NO.127
2004年 3月 5日
アクセス教育情報センター
目次
学校情報 |
入試情報 | 教育情報 | 教育情報 | その他 |
東京農大一高
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04年入試の特徴 | 土曜講習をやりやすく | 習熟度別授業 | 寄稿 無知な父母へのメッセージ |
学校情報
東京農大一高 中学開設へ
3月4日に東京都に対して中学の設立認可を申請。
05年4月開校で募集人数は男女100名の予定。
入試情報
04年入試の特徴
1 続く応募者増・・首都圏受験生は43700名。受験率は15%へ。
2 千葉・埼玉地区の応募者増・・神奈川地区は低迷。
3 国立附属の応募者増・・背に腹は代えられない。
4 有名校志向・伝統校回帰・・中身より名前。
5 厳しかった後半の入試・・あまくみていた受験生にはつらい入試に。
6 続く午後入試の応募者増・・午後は増えても午前を減らす学校も。
7 入試問題の変化がより鮮明に・・思考力・表現力は国語から。
8 二極化の進行・・学校も親も生徒も塾も。
9 入試応援のパフォーマンス化・・入試応援も塾の名前を宣伝する場に。
首都圏受験生推移等の表はこちらからご覧ください。
教育情報
土曜講習をやりやすく 公立高校の勤務規則改正、埼玉県
(読売新聞 2月18日)
埼玉県教育局は、土曜日などに補習授業をする公立高校の教員が代休を取りやすいように、新年度から勤務規則を改正する。
埼玉県公立高等学校長協会の昨年8月の調査では、県内162の公立高校のうち、恒常的に土曜日に補習を行っていたのは進学校を中心に全体の約8分の1。しかし、「実際は半分ぐらいの学校で何らかの補習が行われているのでは」(県立高校長)というのが現場の実感だという。背景にあるのは、2002年4月の学校完全週5日制移行による授業時間不足と、これに伴う学力低下への懸念だ。学則で独自に休業日を決定できるため、6日制を維持する学校も少なくない私学への対抗策という意味合いもうかがえる。
しかし、校長から休日勤務を命じられたとしても、過密化した時間割をこなす先生たちにしてみれば、平日に代休は取りにくい。代休取得のための制度が未整備だったため、結果として、土曜補習は、校長の休日出勤命令に基づかない「ボランティア出勤」、代休なしの「サービス出勤」という形が慣例化していたという。
このため、これまで休日の出勤日の前後合わせて12週以内とされていた代休取得期間を同20週間に延長した。これによって、出勤するとはいえ授業がない夏休みなどに休日を振り替えることを促そうというのが今回の改正の骨子だ。学校長に対しては、休日補習を勤務として積極的に認定するように求めることにしている。
5日制実施に伴う土曜補習の広がりを受けて、先生のボランティア出勤への救済策を模索する動きは、全国的にも広がりを見せている。保護者や中学生の見学を受け入れる「公開授業」を土曜日に実施する東京都立の一部高校では、これを先生たちの勤務として認定。岡山県では補習授業をPTA主催とし、先生にはPTAが謝礼を払う形にして努力に報いているという。
埼玉方式についても、東京都、大阪府、青森県の各教委が「同様の制度を検討したい」としており、土曜補習の勤務認定は広がる可能性がある。埼玉県の稲葉喜徳教育長は「土曜を勤務日にすることで、補習や就職支援のためのガイダンスがやりやすくなり、各校ごとに工夫した週末を設計することが可能となる」と期待を口にし、「5日制の趣旨を損なうものではない」と強調する。文部科学省も、「休業日の補習利用は5日制の想定範囲」とする。
こうした見解について、著書「分数ができない大学生」で学力低下論争に火を付けた京都大学経済研究所の西村和雄教授も、「現場の教員はいかに授業時間が足りないかをよく知っている。文科省の姿勢は、5日制のひずみを修正しようとするいい兆しだ」と評価する。
5日制の導入には、すべてを学校が抱え込むことをやめようという狙いがあった。そうした本来の理想と、事実上の授業時間の不足という現実との間での、学校現場の苦悩の表れと見ることもできるだろう。
受験料肩代わり 仙台育英高
(河北新報 2月21日)
仙台育英高(仙台市宮城野区)の3年生が、提携先の東北文化学園大(青葉区)の新年度の入試を少なくとも100人規模で大量受験したことが20日、分かった。一定数の受験生は推薦などで既に別の進学先が決まっていて、複数の生徒は「進学取り消しになるのが嫌で指示に従った」と同高の意向による受験だったと証言。受験料についても「1人3万円でいったん各自で負担するが、受験後に返却される」と学校持ちだったことを話している。
大量受験は両学校法人が業務提携した2001年の翌年から行われているとみられ、学園大の佐々木晴夫副学長は「提携校なので多くの生徒が受けてくれるよう頼んでいる」と受験依頼を認めた。ただ、「進学先の決まった生徒の受験までは頼んでおらず、受験料も大学側は負担していない」と述べている。
文部科学省は「(大量受験に)仮に大学の受験倍率を上げる意図などがあるとすれば社会通念上、許されない」と学校側から事情を聴く考えを示している。
入試は5日で、育英高生は多賀城市の同高多賀城校舎などで受験した。同高は受験者数を明らかにしていないが、多賀城試験場の受験者は他校生を含め249人で、「大半が育英高生だった」(関係者)という。関係者によると、生徒らは昨年12月ごろ、同高の説明会を受け、「学力低下を防ぐ」として学園大の受験を促され、その後、入学願書が手元に届いた。
生徒が願書を出して受験料を支払うと、同高が「大学入試推薦委員会 加藤晃孝(同高教頭)」名で「平成16年2月5日 東北文化学園大学受験料」として3万円の「預り証」を発行。受験後に、試験を受けた証明をすると、引き換えに3万円が戻るという。生徒には「大学受験上の注意点」と題する書面も配布され、「必ず受験してください。途中で帰った場合は受験していないとみなし、後日、整理(返)できなくなります」「出校日や卒業式に整理(返)を行いますので願書を提出した場所に来てください。10―11時にお渡しできます。印鑑を持参してください」と記載されている。
宮城県私学文書課は「事実だとすれば道義的に問題だ」としている。育英高の加藤教頭は「(取材の)情報源を明かさない限り、取材には応じない」と話している。
学園大は運営法人の堀田正一郎前理事長が脱税の疑いで1月、仙台国税局の強制調査(査察)を受け、理事長を辞任。学園大の毛利平学長が後任理事長に就いた。
早実初等部寄付金問題 01年、02年には総長自ら「7倍寄付金」要求
(毎日新聞 2月23日)
学校法人早稲田実業学校(理事長・白井克彦早大総長、東京都)初等部が昨年秋の入試面接で募集要項の7倍の寄付金を要求していた問題で、入試初年度の01年11月、当時の早稲田大学総長で学校法人理事長だった奥島孝康氏(64)が、面接で自ら寄付金を要求していたことが関係者の話で分かった。奥島氏は総長退任後の02年と昨年の面接にも出席し、350万円の寄付金を求めていた。前総長の関与が明らかになったのは初めて。
早実初等部の依田好照校長は、問題が発覚した先月の記者会見で、「1回目は、面接では(寄付金を要求した事実は)ありません」と述べていたが、事実と異なる可能性が強まった。
初等部で初の入試面接(2次試験)があったのは01年11月12〜15日。受験した保護者らによると、3人1組の面接官が2班に分かれ、1次試験にパスした子供とその保護者を対象に実施した。
その際、奥島氏は面接官の中央に座り、10〜15分間の面接の最後に父親に対して「新しい学校ですので、300万円ぐらいのものをいただければ運営が助かります」「入学されれば寄付はお願いできますね」などと確認を求めたという。
複数の関係者は「面接会場で、しかも総長から寄付金を要求されたことに保護者はみんな驚いていた」「初等部の校長や教頭だけでなく経営側の責任者まで面接に出てきたこと自体、おかしいと思った」と証言する。
翌02年、奥島氏は任期満了で総長を退任した直後の11月11〜14日の面接にも4人1組の面接官の1人として出席。前年同様、最後に「わが校は新しい学校を建て、借金で成り立っています。ご寄付を皆様から350万円いただくと成り立つのですが、いかがですか」などと要求したという。
毎日新聞は初等部を通じて奥島氏に取材を申し込んだが、溝渕日出世・初等部事務部長が「1月の会見で説明しており、これ以上特に申し上げることはない。都から指摘された点については厳粛に受け止め、今後改善していきたい」と文書で回答した。
早実はこの問題で先月、都から経常費補助金(私学助成)の2割にあたる1億242万円の減額処分を受けている。
関連記事
早実初等部寄付金 子供は人質、断れぬ(毎日新聞 2月24日)
開校2年目の学校法人早稲田実業学校初等部(依田好照校長、東京都国分寺市)が昨秋の入試面接で、募集要項の7倍にあたる350万円の寄付金を保護者に要求していた問題は、「お受験」とカネをめぐる不透明さを浮かび上がらせた。私学助成を受けながら、入試にからめて高額の寄付を求めるやり方に批判は強いが、一方で「大学まで進めるなら安いもの」と受け止める親が少なくないのも事実だ。「受験はフェアであるべし」は幻想なのか。
4日間続く面接の初日となった昨年11月10日。校舎の一室で、真ん中に受験生の子供を挟んで三角形の後方に両親が座る。目の前の長机には、面接官4人が並んでいた。
「電車の中から何が見えましたか」。「お父さんとお母さんのどちらが怖いですか」。子供への質問が続いた後、両親への質問が始まる。「お子さんが大きないも虫やミミズを飼いたいと言ったらどうなさいますか」。こ
の間12、13分。最後に父親に向かって口を開いたのは、学校法人理事の奥島孝康・早稲田大前総長だった。「新設校ですので、寄付金のことはお分かりですね。350万円、ご協力いただけますか」
都が問題視したのは(1)面接で寄付金の話をしたことは合否に直結すると取られかねない(2)募集要項と大きく食い違っているうえ、保護者負担の軽減という私学助成の趣旨に反しており、高額すぎる――の2点だ。
記者会見した依田校長は「合否に関係あるかのような誤解を生んだとすれば、率直に反省しなければならない」と述べたが、寄付については「ぼったくり的にお願いしたわけではない。賛同するかしないかは任意だ。慎重さを欠いていたと思うが、それに値する教育を私たちもやっている」と不満をのぞかせた。
これに対し、都の幹部は「会見でも、額の問題ではないとか卒業までのコストを考えてほしいとか、論外だ。都の聴取にも校長が出てくるばかりで、法人としての責任をどう考えているのか」と不快感を隠さない。
ある進学塾の教師によれば、面接で300万〜350万円の寄付金を求められるという話は入試初年度の01年秋から保護者の間に広まっており、「寄付金の依頼には『できる限りのことをさせていただきますと答えて下さい。合格してしまえば払わなくて結構です』と指導していた」と明かす。
昨秋、子供が早実を受験した父親は、面接での「沈黙の瞬間」を忘れないという。
面接官「寄付金のことは何かお聞きになっていませんか」
父親「いえ、何も」
両者ともしばらく黙り込んだ。父親は「寄付しますと言わせたいんだな」と感じた。しびれを切らしたように口を開いたのは面接官だった。「350万円、お支払いいただけますか」
父親は「内情を細かく話して、これだけ困っているからご協力いただければというなら分かる。でも片手で私学助成をもらっておきながら、片手で350万円でしょ。会見で『私学は大変なんです』と繰り返しても、言い訳にしか聞こえませんよ」と怒る。父親は席をけって出たかったが我慢した。「子供は人質なんです。『できるだけ
のことはします』と答えるしかないでしょう」と振り返る。
◇背景に受験コスト−−抵抗なく払う親も
早実が初等部経営に乗り出したのは2002年4月。関係者によると、学校の用地・建物取得の借入金は25億円に上ったが、初等部を6学年でスタートさせ、授業料や寄付金収入に私学助成を加えれば経営は安定すると見込んでいたという。
初等部への私学助成金は02年度が4452万円、03年度は6990万円。児童数が増えれば助成は増えていく。6学年で開校できていれば、1億円を超えたとみられる。ところが、周辺校の反対などにあって、計画は頓挫する。早大関係者は言う。「あれが痛かった。6学年が3学年に後退し、最終的に1学年になった。早稲田大学は別法人で助成も別だ。寄付に頼るしかなかった」
都私学行政課によれば、6学年一括で新設された小学校は過去にはない。複数の進学塾は「6学年分の教員をどこから引き抜いてくるのかと思った。カネで引き抜くようなことをすれば大変なことになる。実現は無理だろうと思った」と見通しの甘さを指摘する。
都内の私立小は51校。寄付金や学校債を募集しているのは29校(4校は両方募集)ある。04年度の1人当たりの平均額は寄付金で21万7083円、学校債で11万2500円。早実は、募集要項通りの「1口10万円、5口以上」でもトップクラスで、初年度納付金を合わせた合計額では1位だ。
しかし、早実に子供が合格したある母親は「最新の設備にかかったコストを考えれば、援助はおかしくないし、もっと高額な寄付を求める学校もある」と同情的だ。別の私立に子供が通う母親も「入りたいと思えばそのくらいの額は払うし、お受験を考えている親の大半にはそれほど怒りはないと思う」と話す。
塾関係者はこうした背景に「根強い学歴信仰とコスト意識がある」と指摘する。都によれば、私立小の初年度納付金(平均)は、00年度の87万8724円から04年度は92万296円にアップし、私立中のそれを上回る。一方、塾費用など私立小受験のコストは幼稚園年中組からの2年間で約300万円なのに対し、中学受験の準
備は通常小4から始めるため、1年間余分に費用がかかる。
受験のベテラン塾教師は「まだまだ学歴社会だと感じる。エスカレーター式で大学まで行ける慶応や早稲田のブランド信仰がはびこるのも仕方がない」とみる。ただ、ある有名私立小の教頭は今回の問題を深刻に受け止めている。「不況、リストラの時代に、常識外れの寄付金の額を示して、『よい教育には金がかかる』と言っ
てのける感覚は容認できない。私学全体に与えたダメージは計り知れない」。
教育を語る資格(毎日新聞 3月1日)
さいたま市の住宅街。午前0時過ぎまで約5時間、私と後輩記者はあるじの帰宅を待ち続けた。
相手は早稲田大学前総長の奥島孝康氏。学校法人早稲田実業学校初等部が募集要項の7倍に当たる寄付金を保護者に求めていた問題の取材だった。総長と法人理事長を兼ねていた01年11月の入試面接で自ら寄付金を要求した真意が聞きたかった。
深夜に自宅前で待ち構える失礼は承知している。それでも教育界に大きな影響を持つ立場の人には説明責任があると考えた。かつて組織の不祥事でトップを取材した経験から、堂々と対応していただけると期待していた。ところが、「早実?広報を通して」の一点張り。犬を追い払うように左手を振り、玄関に入った。広報を通しても結局、誠意ある回答はなかった。
これが早稲田の頂点に立った人かと思うと、がっかりした。「自宅から通える国公立大しかやれない」という家庭事情であきらめたが、私もワセダにあこがれた時期があった。
奥島氏は文部科学相の諮問機関「中央教育審議会」の委員も務める。問題には口を閉ざしながら、教育を語る資格はあるのだろうか。
早実寄付金問題 奥島前総長、違反は承知(毎日新聞 3月5日)
学校法人早稲田実業学校(理事長・白井克彦早大総長、東京都)初等部が入試初年度の01年11月から毎年、募集要項の6〜7倍の寄付金を面接で要求していた問題で、開校時の早稲田大総長で学校法人理事長だった奥島孝康氏(64)が4日、毎日新聞のインタビューに初めて応じた。奥島氏は自ら主導し、寄付依頼は入学手続き後にするという行政の指導に反することを知りながら、要求を続けていたことを認めたうえで、「道徳的に恥ずかしいことをしたとは思っていない」と語った。
一問一答は次の通り。
――募集要項と異なる寄付を、自ら面接で要求したことをどう思うか。
奥島氏 (面接時という)時期の問題としてご指摘を受けたことは、不手際で不適当だったと考えている。
――経営責任者の理事長が面接の場に出るのはおかしくないか。
奥島氏 そうは思いません。私立学校で面接官として誰が出るかは、その学校の判断だ。
――なぜ、面接の場で要求したのか。
奥島氏 我々は透明で公平で、裏は一切ない。
――面接の際に寄付を求めることを理事会で確認していたのか。
奥島氏 そこまで決めていないが、350万円程度の寄付をお願いすることを決めた。最初(初年度)は300万円。(学校建設のための)借入金の返済で、その程度をお願いすべきだと計算した。300万円では十分でないので、2年目から350万円にした。
――要項と異なる寄付金を要求することに、学内で意見はなかったか。
奥島氏 なかった。寄付の話は入学手続き後、という通達がなければ別に問題はなかった。通達後も続けたのは反省している。
――総長自ら寄付金を要求するのは、受験する側に入学条件と受け止められても仕方がない。
奥島氏 誰かを選んで言ったのではなく、皆さんに申し上げた。
――なぜ募集要項に300万なり350万円と書かなかったのか。
奥島氏 各校も実際に要求する金を要項に明示しているとは思わない。
――1年目に300万円を面接で要求するということは、どういう手順で決めたのか。
奥島氏 言いましょうということになったが、言ったのは僕くらいだった。問題になるなら、最初のときから問題になる、と覚悟して言ってきた。
――多額の寄付金集めは誰のイニシアチブか。
奥島氏 僕のイニシアチブです。借金をどうやって返していくか考えた。
――借金の額は。
奥島氏 30億円に近い額。小学校の借金を中高にかぶせるわけにはいかんというのが、僕の考えです。受益者負担でやるべきだ。
――責任をどう取るか。
奥島氏 僕の責任は、集めにくくなった寄付をどう集めるのかを考えなければならない。責任を取れというなら、いつでも喜んで取ります。大学の募金委員長も法科大学院協会(の理事長)も何でも辞めるが、そういう声はない。道徳的に恥ずかしいとは思わない。
――通達違反は故意ではないか。
奥島氏 あえて犯そうとしてやったことではない。僕なりの法律家としての解釈では過失責任ですよ。通達上、問題があるのかなということをまったく考えなかったわけではない。
◇当初の開校計画頓挫が背景に
東京都や私学関係者によると、奥島前総長が自ら多額の寄付金集めに走った背景には、学校法人早稲田実業学校初等部の当初の開校計画が頓挫した事情がある。
早実は02年4月に初等部を開校するのに合わせ、東京都新宿区にあった中・高等部も初等部と同じ東京都国分寺市に移転し、共学化した。これに伴う用地・建物取得の借入金は約30億円に膨らんだ。当初の計画では、初等部を6学年一括で募集し、授業料や寄付金収入に私学助成を加えて、借入金を順調に返済できると考えていた。ところが、生徒を引き抜かれる周辺の私立小学校の反対などがあり、計画を変更して1年生の募集だけでスタートせざるを得なかった。早実関係者は「これで寄付金に頼らざるを得なくなった」と言う。
奥島氏はこの点について、インタビューで「(私学関係者が委員に多い)東京都の私学審議会が認めてくれなかった」と述べた。しかし、都私学部によれば、6学年一括での募集が認められたケースはなく、私学関係者は「6年や3年で募集しようとするのは、金もうけ以外のなにものでもない」と指摘する。
=早稲田大学のトップにいた人が自分の行ったことの原因を他(私学審議会)に求めようとする姿勢は情けない。3月1日の記事がキッカケとなってイヤイヤ応じたインタビューなのだろうが、在野精神を標榜する早稲田のトップの発言に潔さが少しも感じられないのは残念だ。
首都圏では早実に続き私立小学校の開設が続いたが、早実のように1年生からしか募集しないのに寄付金を要求しない学校もある。もっとも小中高の12年一貫を掲げながら初年度から1年生から5年生まで募集した学校もあり、学校の姿勢に疑問符のつく学校もある。=
都立高校で入試スタート 学区全廃で進学校は高競争率に
(朝日新聞2月24日)
東京の都立高校の一般入試が24日、実施された。学校再編、生徒による授業評価など、石原慎太郎知事のもとで進められてきた高校改革。昨年から学区制を全廃した入試もその柱の一つで、制度改編2年目の今年も、進学校は他地域からの出願で高い競争率となった。千代田区永田町の日比谷高校。校門前には学習塾の講師や職員らが陣取り、受験に臨む塾生に声をかけて励ました。今年は254人の募集定員に対し、776人が出願。競争率は都立の普通科で最高の3.06倍となった。
「東大・東工大・一橋大・京都大の合格者20名以上」「早大・慶大・上智大100名以上」。重点目標としてこんな「マニフェスト」を掲げている同校の場合、旧他学区からの出願が男子で80.6%、女子は81.4%に達した。
首都圏では、26日に一般入試がある埼玉県も今年から学区制を撤廃。来年の入試からは神奈川県でも学区がなくなる予定だ。
習熟度別授業 大阪市の全小中学校で
(毎日EduMail 2月25日)
学習の理解度に応じた「習熟度別少人数授業」が、2004年度から3年計画で大阪市のすべての市立小・中学校で導入されることになった。対象は、小学5、6年生の国語と算数▽中学2、3年生の国語、数学、英語。児童・生徒の希望などをもとにグループ分けする。非行から立ち直り、猛勉強して弁護士になった大平光代助役(昨年12月就任)の肝いり事業だ。大都市の自治体が習熟度別授業を全校に導入する例はないという。
初年度は非常勤講師約120人分の人件費4億9000万円を計上。小学校は298校中約100校、中学は129校のうち約半数で実施する。
小学校では学年ごとに学級数より一つ多いグループ、中学では学級ごとに二つのグループに分ける。グループは固定せず、得意・不得意に応じて単元ごとにグループを移ることもできる。
導入の意義について、教育担当の大平助役は「自分に合った授業で楽しいと思えるようになれば、他の授業のやる気にもつながる」と説明。自らの体験からも「最初から司法試験を受けていたら、今でも合格していなかった」。宅地建物取引業、行政書士と段階を踏んだことで、「分かった、できたという自信が生まれ、次に挑戦する力になった」と振り返った。
「子供の間に優劣をつけるのでは」との批判も予想されるが、大平助役は「成績で振り分ける能力別ではない」としたうえで、「どういう道に進もうと、基礎学力は必要。学習意欲が芽生える時期はそれぞれ違い、遅くになってからしか芽生えない子は、今は切り捨てられている。コケた時に引き上げることが必要だ」と強調した。
授業料補助を増額 県内の私立高生に、埼玉県
(毎日EduMail 3月2日)
埼玉県は新年度予算に、県内の私立高校に通う生徒の保護者への授業料補助を大幅に増額するための事業費を盛り込んだ。保護者からの要望を背景にしたものだが、対象外となる県外の私立高校へ通う生徒との格差が広がる結果となった。県議会からは「同じ県民なのに、不公平ではないのか」という指摘も出ている。
現在、県は県内の私立高校に通学する生徒の保護者に対し、授業料のうち年間2万5000円を補助している。さらに、生徒、保護者とも県内在住の場合は、所得に応じて補助を厚くしている。
新年度予算では、現行の補助額20万円の「家計急変世帯」や、同18万円の「住民税非課税世帯」、同15万7000円の「4人家族で年収約520万円以下の世帯」を一律34万円に増額することにした。県学事課によると34万円は、県内私立高校の平均授業料にあたるという。
授業料の補助については、県私立学校教職員組合連合が昨年10月に県内の私立高校生の保護者を対象に実施したアンケートで、約7割が「所得基準を緩め、対象者を増やしてほしい」と回答するなど、増額の要望が強まっていた。県議会も昨年12月、私立高校生の父母への支援を求める決議を採択している。
一方、県教委の調べでは昨春、県内の中学を卒業した5161人が東京都の私立高校へ、1027人が他県の私立高校へ進学している。東京都は、都民のみを授業料補助の対象としており、県内から都内の私立高校へ通う生徒の家庭は保護者のリストラや離婚などで家計が急変しても、補助は受けられない仕組みになっている。 開会中の県議会では、松本安弘氏(地方主権の会)が「県内の私学に通学する県民と県外の私学に通学する県民に対して、ここまで著しい格差を設ける合理的理由を問いたい」と質問した。上田清司知事は「今後の課題であると強く認識はしている。財政状況を考え、引き続き検討したい」と答えた。
県学事課は県外の私立高校へ通う生徒を補助対象外とすることについて、「制度には、生徒の就学支援とともに、県内私学の振興という理由も含まれているためだ」と説明している。
=県外の私立高校に通う生徒の保護者も同じ税金を払っているのに。さらに私立高校だけでなく私立中学、私立小学校に通う生徒の授業料補助も検討すべき。=
塾・通信教育も中高一貫
進学目的の塾や通信教育に、中学入学から高校卒業までの中高一貫コースが相次いで登場している。私立校に加えて公立校にも中高一貫校が増えており、難関大学を目指す父母や生徒の間で一貫教育への関心が高まっているため。大学受験に備えて、履修速度を速めている。
ベネッセコーポレーションは4月から、通信教育「進研ゼミ」に中高一貫講座を新設する。今春、中高一貫教育の私立中学校に入学する学生が対象。中学3年間の履修内容を2年間で終えるカリキュラムを組み、中学3年生から高校の単元に進む。ベネッセによると、毎年7万8千人が中高一貫教育システムの私立中学校に入学する。新講座は「中学から始める大学受験講座」と銘打ち、ダイレクトメール中心に募集、数年以内に七千〜八千人の新規受講生獲得を目指す。静岡を中心に展開する秀英予備校も4月から静岡県内の3校舎で中高一貫コースを始める。同社の中学コースの受講生のなかから生徒を選抜し本人や父母が同意すれば新コースに移る。教科は英語と数学。学校の学習ペースにかかわらず高校2年生までに高校で習う内容は終え、3年時は受験対策に特化する。駿台予備学校グループの駿台教育文化センター(東京・千代田、大滝満夫社長)は2003年度から、小中学生部門である駿台リンデンスクールで中高一貫コースを本格的に始めた。中学3年生で受ける模擬試験の問題は大学予備校の講師が作成。大学受験を視野に入れた内容にする。
中高一貫教育システムを採用する学校は今後も増える見通しで、業界内で同様のコースを導入する動きが続きそうだ。
=中学受験を終えて中高一貫校に進学したら、学校の授業の予習、復習を中心とした自分の学習スタイルをしっかり作るべき。塾や通信教育に頼たり、余分なことをする必要はない。そんなことに時間を使わずクラブ活動や生徒会活動に時間を割いて欲しい。=
その他
寄稿 無知な父母へのメッセージ
良い私学と悪い私学の見極め方 21世紀教育開発研究所 内田正信
第四回 私立中等教育への期待
私立中等教育の歩み
中等教育を担う私立学校には、明治期に創立された100年以上の伝統をもつ学校から、最近の私学ブームのなかで誕生した学校もあります。教育は社会の構造とその変化に大きく影響されます。特に、私立学校はいつの時代にも経営問題がついてまわるので、自らの工夫や努力によって独自の教育を展開して父母の信頼に応えなければ、その存在が失われてしまいます。
戦前は、教育においても官尊民卑の考え方が支配的であって、学校教育の主流は国立・公立学校で占められ、私立学校は補完的な存在にすぎませんでした。現在でも大都市圏以外の地方では、この考え方が残っています。戦後においては、二回のベビーブームによる子供の急増と急減、高度経済成長期の進学率の急上昇、文部省のたびかさなる教育改革、バブル経済崩壊後の長期不況などさまざまな社会事象のなかで、多くの私学がその障害を乗り越えて、今日に至っています。1950年代の私学は、生徒募集難の問題が深刻で、入学者の少ない学校は、休校や廃校になりました。さらに、第一次ベビーブーム後の生徒急減期においても、公立学校優先の時代で、私立中学は一時的に三分の一まで激減しました。国立・公立学校中心の体制が崩れ、私立中等教育が日本の学校教育の一方の担い手として脚光を浴びてきたのは、1985年頃からです。第二次ベビーブームに生まれた世代が中学受験を迎え、公立中学における校内暴力・いじめ・不登校などが社会問題化し、首都圏を中心に私立中学ブームが起こりました。中学募集を再開したり、中学からの募集人数を増
加したり、新設の学校が誕生したのもこの頃です。それはまた、臨時教育審議会(臨教審)の発足によって「第三の教育改革」が本格的に進行した頃になります。
2002年からの学校五日制や教育内容三割削減は、「第三の教育改革」の総仕上げです。これは、政府による公教育の放棄であり、日本の教育危機でもあります。二十一世紀を迎えた現時点で、今後の私立学校を考えてみたとき、私立学校への期待と責任は極めて大きくなってきたといえます。
ハード・イベント・ソフト
私立学校は、入学者がいないことには成立しません。そのため、ほとんどの私学がより多くの受験生、よりハイレベルの入学者の受け入れを目指して、広報・宣伝活動をします。これには、学校説明会のほかいろいろな方法がありますが、その内容は大きく三つの分野になります。ハードから始まりイベント・ソフトヘと時代と共に、アピールの仕方が変化してきました。
ハードとは、校舎や施設・設備です。冷暖房完備、視聴覚教室・LL教室・コンピューター教室等の特別教室や温水プール・講堂等の公立校にない施設・設備の宣伝です。このなかで、特におおきな役割を果たしのは、女子校を中心とした制服人気で、1985年頃から私学ブームのなかで多くの私学が制服を変更してきました。
イベントの中心は海外研修や海外への修学旅行です。首都圏の80%の私学がホームステイや現地の学校で学んだり、学校交流をしたりとさまざまなプログラムで実施しています。国際化の中で世界へ視野を広げたり、生きた英語学習の実践としてアピールされています。その他、体育祭や文化祭等の学校行事や学校独自の伝統的イベントをアピールする学校もあります。
ソフトとは、受け入れた生徒にどのような教育をして、どのような生徒を育てるかの教育そのものです。最近、多くの私学では、カリキュラムだけでなく、六ヶ年の教科ごとの教育内容と教育目標を明らかにしたシラバス(年間授業計画案)をつくる学校が多くなりました。シラバスのある学校は受験者が多く(シラバス人気)、これは、多くの父母が教育内容に関心を持っている現われかと思います。
今、私立中等教育への期待は、ハードでもイベントでもなく、六年間でどのような教育をしてくれるかの教育内容と教育実践です。これは、父母の当然の願いであり、教育主権者としての正当な要求です。
受験教育と人間教育
どんな教育をするかで、問題になるのは「受験教育」と「人間教育」です。日本の教育問題として、いつも批判の俎上に乗せられるのが「受験教育」です。これは、学歴社会の中で展開されてきた日本の教育の特徴とみなされてきたものへの批判です。「学歴社会の是正」とか「受験競争の緩和」が実現すれぱ、理想的な「人間教育」が実現するかのような「改革の気分」で進行しているのが「第三の教育改革」です。受験教育を安易に批判しても何ら日本の教育改革になりません。受験教育のどこがどのように悪いかを分析して、それを教育実践によって克服していくことが大切です。「受験教育」と「人間教育」が相対立するかのようにとらえる傾向がありますが、この二つは両立するものであり、両者を統一する実践が行われている学校が良い学校です。
私学の中には、みせかけだけの進学実績をあげるために、特進クラスを作ったり、義務教育段階の中学においても能力別学級編成をして進学の選手づくりをしている学校があります。また、大学受験に関係する教科(英語・国語・数学)の時間を極端に多くしたり、クラブ活動・生徒会活動や学校行事などを軽視する学校もみられます。あまり極端な受験体制に傾斜した学校では、そのひずみが、いじめ・不登校・退学者の増加になって現われることもあります。極端な進学体制をしいて進学実績をアピールする学校には良い学校はありません。どんな学校を選択するかは、前回にも触れたように、みせかけの進学実績をみるだけでなく、六年間でどのような教育が行われるかが大切です。
教育理念と教育目標
子供が私立中学に入学する親のアンケート調査によると、学校を希望する理由にはいろいろあります。交通
の便・校風・進学実績・学費・教育理念・大学付属などと。いわゆる良い学校とか受験生の多い人気校といわれる学校は進学実績が希望の上位になっています。教育理念が上位になっている学校は宗教的理念に基づいた学校が多く、他の学校は教育理念に代わって校風が上位になっている学校が多くなります。
中高一貫の中等教育の確立には、どんな生徒を育てるかの確固とした教育理念とそれを基にした学校全体の教育実践がなけれぱなりません。価値観が多様化している現代社会では、どんな生徒を育てるかはなかなか結論が得られない難しい問題です。これを考えるには、二つの観点があります。
第一に、私立学校にはどんな生徒を育てるかの建学の精神があります。建学の精神は学校設立者の教育理念であり、教育目標です。これがあるがゆえに、私立学校の「中高一貫教育」が成立・発展し、その成果が得られたのです。しかし、私学のなかには戦前に設立されたものが多く、建学の精神が人間のあり方として普遍性を持っているが、教育理念としては一般的過ぎて、戦前の価値観を引きずっているものもあり、建学の精神を具体化し実践するには難しいものもあります。
第二の観点は憲法と教育基本法です。戦後、日本の民主主義と平和を支えたのは、国の最高法規である憲法です。また、教育基本法では、明治憲法下の教育勅語に基づく教育方針を廃し、日本国憲法の精神にそって、個人の尊厳・真理と平和を希求する人間の育成などの新しい日本の教育目標を示しています。「第三の教育改革」は、偏狭なナショナリズムと一体となって、憲法と教育基本法を基にした「第二の教育改革」を否定する方向で進行しています。教育現場で噴出している不登校・いじめ・学級崩壊・少年犯罪などをあげ、その原困があたかも戦後の憲法と教育基本法にあるかのような議論がされることもあります。しかし、これは全く逆です。民主主義の理念こそ、人類普遍のモラルであり、倫理であり、道徳です。戦後、日本の教育で最大の欠陥は、公立・私立を問わず学校の場で民主主義の理念(考え方)が教育されてこなかったことです。
私立学校の今後は、二十一世紀の国際化に対応できる質の高い教育を提供して、父母の信頼に応えることが大切です。国際化に対応する人間の育成には、長い歴史の中で確立された人類普遍の原理である民主主義の精神を育むことです。「第二の教育改革」を実践している学校は良い学校であり、「第三の教育改革」を実践する学枚は悪い学校です。
中学入試と私学の役割 深見 仁
04年中学入試も受験者増に
埼玉・千葉では入試が、東京・神奈川でも出願が始まり、首都圏の04年中学入試もいよいよ本番となりました。出願状況を見ていると、昨秋の大手公開模試の参加者数から予想されていたように、今年も首都圏での受験生の増加は確実です。
受験生増加の要因として@2002年からの学校5日制と新学習指導要領の実施による公立での学力低下の不安。特に、実際に使う教科書が薄くなったことに保護者が驚いたこと。A難関大学進学実績における公私間格差。Bリストラや就職難の報道が多くなる中で、自分を守るのは自分しかない。そのためには自分(子供自身)に実力をつけておくことが必要だという認識が広まってきたこと。C公立中高一貫校の設立に際して中高一貫校のメリットが取り上げられていること。等があげられると思います。
学校にとって中学入試とは
受験生側にとって中学入試の魅力の一つに学校を選べるという点があります。少子化と経済状況の厳しさの増す中で、各学校は学校説明会のみでなく、オープンキャンパスや体験授業、個別相談会等を設定して学校の内容をアピールするようになりました。受験生の保護者は低学年から何校ものそうした行事に足を運び各校の内容を比較するなど、学校を選ぶ目が以前より厳しくなっています。それは学校側から見たときに、中学入試において選ばれる時代になっているということです。これまでは願書の受付から合格発表あるいは入学手続までの入試期間中が学校にとっての入試でしたが、今は学校の取り組み全てが入試に直結していると言ってもよいと思います。学校のさまざまな取り組みが毎年の応募者数として現れてくるわけです。その意味では、入学試験における応募者数は受験生の側(外部)から見た学校の評価でもあるわけです。ただし、学校側は説明会等を通じて学校の取り組みのどこを見て評価して欲しいかを訴えることにより、その評価の土俵を自分で作ることができるはずです、学校もサービス業だという言われ方をされるようになりましたが、学校の提供するサービスは、説明会でお土産を配ることや、生徒や受験生、その保護者に迎合することではないと思います。学校の方針、取り組みを伝えた上でそれに理解を示す保護者を作っていくこと、そして、それを納得して入学してきた生徒一人一人に目を配ることが私学のサービスではないかと思います。中学入試を通して学校の取り組みをあらためて見直すことができるか、その上で学校の取り組みをどう伝えていくのか、中学入試で問われているのは学校の総合力です。
学校の独自性と一体感
学校の総合力を表すものとして独自性と教職員の一体感があげられます。受験生にとって魅力ある学校かどうかは、その学校に独自性が感じられるかどうかにかかっていると思います。学校の独自性に大きくかかわってくるのが理念(建学の精神)の具現化です。それぞれの理念は各私学の存在の核であり、公立校が教育改革の流れの中で習熟度別授業、少人数クラス編成、通学区域の撤廃、公立中高一貫校等の導入により私学との外形的な違いがなくなってきたときに、公立と私学との違いを最終的に決定するものでもあります。それだけに、その学校の理念が生徒指導の中で具体的にどう生かされているのかが問われてくると思います。理念に基づいて6年間(あるいは10年間)かけてどんな人間作りを目指し、そのためにどんなことが行われているのか。そうした具体的な形となって現れている理念が受験生の保護者に伝えられたときに、受験生にとって魅力のある学校になるのだと思います。そのために、各学校は、これまでの取り組みが理念とどう結びついているのかを、あらためて見直されたらよいと思います。それぞれの取り組みが理念と結びつけて説明できれば、外面的には他校と同じ取り組みでも独自性のある取り組みと感じられるはずです。もちろん、独自性のある取り組みと言えるためにはある先生が個人的に行っているものではなく、学内で共有されている取り組みでなければなりません。また、新たな取り組みを行う場合も、その取り組みが学校の理念とどう結びつくのかを明確にしておくことが必要かと思います。他校のやっていることを取り入れても、上辺だけを真似するだけでは、その学校の魅力ある取り組みとして定着するのは難しいのではないでしょうか。さらに、学校の取り組みが理念に基づくものであったにしても、その取り組みが生徒にとって効果的なものなのかを常に見直していく必要があると思います。学校の中では今までこれでやってきたのだからという理由で保守的な、安定性を求める力が働きがちです。見直しをした上でこれまでのままでよしとするのと、見直しをせずにそのまま踏襲しているのとでは大きな違いがあると思います。
さらに、学校が活性化するためには教職員の方々に一体感があって生き生きしていることが必要です。学校説明会一つをとっても担当者だけで行っている学校と、教職員全員が何らかの形でかかわっている学校とでは説明会の雰囲気が違いますし、説明会資料も中身の濃いものが出来ています。学校が独自性を発揮するためにも、教職員の気持ちが、生徒のためにという点で、一つになっていることが必要だと思われます。
私学の役割
最近の公立校で行われている学校改革の根底にあるものは管理と競争であり、その中で公立の先生は一部の先生を除いて相当息苦しくなると思います。上司の目や評価を気にして先生が生き生きしていない学校で伸び伸びとした生徒を育てることができるとは思えません。また、教育課程審議会の前委員長が発言したように、公立の教育は1%の国家主義的なエリートと99%の大衆の育成に2分化されていこうとしています。その中で私学の役割は自分で考え自分で判断できる真のエリートと健全な市民の育成にあると思います。そのためにも、各私学は総合力の魅力で中学入試でもっと多くの受験生を引きつけて欲しいと思います。
広がる習熟度別学習
(毎日EduMail 3月5日)
大阪市教育委員会はこの4月から市立小中学校で習熟度別学習を導入することにした。2006年度までに全小中学校に広げるという。小学校は5、6年生で算数と国語、中学校は2、3年生で数学、国語、英語を対象とする。
理解の速い子と遅い子を分けて授業する習熟度別学習は、すでに各地で取り組まれており、文部科学省の03年5月時点での調査によると、小学校の74%、中学校の67%で実施している。この4月から実施される改定学習指導要領で「個に応じた教育」の一つとして習熟度別学習の勧めをしているため、実施校はさらに増えることだろう。かつて導入に慎重だった文科省が、最近、積極的に推進しはじめたのは「学力低下」批判への対応であり、「できる子はどんどん伸ばせ」という要求に応えるためである。しかし、習熟度別学習を実施している教員の間でも、「効果がある」「ない」と分かれているのが実情である。
佐藤学・東大大学院教授は岩波ブックレット「習熟度別指導の何が問題か」の中で、アメリカの研究者が行った習熟度別指導の調査結果を紹介して「成績上位者の一部には効果があることを認められたが、下位の生徒に有効性は認められない。むしろ疎外感を持ち、学習意欲がわかない。学力格差は拡大する傾向にあることが分かっている」と述べている。また、OECDの国際学力比較テスト(00年)の上位8カ国は「トラッキング」(能力や進路の差によってコースを振り分ける教育)を廃止または廃止を推進した国と佐藤教授は指摘している。文科省はこうしたデータを知っているのだろうか。
ある小学校の教員は「習熟度別学習は、あくまでも授業のサブであってメインではない。教員が子どもの課題を把握して、学校活動のさまざまな場面を活用して指導することが大事。教員と子どもの対話から、その子にとって有効な学習形態を選択させることです」と語っている。私も同感である。
文科省が昨年行った「学校教育に関する意識調査」によると、習熟度別学習によって「子どもの学力差が広がるのではないか」と「心配する」保護者は43%いるのに対して、「心配しない」保護者は少し多く49%だった。しかし、一方で「いろいろな考え方の子どもが一緒に学ぶ機会も大切」と思う保護者は89%と圧倒的に多かっ
た。この親の願いを大切にしたいと思う。
昔は、いろんな「違い」を持った子どもたちが一緒に学びながら、理解の遅い子には居残り勉強(補習)というのがあった。一方、教科で学んだことに触発されて深く広く学びたい子のために「理科クラブ」「社会科クラブ」など、教科に関連した部活動があった。学力でクラス分けするのではなく、こういう昔の方式を復活させてはどうだろうか。
雑学クラブ 2004年前期のご案内
今年の中学入試も無事終了し、新学年の授業がスタートしました。
アクセスでは中学入試に向けた授業を行っていますが、授業以外にもさまざまな体験をして欲しいと思い今年もアクセス雑学クラブを開設いたします。
3年生、4年生のうちにこんな体験をしておけたらというものを取り上げていきます。月1回のペースでの実施ですが、雑学クラブが子供たちの興味、関心を引き出すきっかけになれば幸いです。
雑学クラブ実施要項
対象 新3年生・新4年生。
定員 各回15名。
実施日 下記日程をご覧ください。
時間 各回とも10:00〜12:00。
申込 詳細はアクセスの教室窓口にお問い合わせください。(教室生の皆様にはあらためて教室からご案内をお渡しします)
日程 項目 会場
4月10日(土) 体験1 (新百合ヶ丘校)
4月24日(土) 体験1 (あざみ野校)
5月15日(土) 観察1 (新百合ヶ丘校)
5月29日(土) 観察1 (あざみ野校)
6月12日(土) 工作1 (新百合ヶ丘校)
6月19日(土) 工作1 (あざみ野校)
7月10日(土) 工作2 (新百合ヶ丘校)
7月17日(土) 工作2 (あざみ野校)
体験1・・ナイフの達人になる
観察1・・ミクロの世界をのぞく
工作1・・立体の秘密にせまる
工作2・・パズルで頭の体操
* 同じ項目の場合、内容は同じです。会場をご都合に合わせて選択してください。
* 保護者の方の見学も可能です。(ただし、立って見学していただく場合もあります。)
アクセス 新百合ヶ丘校(044−969−3969)
アクセス あざみ野校 (045−905−1871)
<問題>
【二】次の文の(ア)〜(ソ)に入る語を後から選び、11〜30の番号で答なさい。同じ番号を二度使ってはいけない。
「雪月花」という言葉がある。いずれも日本の風流を代表する景物である。雪害に悩まされた雪の深い地方では、雪が風流などとんでもないことだろうが、「雪月花」という言葉自体、(ア)を中心とした文化圏の風流の代表ということであるから問題はなかろう。日本は(イ)の変化のきわだった国であり、俳句という世界に比類のない文芸が生まれ育った。
俳句(ウ)という書物には、春、夏、秋、冬と新年の(エ)と、その解説、それぞれの(エ)を用いた俳句がのせられている。ちなみに俳句でただ花と言えば(オ)の花をさし、月と言えば(カ)の月をいう。
日本人は完全な美しさを賞する心と同時に、不完全なもの、すでに盛りを過ぎたものを重んじる心があるようだ。
古人も書いているが、例えば(オ)の花もその盛りだけを楽しむというのだけがいいというのではない。ほろほろと散る時もよし、ほとんど散ってしまって、わずかに梢に残っている花もなお俳句の材料になっている。
仲秋の(キ)は、旧暦八月(ク)日の月で、古来、月見る月の月と鑑賞されている。その(キ)が、空模様が悪くて見えないことを(ケ)月といい、特に(コ)が降ってまったく顔を出さないことを(コ)月という。このように(キ)が実際に見られなくてもそれなりの雰囲気を楽しんで、句の材料にするのが俳句というものである。
(サ)の花を買うとき、日本人はどちらかというと(シ)分咲きぐらいの花を選ぶが、西洋人は完全に開ききったものを好むという。
旧暦九月(ス)日の月を(ス)夜の月といい、仲秋の(キ)と同様、だんごや(セ)を供えて祭る。まだいびつな月で、これも、これから育とうとするものに期待しようという気持ちだろう。
月をたんなる(ソ)としか意識しないという欧米人とはずいぶん異なった考えということができよう。
11 七 12
十三 13 十五 14 季語
15 京都 16 東北 17
さくら 18 すみれ
19 ばら 20 すすき 21
無 22 雨
23 文学 24 歳時記 25
天体 26 宗教
27 秋 28 名月 29
冬 30 四季
【六】 次のア〜オに示したいくつかのことばから連想される動物は何か。それぞれ一つずつ、ひらがなで答えなさい。
ア、嫁入り ごん うどん 火
イ、皮算用 はやし おやじ
ウ、尾を踏む 下手な頭の刈り方 安直な学習書
エ、舌 小判 背 ひたい
オ、まね 知恵 芝居 すべり まわし
(04年慶應義塾中等部)
入試問題に挑戦第106回解答編
<問題>
エレベーターが地下1階から1階にあがってきました。1階では1人も降りず、3人乗り、2階では1人降り、誰も乗りませんでした。3階では1人降りましたが何人か乗り、人数が3階についたときの1.5倍になりました。4階では何人か降りましたが4人乗ったので、人数が4階についたときより2割減りました。5階では乗っている人の3分の1が降りただけで、6階では2人が乗っただけでした。7階についたとき乗っていたのは10人です。
このとき次の問いに答えなさい。
(1)3階では何人乗りましたか。また、4階では何人降りましたか。
(2)地下1階から1階にあがってきたとき、エレベーターに乗っていたのは何人でしたか。
(04年桜蔭)
<解答>
整理しながら、順番を逆にたどって調べていく問題です。還元算ともいい、逆算の考え方の基本です。
人数 | 増 | 減 | ||
7階 | ||||
↑ | 10人 | |||
6階 | 2人 | 6階についたときは、10−2=8人 | ||
↑ | 8人 | |||
5階 | 3分の1 | 3分の1降りたとき、残りは3分の2なので、これが 8人にあたるから、8÷2×3=12人 |
||
↑ | 12人 | |||
4階 | 4人 | 7人 | 12÷0.8=15人が4階についたときの人数 15+4−12=7人が4階で降りた人数 |
|
↑ | 15人 | |||
3階 | 6人 | 1人 | 15÷1.5=10人が3階についたときの人数 15+1−10=6人が3階で乗った人数 |
|
↑ | 10人 | |||
2階 | 1人 | 2階についたときは、10+1=11人 | ||
↑ | 11人 | |||
1階 | 3人 | 1階についたときは、11−3=8人 | ||
↑ | 8人 | |||
地下1階 |
以上から、
(1)3階で乗った人数は6人、4階で降りた人数は7人
(2)はじめに乗っていたのは8人