点で私は便利に使ってます、都としても」と、四男の起用は妥当だと主張した。都によると、24日午後までに知事本人の海外出張や四男の起用について「税の私物化だ」といった批判が約320件寄せられている。
=瓜田に履を納れず、李下に冠を整さずは公職にある人間の基本的な了見だと思うのだが。江戸っ子気質のねえ都知事だ。=
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石原都知事 超豪華ギャラリーのムダ遣い(ゲンダイネット 11月15日)
石原慎太郎都知事に新たな疑惑が噴出している。知事の肝いりで始まった美術ギャラリー「ワンダーサイト」(都内3カ所)の不可解な予算増額とデタラメな運営実態が都議会で問題になっているのだ。ワンダーサイトの第1号は01年12月、文京区本郷にオープン。続いて、カフェを併設したワンダーサイト渋谷、今月7日には宿泊施設を兼ねたワンダーサイト青山がオープンした。「若手芸術家の育成を図る」というのが大義名分だが、疑惑の第1は人事だ。館長である建築家の今村有策氏は石原知事が選任した都の参与。おまけに知事の四男で画家の石原延啓氏とは仲良し関係だ。そして副館長は今村夫人だから「ファミリー支配だ」と非難が集中している。
第2の疑惑は予算だ。「都の文化施設は独立採算制が求められ、例えば『東京都現代美術館』はこの5年間で予算が3割もカットされています。それなのにワンダーサイトへの補助金は増えていて、今年度は4億7000万円。前年度の9000万円に比べ、異常な伸びです。それで事業収入は1200万円しかない。独立採算制は無視です」(都関係者)
実際、イベント開催中の渋谷館に行ってみると、繁華街にもかかわらず閑散としていた。ビルの3〜5階を占める青山館は、1階のインターホン越しに「イベント期間以外は一般公開できない」と門前払いだ。館長夫妻は渋谷や本郷の施設にはイベント中もほとんど顔を出さないという。
5億円近い補助金は何に使われているのか。担当の都生活文化局はこう答える。「今年度は青山の施設を借りるための敷金と礼金が含まれています。家賃は年間7000万円。2フロアは海外からの芸術家などのための宿泊施設(16室)です。宿泊客ですか? オープンしたばかりなので、まだ部屋は埋まっていません」石原知事は定例会見で「トップダウンですよ、私が考えついたんだからね。大したお金はかからないし、廃物利用でね」なんて言っているが、廃物利用に5億円とは太っ腹だ。
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石原都知事、規定超す宿泊費(朝日新聞 11月15日)
東京都の石原慎太郎知事が海外出張の際、都条例の規定を大幅に超過する高級ホテルやクルーザーに宿泊し、衆院議員時代からの秘書も、飛行機は知事と同じファーストクラスに格上げしていたことが15日、共産党都議団の調査で分かった。石原都知事の規定額は総理大臣と同額だが、それを超えていた。神奈川、埼玉、千葉の各知事はそれより下のランクで、いずれも「規定額を超えたことはない」という。石原都知事はこれまでに計19回の海外出張をしており、共産党の調査では、記録が残っている過去5年の15回分で、同行職員分も合わせて出張費の総額は約2億4350万円に及んだ。同党はこのうち6回について、情報公開請求で詳細な記録を入手し、公表した。
都知事の宿泊費や交通費、日当は48年制定の都条例で定められている。「国家公務員等の旅費に関する法律」に準じており、総理や最高裁長官と同額だ。例えばロンドンやワシントンなど大都市では1泊4万200円。だが、詳細な記録のある6回の出張では、石原知事の宿泊費は規定の3.3〜1.6倍だった。
01年9月のワシントン出張では、1泊26万3000円〜13万1500円のホテルに泊まり、同6月のガラパゴス諸島への出張では大型クルーザーを5日間借り切り、1泊あたり13万1000円だった。
6回の出張にはいずれも特別秘書が随行し、5回は知事と同じファーストクラスを利用。都の規定では、知事はファーストクラスだが、特別秘書はビジネスクラス。今年5月のロンドン出張では、格上げの理由を「知事と機内で打ち合わせを行う必要がある」とし、航空運賃は規定を約80万円超える167万5700円だった。
また、5回の出張では大手通訳会社と随意契約し、通訳が日本から同行している。うち4回の理由書には、「知事自身が発言を無意識に省略あるいは割愛した場合に、必要に応じて都政の現状や知事の従前の発言を踏まえて適宜補足するという高度な技術が不可欠」と書かれていた。
石原知事はこの日、「何も豪勢な旅行をしようと行っているのではなくて仕事だから。(出張費の使い方は)知事が差配することではない。規定はよく知らないし、それからはずれているなら直さなければいけないと思う」などと語った。